a piece of PHANTASMAGORIA
解説
絵本作家のたむらしげるが、これまでも絵本やデジタル原画集などのメディアで描いてきた幻想的な架空の惑星ファンタスマゴリアをアニメーションで描いた短編集。プラネタリウム技師の告白やガラスの海の生活、スノーマンの旅、巨大電球が輝く日など、ファンタスマゴリアのさまざまな場所で起こる日常の出来事を、手使海ユトロのやわらかな音楽にのせてつづっていく。
1999年製作/78分/日本
絵本作家のたむらしげるが、これまでも絵本やデジタル原画集などのメディアで描いてきた幻想的な架空の惑星ファンタスマゴリアをアニメーションで描いた短編集。プラネタリウム技師の告白やガラスの海の生活、スノーマンの旅、巨大電球が輝く日など、ファンタスマゴリアのさまざまな場所で起こる日常の出来事を、手使海ユトロのやわらかな音楽にのせてつづっていく。
1999年製作/78分/日本
たむらしげるさんのファンタジックでペーソスあふれるイラストをファンタスマゴリアという、ひとつながりの世界と捉え、その世界の様々な断片をショートストーリーとして見せる。
とにかく、一枚絵の魅力が全て。画面は風景画ほどの引きの視点で構成され、その中の小さな人物に思いをはせるよう作られている。モチーフはきのこや電球やサンタクロース等、現実にあるようなものが出ていながら、デペイズマンや抽象化を駆使し、幻想的でシュルレアリスティックなデザインに仕上げられ、想像を広げさせられる。センス抜群の高彩度色の配色が良く、しかし、ジョルジョ・デ・キリコにも通ずるような濃い影や白、地平線を使うなど、ペーソスも醸し出されている。
さりげなく映る、ストーリーと無関係なエレメントは、後の章の話で登場するものだったりして、バラバラの話が網目のように一つの世界の話へとつながっていく様がおもしろい。同じ場所でも違う話で違うキャラクターが来ると、その場所の持つ意味や、隠れていた設定が現れ、より豊かな光景に感じられるようになる。例えば星型の酒場は後の話で空から降りてくるシステムであることが分かったり、店先に置かれたサボテンが意志を持ったキャラクターであるといったことが分かったりする。一枚絵の場面同士が、そこを行きかうキャラクターたちによって結ばれ、立体的な世界像を編み出している。
個々のデザインは面白い。ガラスの海とか、海上に浮かぶリカーショップとか、砂時計の砂丘とか、ティーポット型のカフェとか、すごくいい。
出来れば、ナレーションは無くしてほしかった。確かに、言葉で説明された方がいいような設定があってそれはいいんだけど、人の声を聴きたくないと感じてしまった。特に、最後の「まどろみを旅して見つけた…」は好きじゃない。この世界観は音のみで、言葉なしの方が味わい深くなるのではないか。
アニメ的には、手が込んでない。いまいちだ。もっと積極的に細かく動かなければ絵が持たない。小さく人物を描いているからこそ、細かい体の動きや身振りは大事だし、繰り返しの動きでは画面が持ってない。それからアップのカットが無駄にあり、にも関わらずアップした瞬間画質の粗がみえるのはいかがなものか。アニメーションの作りは質不足な気がする。おそらく、画集の方が楽しめるのではないか。
世界観の魅力は他に例を見ない。それは明らかに最高の価値である。こころが豊かになる美しい世界である。その価値が十分に活かされる制作の技術が伴っていない現状はもどかしい。
画集に出来ないことをアニメでやるという発想には賛同する。もっと、完璧なものを見たいと思った。