「父と子、数奇な因果」プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ 宿命 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
父と子、数奇な因果
「ドライヴ」のようなスタイリッシュでクールなクライムドラマかと思いきや、一味違った。
ある二組の父子を巡る因果と翻弄される宿命を描いた骨太なドラマであった。
家族を養う為に銀行強盗に手を染めるルーク、彼を追い詰めた新米警官のエイヴリー、そして15年後、出会ってしまったそれぞれの息子、AJとジェイソン…。
確かにルークはろくでなしかもしれない。家族を養う為とは言え、犯罪に手を出してしまったら元も子もない。暴力的な一面もある。
しかし、家族への思いはストイック。幼い息子への眼差しは本物だ。だからこそ家族写真は一時の幸せに溢れ、また終盤にその写真が出てきた時は胸を打つ。
ルークの一件で英雄となったエイヴリーだが、この時のある罪悪感に苦しむ。同時に、同僚の汚職や警察内部の腐敗に苦悩する。罪の意識と葛藤が、彼にある野心を芽生えさせる。
成長したエイヴリーの息子AJは、父の愛情を知らずに育ち、不良になっていた。エイヴリーもまた政治家である実父との間にわだかまりがあり、AJはしっかり父の血を受け継いでいる事が分かる。
そんなAJが出会ったのは、何処か自分と似たものを持つジェイソン。二人は親しくなるが、実はジェイソンはルークの息子。お互い知らなかったが、やがてジェイソンはこの数奇な巡り合わせを知る。犯罪者とは言え実の父、復讐の矛先がエイヴリー親子に向けられる…。
親の罪が子へ。
いつの時代の話だ?…とも思うが、罪を作ってしまった二人の父、罪を背負い向き合う事になった二人の息子、引き継がれた罪の因果が苦しく哀しい。
彼らがその因果から解放される時は来るのか…!?
ルーク役ライアン・ゴズリングは「ドライヴ」に続く男臭くクールな魅力で、十八番になりつつある。バイクスタントにもしびれる。
エイヴリー役ブラッドリー・クーパーも正義と苦悩の板挟みになる姿を熱演、単なる甘い二枚目でない事を証明する。
そしてジェイソン役デイン・デハーンは「クロニクル」に続く繊細でナイーブな演技が光る。
物語は3部構成。特に章分けはせず、展開や登場人物の移り変わりは自然で見事。
監督デレク・シアンフランスとライアン・ゴズリングのタッグの前作「ブルーバレンタイン」はなかなか取っ付き難い作品でもあったが、本作はエンタメ性と深い余韻があり、とても見応えあった!