「良い話、だけど今一つ心が揺さぶられない」そして父になる gsacraさんの映画レビュー(感想・評価)
良い話、だけど今一つ心が揺さぶられない
実際に身近に起こったら、と考えると恐ろしい「赤ちゃんの取り違え」。
その後の対応は、どんな選択も全て正解に(逆を言えば全て不正解にも)なりうる難しい題材だと思います。
本作のタイトル「そして父になる」
最初はなぜこのタイトルなのか、と不思議に思っておりましたが、鑑賞中に理解しました。
「母親は最初から母親だけど、父親になるには努力が必要である」といった趣旨の言葉を以前聞いたことがありました。(もっとも現代では、子を持っても「母親」になれなかった果ての事件もあるように聞き及びますが・・・)
本作の主人公はまさに最初「父親」ではありません。
もしかすると、この「取り違え」が無ければずっと「父親」にならずに育ててしまったかもしれません。
仕事では成功しているエリートで(育った家庭環境がステレオタイプな感じがありますが)、しかし子どもや家族への接し方が非常にドライ。
かつ自分が正しく・偉いことを前提で全ての人に接するという正直人格的に問題のある主人公。
本作は彼が父親として自覚するまでが描かれた作品です。
結末の選択も「この流れならこの選択だよな」と納得できるもので、クライマックスは胸に迫るものがあったのも確かです。
息子役の二宮慶太くんはじめ出演陣も良い演技を見せてくれました。
ただ、福山演じる主人公が、あれほど自分を固持していた人が、こだわっている自分の考えを変える経緯・転機がぼんやりしていて、気が付いたらラストシーンに。
結果今一つ感慨が薄くなってしまったようですね。惜しい。
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