「花火を見上げる気持がきっと変わるよな~」この空の花 長岡花火物語 Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
花火を見上げる気持がきっと変わるよな~
やっと観られました!東京での上映時に見逃していたので、何時観られるのか、心配でたまりませんでしたが、待った甲斐が有りました!今作も大林不思議ワールドストーリーでありますが、私は気に入りました!
私の個人的な好みなのですが、大林宣彦監督の作品はどの作品も普通にドラマが展開しないので、時間軸の異動が有るとか、急に不思議な人物が何処からともなく、飛び出してくると言うハプニングなどがあり、何処かが現実離れした、幻想の世界が展開するのだが、今回の「この空の花」も、少しばかりドキュメンタリータッチの映画でありながら、急に過去の人物が出て来るなど、相変わらず不思議の国大林ワンダーランドは花盛りって感じ、しかも今回の作品は、内容が幾重にも連歌のように重なり相互で関わっているのだ。
確かに、今自分達が生きている時代の前には、過去の歴史的な時間が存在していて、その現実が、必ず今に影響を及ぼしている現実を考えれば、大林監督の描かれる作風が有っても決して可笑しくはないのだが、現実的なリアリズム主義の映画展開でなくては納得出来ない方には正直この作品は向いていないかも知れない。
しかし、本作は長岡の花火の歴史に端を発してはいるものの、今日の日本にとってとても大切な問題である、原発による内部被爆の危険性などを、広島・長崎に落とされた原爆の問題から考え、そして長岡が原爆投下の予行演習の爆撃を受けていた歴史が有ったと言う事実をこの映画で知った。更に他にも多くの原爆投下予定地が有った事など、今迄中々知る事が無かった歴史が紐解かれて行くが、これは単なるそれらの事実を告げる反戦映画では決して無いのだ。今では戦後70年近く経過している為に、一般には戦争は過去の出来事と普通は思いがちだが、被爆者の内部被爆の問題などが有り、被爆者2世3世とその被爆の被害が現在も続いているのだ。戦争は決して終結しているとは言えないのだ。そして原発の問題となると、軽く扱う事が出来ない代物ばかりなのだ。そして今ではとても有名になった長岡花火大会だが、その花火に込められた、人々の平和への祈りの気持ちの歴史、花火にまつわる歴史的背景を知る事で見えて来る、長岡の花火を通じて展開する、新たな未来への試みの可能性と希望、そして震災と復興という現実の大きな未解決の問題も含めて、日本人は一体自分達のこの歴史的現実と今後どの様に関わって生きていくべきか?
花火と言う、火薬、同じ火薬が、人を幸せにする花火になる一方で、同じ火薬が、人を傷つける事も出来る兵器とする事も出来ると言う、人間の自由意志の選択に託された、科学と資源の利用の在り方を問う、問題作品とも言えるのです。
2時間20分と長尺で観る方も大変ですし、扱っている問題も、どれも本当に私達の生活に密着した大切な問題なのですが、目に見えない被爆の問題などは、つい日常とかけ離れた問題と考えがちで忘れがちですが、私達日本人の一人一人が今後考えて行動して行かなければならない大問題を投げ掛けています。
暗い夜空にパーッと花開く、幻想的な大輪の花火の美しさは、まるで、人類の、宇宙の歴史の中に花開いた、束の間の一瞬の、人の一生の時間のようですよね。だから、人は花火の中に、命の儚さを観て取り感動を憶えるのかも知れない。じっくり観て欲しい作品です!
出来る事なら、1度きりでは中々この映画で扱われている作品の内容を総て深く考える事は出来ないので、私はまた2度3度と観て見ようと思う。