パシフィック・リム : 特集
これはただの“巨大ロボット・アクション”ではない!
《大スペクタクル》と《ドラマ》の共存に成功した“革命的”超大作だ!
SF超大作「パシフィック・リム」が、いよいよ8月9日に日本公開。「パンズ・ラビリンス」「ヘルボーイ」シリーズの鬼才ギレルモ・デル・トロ監督が日本のアニメや特撮映画にオマージュを捧げて完成させた同作は、巨大ロボや怪獣など、SF、特撮ファンを歓喜させる要素が満載。だが、「単なるマニア映画?」と片付けてしまうのは大きな間違い。スペクタクル感満載の映像とドラマティックな物語、その両者が見事に共存する革命的な超大作なのだ。
■映画.comがあなたの“偏見”を取り除く──
この革命作を見ずして“映画ファン”を語るなかれ
第一印象だけで革命的作品「パシフィック・リム」を見逃してしまうとしたら、こんなに惜しいことはない。同作はただの“巨大ロボ・アクション”ではない。映画.comが、アナタの偏見を取り除く。
マニア向けだなんてとんでもない! 作品の本質はそこじゃない。メインテーマは、仲間たちと協力して困難を乗り越えていく姿を描く、誰もが共感できる成長と友情のドラマだ。
人類の危機を前に、再び人型巨大兵器“イェーガー”に乗り込む主人公ローリー(チャーリー・ハナム)は、目の前で兄を失ったトラウマを乗り越えようとし、同じパイロットのマコ(菊地凛子)もまた、両親を失った悲しみと恐怖を克服しようとする。さらには、マコとペントコスト司令官(イドリス・エルバ)の父と娘ともいえる関係や、ローリーとマコとの絆、そして彼らを取り巻く仲間たちとのライバル関係も描かれ、見ている者は彼らがいかにして成長を果たしていくのかに、グイグイと引き込まれていくのだ。
怪獣や巨大ロボットが出てくるからといって、ちゃちなB級映画と一緒にしてしまうのはもったいない。巨額な製作費は、「トランスフォーマー」や「ダークナイト」の製作費と同レベル。
最新、最高レベルのVFXが投入された映像スペクタクルを実現しているのだ。これまでにも巨大ロボット(「トランスフォーマー」シリーズ)や巨大モンスター(「クローバーフィールド HAKAISHA」)はハリウッド映画に登場してきたが、その2つが揃い踏みするのは、おそらく史上初。見る者はまさに“歴史的瞬間”に立ち会うことになる。また、パイロットたちの身長やビルとの比較から憶測すると、イェーガーの全高は50~80メートルに及ぶ。巨大な物体がそこに存在するかのような重量感は、これまでの映像体験をはるかに超えるリアリティと興奮をもたらすのは間違いない。
SF映画だからといって、設定に興味や理解がなければ楽しめないというのは大いなる勘違い。映画史に残る傑作SFはその根底に普遍的なドラマや、見る者に問いかけるメッセージがあるはずだ。
誰もが共感できる熱いドラマを根底に、スリルと興奮に満ちた物語が、魅力あふれるキャストたちによって展開する。そして、大スクリーンに巨大なマシンとモンスターがぶつかり合う映像スペクタクル。その共存の果てにはいったい何が待つのか……と問われたら、そこには心を震わせる大きな感動が待つ、としか答えられないだろう。人類の危機を救うために一大決戦に臨む主人公たちの決死の姿は、「アルマゲドン」や「デイ・アフター・トゥモロー」のように、極限状態になって初めて分かる“真の人間の姿”を浮き彫りにする。愛する者を救うために何ができるのか? 観客も、自らに問いかけずにはいられない展開の先に、大きな感動が待ち構えている。
日本人パイロットが登場し、日本製のイェーガーも登場する本作。日本の街を怪獣が破壊するシーンも描かれている。
ハリウッド映画に登場する“日本”といえば、どこか描写が変なイメージがあるが、「ラスト サムライ」など、日本へのリスペクトにあふれたいくつかの例外的な作品も存在する。本作のデル・トロ監督も日本を愛する大の日本ファン。宮崎駿に大きな影響を受け、「AKIRA」の大友克洋、「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」の押井守など、名だたる日本人クリエイターとも親交が深い人物なのだ。「パシフィック・リム」の企画の発端が、少年時代に洗礼を受けた日本のアニメや特撮怪獣映画へのオマージュによるものだけに、日本の描写や、時おりセリフに混じる日本語も敬意に満ちた描写となっている。
まったく間違い。ロボット・アニメや特撮映画など、日本が生んだサブカルチャーに最大の敬意が送られている本作だからこそ、主要キャラクターのひとりには日本人が設定。
菊地凛子が正真正銘の本作のヒロインを演じる。人型巨大兵器の担当技術者にして武道の達人、のちにコックピットに乗り込むことになるマコ・モリ役。心にトラウマを抱えながらも、主人公ローリーとともにパイロットとして人型巨大兵器“イェーガー”に乗り込み、巨大モンスター“KAIJU”に立ち向かう。そして芦田愛菜は、少女時代のマコ役。回想シーンでの登場のため、出番は菊地よりも少なくなるが、破壊された街で巨大モンスターに襲われるという重要シーンに出演し、悲痛な表情で迫真の恐怖を披露。デル・トロ監督も驚くほどの演技力の高さで、見事にハリウッド・デビューを飾っているのだ。
■《スペクタクル》と《ドラマ》はここまで共存できるのか!?
2つがシンクロし、革命的な2時間を形作る!
巨大ロボットで怪獣と戦うという設定から、一見すると「SFファン限定」のイメージがする「パシフィック・リム」だが、その第一印象だけで見逃してしまうとしたら、映画ファンはとても大きなチャンスを取り逃がすことになる。なぜなら、同作には誰もが共感できる“一流”の熱いドラマが存在し、そして、これまでのどのタイプのVFX映画とも違う“大スクリーンでしか体験できない映像スペクタクル”が描き出されるからだ。
“エモーショナルなドラマ”と“一大スペクタクル”がここまで同調し合って共存する映画は、恐らくハリウッド史上前例がない。VFX超大作は今までも数多く作られてきたが、スケールの大きな見せ場を作れば作るほど、そこで描かれるドラマ性は希薄となることがほとんどだった。また逆に、ドラマ性に力を入れれば、どうしても超大作としての派手さに欠けてしまうのだ。
そんな映画界を悩ませる難題の前に現れたのが、ギレルモ・デル・トロ監督だ。VFXに長けた名監督であるのはもちろん、自ら脚本も書く屈指のストーリーテラー、そしてプロデューサーとして数多くの作品を世に送り出してもいる。誰もが成しえなかった高いレベルでのスペクタクルとドラマの共存──そう、彼だからこそ実現できた革命的な2時間を、映画ファンなら見逃すわけにはいかないのだ。
■理想のためには一切の妥協を許さない“ブレない男”がこだわり抜いた3年間
ギレルモ・デル・トロがすべてを懸けて完成させた渾身作!
今や母国メキシコのみならず、ハリウッドを代表するフィルム・メーカーであり、「パシフィック・リム」の製作、監督、脚本を務めたギレルモ・デル・トロは、少年時代の夢を持ち続ける純粋さを胸に抱きつつ、理想のためには妥協を許さないという“ブレない男”として知られている。
特撮映画やホラー映画を愛するという“オタク気質”と、凝りに凝った世界観で優れたストーリーを展開するという点で、「ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャクソン監督と共通しているともいえるが、大幅に予算がカットされようとも、スタジオからの要請を退けてロン・パールマンの起用を押し通した「ヘルボーイ」のエピソードを聞くと、ブレなさ加減はデル・トロの方が上をいく。「とにかく自分が納得できるものを、そしてファンが本当に喜ぶものを」という信念を貫く彼の姿勢が、熱烈なファンを生み、「パンズ・ラビリンス」でアカデミー脚本賞にノミネートされるなど高い評価を受けるのも当然のことだ。
「パシフィック・リム」は、デル・トロが10年に「ホビット」3部作の監督を辞したことをきっかけにスタートさせた巨大プロジェクト。幼少時代、夢見る少年に鮮烈な印象を与えた「鉄人28号」や「ウルトラマン」「ゴジラ」シリーズなど、日本への大きなリスペクトを貫き通し、3年の歳月をかけてついに完成させた渾身の一作だ。単なる実写化ではなく、日本のアニメや特撮映画のエッセンスを自らの作風と融合させ、新たな映像世界へと昇華させた“偉業”は、まさに熱い思いを貫き通した彼だからこそ可能だったのだ。