「目。」プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ 宿命 三遊亭大ピンチさんの映画レビュー(感想・評価)
目。
「The place beyond the pines」見ました。これは傑作。キャストも脚本も映像も、どれをとっても文句無しだと思う。
この映画の面白さは、1つの映画だけど内容が3部作になっていて、それによって主人公が変わっていく所。序盤はライアン・ゴスリングによる男の生き様、中盤はブラッドリー・クーパーによる警察汚職、終盤はディン・デハーンによる親子葛藤物。一言で片付けるのは難しいテーマではあるが、各々テーマが最後は一つに繋がるという宿命。カンの良い人なら人物の繋がりが早いうちに分かってしまうと思うが、それはこの際不問とします。なぜなら、そんな小さな事は気にならないぐらい役者の演技が素晴らしいから。特にライアン・ゴスリングのヨタヨタ感。金髪に無精髭に白Tという容姿の仕上がりもそうだが、なんと言ってもあの死んだ魚のような目だけで物語を語っている。素晴らしい。あとはディン・デハーン。彼のことは初めて見たけど、ヤク中のような鋭い眼光、内に秘めた狂気を感じた。こちらも仕上がりが素晴らしい。容姿端麗なブラッドリー・クーパーも、正義感としての説得力が絶大。ブラッドリー・クーパーを揺さぶるレイ・リオッタもまた。とにかく怖い、顔面凶器。
カメラワークも生々しく全体的に暗めだけど、不思議とワクワク感がある。ブラッドリー・クーパーの車がレイ・リオッタの車を追いかけて山中まで走るシーン。あそこの延々と続く車窓目線。走るにつれて陽が落ちていく様も、これから起こるであろう悲劇を想像し、こちらを駆り立てる。
ライアン・ゴスリングがバイクですっ転ぶシーンの長回しもね。あんなもん見せられて上がらない訳がない。素敵だ。
色々言ったが、とにかく役者の顔。それに尽きる。世間的にはマイナーの部類の映画だと思うが、こういった作り手の真剣さが満載の映画をたくさんの人に見て欲しい。