「闇の底より来たる女。海外ホラーでは屈指の怖さ!」ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
闇の底より来たる女。海外ホラーでは屈指の怖さ!
ま、映画の良し悪しの基準は人それぞれなので話半分に聞いて欲しい。
もう今年も12月に入った事なので断言して良いだろう。
個人的な意見を述べさせてもらうなら……本作は2012年で最高のホラー作品!
それどころか、僕がこれまで観てきた幽霊屋敷系ホラーのなかでも相当に出来が良い部類に入るかも。
(参考として挙げるなら、ベタだが『シャイニング』『家』、
最近なら『呪怨(2003)』『インシディアス』辺りが好みです)
一般に、海外ホラーにはじわじわ身内に染み入るような恐怖が足りない。
ショック描写は多かれど、その恐怖が持続しない。
人の理解を拒むほどの怨念や忌まわしさが足りないのだ。
だがこの映画は開幕からして“忌まわしさ”を感じさせる。
踏み潰される人形の頭。3人の娘が並び立つショット……。
本作の亡霊には情け容赦が無い。
執拗に“あるもの”だけを狙う。
ハートウォーミング路線で決着させようとするホラー等は、
怨念の起源が割れた途端に恐怖が薄れる傾向にあるが、
この亡霊の場合は主人公が真相に迫るほどに恐怖が増す。
こちらの同情を一切拒むほどの深い憎悪を感じるからだ。
館の全景と主人公が同じフレームに収まるカットが確か3回ほどあったのだが、
回を重ねる毎に屋敷がその重量を増していくかのように見えた。
観客をダレさせずに引っ張る、緊張と緩和のテンポも巧い。
屋敷の不気味さは勿論、
命を感じさせない寒村、晴れない空、だだっ広い湿地に浮かぶ島など、
ゴシックムード満点の風景も良い。
コケオドシに頼らない恐怖演出も見事だ。
遠方から滑るように迫る蒼い顔。
命を感じさせる人形たち。
揺れ続ける座椅子。
稲妻に浮かぶ子ども達。
膨れ上がるシーツ。
泥の底より這い出る者……あのシーンのおぞましさときたら!
こちらの顔が強張ったままになるシーンは幾つもあった。
暖房の利いている劇場なのに、悪寒を感じた。
「Jホラー等の手法まで引用したごった煮」と評した評論家もいるようだが、
他作品の手法を引用しない映画を見つける方が困難だし、
引用した所で少しも面白くないJホラーだってゴロゴロあると言いたい。
残念なのは、恐怖のピークが中盤だった点かな。
街の有力者が主人公に協力的だった理由にももう一歩が欲しかった。
けど、それくらい。
個人的にゃ大満足のゴシックホラー!
ラドクリフ君も結構頑張ってました。
<2012/12/2鑑賞>