「タクシー運転手」その夜の侍 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
タクシー運転手
俳優陣がすごく豪華。妻をひき逃げで殺され、やがて犯人・木島(山田孝之)が出所してから執拗に「お前を殺して俺も死ぬ」という予告状を出し続ける中村健一(堺雅人)。2人の対立構図の周囲には個性的な役者たちが配置されている。ひき逃げ事件の際に助手席に座っていた小林(綾野剛)。さらに中村の亡妻の義兄である青木(新井浩文)、木島に脅されながらも腰巾着のようになっていく星(田口トモロヲ)、木島に脅され情婦に転ずる警備員バイトの関由美子(谷村美月)などなど・・・
俳優の演技が凄くいいだけに、木島にへつらっていく者たちの心情にどうも納得できない。更生したのかと思えば、逆に恐喝・暴行など半グレ状態になっていく木島を訴えることはできなかったのか。それとも中村との決闘を楽しみにしていたのか・・・と、理解に苦しんでしまう。まぁ、小林に関しては共犯者としての贖罪もあったのかもしれないが。
もっと合点がいかなかったのは、ひき逃げ死亡事故を起こした者が簡単に二種免許を取れるはずがないということ。3年間免許取消になるはずですから、二種免許取得にはさらに3年、出所後から計6年かかります。ちょっとタクシー業界をバカにし過ぎ。秘密をバラしたとか言いふらしたとか以前の問題だ。どうしてタクシーという職業にしたのだろうか・・・?
ラストの直接対決はけっこう好きですが、暴力を使わずに侍にはなれなかった主人公。むしろ山田孝之の方が脅迫状に怯えて荒んだ生活を送る浪人風なのだ。現代的ではあるし、復讐の虚しさをも上手く取り入れていると感じます。プリンまみれになる姿もある程度共感。「夢芝居」を歌えなかった老人にも共感・・・タクシーという職業じゃなかったら3.5くらい。