「コロナ時代に極めてマッチしたテーマの作品だと思います」そして父になる あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
コロナ時代に極めてマッチしたテーマの作品だと思います
ポロポロと涙がこぼれました
我が身を振り返って冷や汗も流れました
どちらの親だって正しい
子供の将来が自分より少しは開けて欲しい
そのためには経済的にもある程度は余裕がないと、それなりの教育も与えられない
自然のあるところで暮らして、庭のある広い家に住んで、育つ環境も良くしてあげたい
そんなことを考えて子供が小さかったころは、かなりの郊外からの長距離通勤に耐えました
だから月曜日の早朝会議に出るために、始発で出勤して終電で帰ってくるような生活になっていました
出張も多く、月曜日に家を出たきり金曜日の飛行機で帰ってくるような時期もありました
そんな調子だから、いつも子供は寝ていました
土日しか起きている子供に会えなかったのです
その土日も、今度は自分が疲れはてていて、ゴロ寝ばかりでした
野々宮良多を非難することは自分にはとてもできません
それでも斎木雄大の家ような雰囲気を土日の間だけは努力してきたつもりでした
家族で車で買い物にでたり、一緒に公園に行って遊んで、子供達とお風呂にはいって、寝るまでの間ふざけたり、たまにはドラえもんの映画にも連れて行ったりもしました
だから中途半端で、さほど教育熱心でもなかったからお受験も失敗、習い事もやったり、辞めたりでした
その子供達ももう大きくなりました
果たして自分は「父」であったのか?
合格点もらえる存在だったのでしょうか?
とても駄目です
本作の描く二つの両極端の育て方の中の、真ん中なのか、どちらか寄りなのか、自分だけでなく皆さんそれぞれ苦闘してもがいて子供を育てているのだと思います
でも、子供は子供です
子供らしい子供に育つことが一番です
そしてそれが本当の親子の情を育むのだと思います
それが本作の結論なのだと思います
ラストシーンは日暮れていく群馬県の街並みの光景にカメラが引いていきます
この二つの家族の結論は語られません
それぞれの本当の子供を育てるのか
やっぱり元の通り取り違えた子供を育てるのか
それは観客たる私達の想像に任されます
自分ならどうするのか?
本作を観てあなたの子供との関係がどう変わるのか?
それを考えて欲しいとの是枝監督からのメッセージなのだと思います
野々宮は宇都宮の研究所に異動となり、例のタワーマンションから栃木県の環境の良い一軒家に住まうことになるでしょう
仕事も以前のような激務ではなくなり、朝食も夕食も家族と一緒の暮らしになるはずです
琉晴なのか?慶多なのか?
もう、どちらの子供でも大丈夫な気がします
良多もこの事件で子供と共に育ったのだと思います
彼は大人になったのです
初めて父になれたのだと思います
コロナウイルス禍でテレワークが広がりました
父と子供の関係、仕事と家庭のバランス
それを見直すきっかけになったのではないでしょうか?
コロナ時代に極めてマッチしたテーマの作品だと思います