「リリーフランキーのクセが強いが、主役はもちろん◎」そして父になる Koheiさんの映画レビュー(感想・評価)
リリーフランキーのクセが強いが、主役はもちろん◎
この映画の存在は公開当時から(おそらく)「ふわっと」認識していた。「なんと福山雅治が主演らしい」とも「ふわっと」認識していた。「そういえば、尾野真千子も出ているな」とも。福山雅治は、同じ長崎県出身ということもあって、ぱっと目についていたし、尾野真千子も、NHK連続テレビ小説「カーネーション」で主演をやっていたことがしっかりと記憶にあり、やはりぱっと目についた。だから、いつか観ようという気持ちは「ふわっと」あったのだが、自ら主体的に作品を手に取ろうとまでは至らなかった。
結局のところ、この作品を観るに至った動機は受動的なものだった。当時、私は、ブルーレイレコーダーに邦画を自動で録画するよう設定していた。そうすると「海街diary」や「万引き家族」といった是枝裕和監督の作品が自動的に録画されていた。この2つの作品はすでに鑑賞済みだったが、最後まで手をつけていなかったのが「そして父になる」だった。今回、連休に入ってようやくゆとりができたので、鑑賞することができた。以下に記すように、配役にはとても満足しているのだが、テレビで観るには少し物足りない印象を受けた。全体として映像は落ち着いた感じがしており、かつピアノのBGMは品がある。映画館のスクリーンで観てこそ映えるように思う。
前述の通り、是枝裕和監督の作品には少しだけ触れる機会があった。だから、リリーフランキーや風吹ジュン、樹木希林といった「いつもの顔」が出てくると安心感を覚える。いずれの作品においても、異なる役柄を演じているはずなのに、彼ら彼女らのキャラクターは何処か似通っているところがあるからだ。とりわけ、リリーフランキーの「抜け感」にはいつも笑ってしまう。是枝作品ではない別のドラマでも、社会不適合な感じの役をやっていて、これが「平常運転」なのだろうと確信に近い感覚を覚えて久しい。今作では、群馬の小さな電器屋の親父を演じていたが、不思議な方言を話していて、相変わらず「抜け感」抜群だった。
もちろん、福山雅治と尾野真千子もすばらしかった。福山雅治はもちろんいつもカッコ良いのだが、今作では少し不器用な父親を演じている。仕事には全力を注ぐが、子育てにはやや関心が薄い。父親に「なりきれていない」感じが出ている。今にも「愛情って何ですか?」なんて言い出しそうでおっかない。それとは対照的に、尾野真千子はいわゆる「良妻賢母」そのものを演じきっている。2人の子育てに対する温度差があって、それが最後にグッと縮まっていく気配が感じられるところが、鑑賞者の涙を誘う。