「「西部劇」、「奴隷制」とタランティーノ作品の相性の良さが光る。」ジャンゴ 繋がれざる者 すっかんさんの映画レビュー(感想・評価)
「西部劇」、「奴隷制」とタランティーノ作品の相性の良さが光る。
○作品全体
「西部劇」、「奴隷制」という要素とタランティーノ作品のカタルシスが見事にマッチした作品だった。
「西部劇」の大半は物語中盤の敗北があって、その逆境に打ち勝つラストシーンが魅力の一つだ。「奴隷制」という制度も物語になる時、奴隷になった人たちが辛酸を舐める日々というのは必ず語られ、ときに栄光や幸福とのコントラストを生む。
タランティーノ作品にも、共通した魅力がある。監禁されたうえに襲われそうになったところを反撃する『パルプ・フィクション』。劣勢の状況がガラッと一変する『レザボア・ドッグス』。どちらも危機的状況からの大逆転が印象的だが、これは他作品でも該当することでもある。
ではタランティーノ作品ならでは、となるとなにが思いつくだろう。個人的には「決着までに要する長い時間と、決着がつく時の圧倒的なスピード感」だと思う。この要素は西部劇の戦いまでの因縁の描き方や、奴隷制の長い忍耐の歴史とリンクする。一方で一発の銃が決める決着のスピード感は西部劇の代名詞でもあるだろう。
その相性の良さが、本作では漏れることなく発揮されていた。カルヴィンに弾丸を食らわせるまでのブルームヒルダが受けた数々の仕打ちと、それを悦ぶキャンディ家の人々の表情。カルヴィンに出会ってから屋敷を訪れ、本題に迫るまでに蓄積される鬱憤は、この作品がここに一番時間をかけていることと切り離せはしない。
それでいて決着がつくのはシュルツの一撃での一瞬。「すまん、我慢できなくて」という一言は、私達が抱いている気持ちをスッキリと代弁してくれている良いセリフだった。
ジャンゴ自身の因縁は未だ終わらず、再びキャンディの屋敷に戻ってきて精算する流れも素晴らしい。自由人という肩書きがあるから全てが報われたわけではないのは、奴隷解放宣言後の世界とも繋がる。ジャンゴ自身の手で、そしてジャンゴ自身が身につけた話術という処世術で未来を切り開いたラストは、爽快感で溢れていた。
この爽快感の根源は「題材」と「監督のセンス」ががっちりとハマっているからだろう。だからこそ、それぞれの長所が輝く作品だった。
○カメラワークとか
・ズームの演出が多い。西部劇が流行った60年代リスペクトだろうか。隠し事が悟られる時に使われがちだったけど、緊張感を生む反面、ちょっとギャグっぽくもあった。
・ズーム演出もそうだし、タランティーノ爆散カットもそうだけど、ちょっと特撮チックだった気もする。
○その他
・タランティーノ爆散カットはめちゃめっちゃ笑った。