ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日のレビュー・感想・評価
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可もなく不可もなく、ある意味予想通りのデキ
主人公は16歳の少年・パイだが、現在の成人したパイを演じるイルファン・カーンによる甘く落ち着いた語り口が耳に心地いい。
貨物船が嵐に遭遇したというだけで、なぜ沈没に至ったかは説明がないが、救命ボートに少年とトラが乗り合わせた経緯は無理がない。
幼かったころのパイにトラに対する恐怖心を植えつけたエピソードも効いている。
ただ227日にも及ぶサバイバル漂流は意外にあっさりしていて平坦だ。たとえトラがいなくても生命の危険が勝るはずだが、光り輝く美しい映像が多くを占める。つくづく、アン・リーという監督はロマンチストな人なのだと感じる。それは温かみのあるエンディングにもよく顕れている。
さて、大人のパイがこの映画の原作者と思われるカナダ人のライターに自身の経験を話し終えるラスト、パイはもうひとつの物語を語り始める。パイ少年の体験談の真実はいったいどこにあるのか? その答えは人それぞれの受け止め方でいいと思う。アン・リーのようなロマンチストになるか、それとも日本人の保険調査員のように現実的にものを見るか、性格占いのようなものだ。
総てを受け入れる事は、総てを信じず否定する事と決して同一ではない
私が最も敬愛する監督アン・リーが4年もの歳月を費やして遂に完成させたという本作品は、今の映像技術の可能な限りを尽くして制作された3Dの見事な画面を展開して魅せてくれるのは一体何故なのでしょうか?
私が考えるには、パイ少年と虎のパーカーの漂流の冒険ファンタジーを、観客である私達が、まるで同じ海で遭難し、少年の乗るボートに同乗しているかの様な臨場感を共有する事が出来る様にとの監督の映画に対する愛情とプロ意識、そして観客の私達に心から映画を楽しんで欲しいと願う、監督から観客へ向けられた愛情とサービス精神の表れだと思うのです。監督のその想いの下に世界から一流のスタッフが集結し、その力が見事に溶け合い開花したのが本作品と言う事が本編を観ていると見事に伝わってくるのです。
ハリウッド映画は「アバター」以来、何時でも単に3Dを駆使すれば、面白いだろうとハデな映像ばかり重視し、そのくせ中身の薄い作品の量産をしていた昨今の映画界の有り方には、正直嫌気がさしていた私ですが、やはりアン・リーの作品では3Dに凝るにはそれなりの物語のドラマ性を重視し、そのドラマの世界を最大限に伝える為の表現方法としての映像技術の充実を図ると言う工夫が生れて来ていると言えるのです。
彼の作品は、始めに明確な映画のドラマが存在し、その目的の為の、日々の技術の表れとして、職人技術の集大成である総合芸術としての映画がそこには出来上がるのですね。
だからそれ故にこの映画は、子供は冒険活劇としての映像の美しさや、面白さを楽しむ事も出来るでしょうし、大人は、家族の在り方、自然と人間の関係性、そして神と宇宙と人間の繋がり、人間がこの世界で生きる人生の意味と言うように、観客一人一人の人種や世代の違いがあっても、それぞれの立場の人達が、みんな心の本質的な発見を持てるように、映画が作られているのは、この映像同様に正に神秘と言うよりほかがありません!
アン・リー監督の描く世界は、常に家族の姿を軸にして、人間の本質とは何かを問いかけ、そしてこの世界で異なる価値観を持つ人々が混然一体となり日々暮している中で、それぞれの人々がみんな人間として幸せに生きようと努力する姿が描かれている。その人々を見詰める監督の目線の愛情に満ちた細やかさが画面一杯にいつも溢れていると思うのです。そのため彼の描いている世界観は、かつて小津安二郎監督が徹底的に家族の姿を通して人の本質に迫っていき、その彼の世界観は、人種の違いを越えて今も尚世界の人々に受け入れられ、高い評価を受けて愛され続けるようになったのと同様に、アン・リー監督の作品も、家族の生活を描き、その先に有る社会を見事に捉え、同時に人間に共通する人の本質とは何かを常に問いかける映画を魅せてくれている彼の作品は今後もきっと世界で高い評価を得る筈です。彼は今後も、更に楽しい映画を制作するでしょうね。人は常に希望を失わずに生きる勇気を掲げて前進あるのみですからね!貴方の日々の生活を常に見守り、サポートしてくれている大いなる存在がいる事を忘れず、さあ今日も元気に生きよう!
映像で観せないのは映画の禁じ手
期待が高かっただけに・・・
絵本の様なファンタジック・サバイバル
何といっても映像が素晴らしい!
物語はご存知の通り。
船が沈没して虎と主人公のパイが救命ボートに乗り込み生還してきたというお話。
パイの回顧録で始まるこのお話。
本当の話かどうかは聴く者次第、ってことなのですが、まぁー、ウソかまことかは別として救命ボートに乗り込む動物も虎だけではなく生存競争の厳しさを見せつけられます。お子様には夢も希望もないかも…。
パイと虎との交流や途中に出てくる無人島の小話とか、興味わくネタはイロイロ散りばめられています。
それはそれで面白いですが、何といっても映像が綺麗でワンダフル!
予告で光り輝くプランクトンめがけてクジラが舞い上がる美しいシーンに釘付けになりましたが全編これ美しい映像のオンパレード。
確かに、ジェームズキャメロンが褒めちぎったのは納得。
映画館で3Dで観ることを絶対にお薦めします。
リチャード・パーカーは事実か、メタファーか。
いやあ、久々に上質な3D映像体験が味わえました!ひょっとしたらアバター超えてるかもしれませんね。
昨今の無駄なコンバートで料金値上げしちゃって大した効果もないのに何でわざわざこれ3Dにしちゃったの?意味あった?的な映画とは確実に一線画してますですよ。段違い!
もうね、兎にも角にも美しいんですよ!綺麗!そして美麗!
何なんでしょうか。
とてもCGで表現されてるとは思えないぐらいに生々しく躍動的な動物達とかね、観てて本当素晴らしいス。
虎が暴れて、オランウータンは脅え、ハイエナは狡猾で、シマウマは死亡フラグ、時々魚群が通り過ぎ、おまけに大繁殖のミーアキャット。
本当によく動くし超リアル。
そしてそして、そしてですよ!
目を奪われるぐらいに透き通りきらめき、ため息が出るほどに圧倒的な自然描写、自然現象の数々。
海面に映し出される星空。
トビウオの大群。
光輝く水面。
海上に突如そそり立つ鯨。
荒々しくも神々しい嵐の夜。
これだけで3Dで観る価値充分あるでしょう。
あとストーリー展開も嫌いじゃなかったです。
現在進行形ではなく、過去の『虎と227日間漂流した』エピソードを聞き手に語り聞かせる回顧録的展開というか。
一見胡散臭い(?)おじさんが突飛もない話するもんだから大分眉唾モノではあるんですがwでも惹きこまれるというw
でね、基本的には大満足なんですが、ちょいと自分的に残念だったのがラスト付近辺り。
この虎との漂流譚が事実かどうかを聞き手、つまり観客側に委ねちゃうワケですよ。
「君はどっちが好き?」と来ちゃうワケ。
ここが個人的には「ええっ?うそーん!」ていう。
「そこはいいよ別に!事実です!で」的なね。
原作でも重要な部分らしいんですけども…。
まあね、でも!自分は虎の話を信じますけどね!
アナタはどっちを信じますか?
その答えは劇場で!的な。
生と、神と、リチャード・パーカー
嵐で船が難破。少年パイはボートに乗って助かるが、そのボートにはトラが。食う者と食われる者、大海原を共に漂流する事になった運命は…?
アジアの名匠アン・リーによる壮大な映像叙事詩。
とにかく映像が素晴らしい!!
ファンタジックでもあり崇高なドラマでもある作品世界に引き込まれる。この感覚はハリウッドの監督には出せないだろう。
数奇な物語と深遠なテーマ、美しい映像と冴え渡る映画技術…なるほど、オスカー11部門ノミネートも納得だ。
物語は回想形式で綴られる。
インドで過ごした少年時代、神への深い信仰心…。
家族でカナダに移住する事になるが、乗った船が嵐で沈没し、一人だけ助かり、信じがたい漂流生活が始まる。
状況は絶望的だ。周りは海、助かる見込みは薄い。
しかも、漂流相手が自分を食おうとしている。
だが、その恐怖心が皮肉にもパイに精神的な支えと生きる活力とサバイバル能力を与えていく。
食糧が底をついた時、トビウオの群れと遭遇する。さすがに諦めかけた時、不思議な浮島に漂着する。この世と思えない幻想的な光景を目の当たりにしたり、再び嵐に飲み込まれそうになったり…試練を与え、休息を与え、生きる力を与え、神の御業と存在を感じずにはいられない。
パイにとっても、トラはかけがえのない存在になる。
でも結局は動物と人間、食う者と食われる者、心が通じ合う訳でもない。
パイの父の生前の言葉が重く響く。「トラは友達じゃない」
それは確かだが、生きる為の相棒であった事は事実だ。
決しておセンチな話にならない描かれ方が好感。
神と、心が通じないかけがえのない存在が、自分を救った紛れもない生へのドラマ。
深い余韻が残り、魅了される。
一つ欲を言うならば、僕の住んでる町では3D上映で無かった事が悔やまれる!
人生は航海である。
すごい物語。
227日の共存
信じるか信じないかは貴方次第です
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