私が、生きる肌のレビュー・感想・評価
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アルモドバルはマッチョがお嫌い
公開当時、今はなきシネマライズで鑑賞して、8年ぶりに改めて再鑑賞しました。今作は、アルモドバルの芸術的センスと変態的な思考の集大成ですが、珍しくオリジナル脚本では無いんですよね。オリジナルでもおかしくないくらい、アルモドバルWORLD全開で大好きな作品です。
今作は内容がサイコですが、どんな作品でもアルモドバルから感じるのは、マッチョイズムに対する嫌悪です。マッチョな考えで女性を支配し傷つける男は、必ず死ぬか酷い目に合います。そして、男も女も最終的に必ず頼って帰る場所が、女性(母親)の元であり、助け支え合うのも女性達なのです。これが、アルモドバルの作品を理解するポイントだと思います。
アルモドバルが数多くの女性達から熱烈に支持されるのは、マッチョであり権威的な男性中心社会を意識下でも無意識下でも嫌っている女性の感情に共鳴をしているからなのでしょう。
ラストでベラが一番初めに行った場所は、母親のドレスショップです。つまり、息子が最終的に頼り帰る場所が母親のいるドレスショップであり、息子の生存を証明できる物こそが、来ていたドレスであり母親なのです。ラストに至るまでのドレスの伏線が、実にアルモドバルらしくて、流石だと唸りました。本当に素晴らしい作品です。
遺伝子の二重螺旋のような不思議な映画。アルモドラル版「ピグマリオン」「めまい」といったどころか。※因みに「変態」という言葉は嫌い。人は大なり小なり皆変態だから。それをいう輩は無自覚なレイシスト並み。
①いつものアルモドバル映画と少し違うなと思ったら原作ものでした。②しかし、時空と視点とがあちこちに飛んで予測不能な筋書、でも最後はキチンと収束するところはアルモドバルらしい脚色のうまさ。③一種のマッド・サイエンティストものだが、誰もが被害者で誰もが加害者のようで誰にも感情移入出来ずにいる内にラストを迎えるが、何故か最後は戦慄を覚えて肌が粟立つ。
たまにこういうの観ると面白い
スカッといい作品だった〜って手放しで思えないのがこういう作品。でもたまになら新鮮で面白い。いつもだとつまらない。それくらいが丁度いい。ムカデ人間を観ているようだった。
愛と憐憫しかない
原作を読んでいたので、大まかな内容はわかっていました。
それでもかなり楽しめまるし、展開が気になりました。
観る人を選ぶ内容だと思うのです。
自分としてはただ、ただ、医者が哀れでした。
彼の妻と娘の災難は悲劇だと思うのですが。
自分から招きこんだという感じがします。
妻は浮気さえしなければ事故にも遭わず、全身火傷で、あんな姿になることもなかった。
娘は薬を飲んでいなければ、気が狂う事もなかったと思うのです。
愛する妻と娘が悲惨で惨めな姿に落ちぶれてしまっても医者は自分の人生から二人を排除することも見捨てる事もしなかった。
復讐として彼は二人の人間を自分の兄弟をピストルで、娘をレイプした男を性転換させます。
妻と同じ顔に整形したという事実。
純粋な愛、執着、彼自身も分かっていなかったのではと思います。
彼の今までの患者は妻に似ていると指摘されたことから、なんとなく、そう思ってしまいました。
原作では監禁状態が長くてホルモン注射、薬の投与、阿片も与えられています。
映画だと、そのあたりはさらりとした感じです。
男性なら自分がベラなら医者は殺されて当然と思うかもしれません。
でも自分はただ、ただ、哀れに思うだけです。
できるなら原作のような結末をと、望んでしまうのです。
フランケンシュタインの結末
先の読めない展開を堪能。創造した怪物を愛しても愛さなくても、最後は殺されるフランケンシュタイン博士のイメージが浮かびました。衣装も楽しみで(ボディスーツのファスナー!)、ブティックのワードローブを全部見てみたかったです。あの鼻の女優さんも達者で何より。ロベルトはベラを造り上げて、『彼女』をどうしたかったのか、愛し愛される日々を描いたのか傲慢な油断が命取り。エンドクレジットがDNAの螺旋を描いて終わっていくのも格好いい。
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