「いい加減にしろ碇ゲンドウ!でも庵野さん、お疲れ様でした。」シン・エヴァンゲリオン劇場版 たけろくさんの映画レビュー(感想・評価)
いい加減にしろ碇ゲンドウ!でも庵野さん、お疲れ様でした。
エヴァが注目されはじめた当時は「セカイ系」などと評されていましたが、たかが人間が「世界」を変えるなんて出来るはずがない…というのが、先ず言いたいことです。個人的センチメンタリズムで、世界を、社会をメチャクチャにするのは本当に止めてほしいです。人間は世界の中心にいるわけではないし、世界の主人公たり得ないのだと、あらためて言っておきたいです。
とは言え、庵野さんもこの間「成長」され、エヴァもテレビ→映画→序破Qとベクトルが変化していったのも確かです。その変化を、その「落とし前」を見届けるべく、今作品に期待していました。
今回の作品で庵野さんご自身もエヴァから卒業され、あわせてエヴァファンも卒業させた…というところでしょうか。
劇中、ふと「ポスト3.11だなぁ…」と感じました。あわせて、震災のあと、オウム真理教の信者だった指名手配中の容疑者が出頭してきたニュースを思い出しました。
世界は人間の社会の外側に厳として存在し、恵みと災いを、善人悪人の区別なく、いや、人間とその他の生き物の区別なくもたらします。そのスケールを認識しないと、真の意味での「人にとっての希望」は見出だせないでしょう。(加持の企みも、ある意味「人間中心主義」の延長線上にあり、その意味に於いては限界がありますが、無意味だとは思いません)
というわけで、碇ゲンドウの「人間的な、余りに人間的な」部分が語られた本作品ですが、ある意味「ゲンドウよ、よくぞ告白した!」とも思います。庵野さんに置き換えれば「勇気をもってパンツを脱いだ!」というところでしょうか。人間誰しも、若い頃を思い出せば「あの頃、私はウザかった…」という蹉跌はあるでしょう。
ここでふと、機動戦士ガンダムにおけるスレッガー・ロウのフレーズが思い出されました。いわく「人間、若い頃にはいろんなことがあるけど、いまの自分の気持ちをあんまり本気にしない方がいい…」 文脈は異なりますが、そういうことなのかな?とも思います。
思えば、四半世紀にわたり続いたエヴァですが、これでようやく「落とし前」がついたわけです。当日の劇場では私の後ろで三人組の男子高校生が鑑賞しており、ある意味普遍的に、エヴァは若い人たちに評価される作品なんだなぁ…と思いました。であればこそ、庵野さんには「お疲れ様でした!」と言いたいし、あわせて、まだまだ新しい作品を世に出されることを期待します。