劇場公開日 2013年1月25日

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ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日 : 映画評論・批評

2013年1月22日更新

2013年1月25日よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー

命の尊さを思い知る宗教的体験に昇華する漂流譚

荒れ狂う洋上の奇跡的な体験の果て、人生で大切なことを悟る凪がやってくる。純然たるファンタジーにも、リアルな漂流映画の範疇にも収まらない。文学的なルーツは、ありえない出来事と現実との融合が奇妙なリアリティを醸成するラテンアメリカ発の魔術的リアリズムであり、ビルドゥングスロマン(自己形成小説)が混ざり合う。つまりは、運命に翻弄された少年の成熟を描く過酷な神話だが、なんとも豊穣な味わいを残してくれる。

回想で進む物語は3つのブロックから成る。幼少期、いじめからどう脱したか。動物たちと共に移住する船旅で大海原に投げ出された少年は、なぜ生き延びることができたのか。そして中年になった主人公が、静かに語り伝える現在。始まりは日常だが、やがて超自然的なビジュアルの大波を顔面に浴びせかけて稀有な体験に同化させ、さらには嘘のような話は本当に起きたことなのかと問う入れ子構造によって、脳内にまで嵐を巻き起こす。

白眉は、3Dならではの効果を活用した全編の7割以上を占める漂流のシークエンス。アトラクション的効果を超え、豊かな寓意によって、希望を失わずに生き抜くためのさまざま知恵を授けてくれる。最も重要なのが、救命ボートに同乗することになるトラという獰猛な存在だ。当初は、逃げ回り敵対するのだが、次第に共闘することで、大自然に立ち向かう必要性を実感していくプロセスは感動的である。絶体絶命の下、ただ生きながらえるのではなく、脅威を身近に感じることで緊張がみなぎり、自らの衰弱を防いで生命力を保つ。トラは捕食者ではなく、守護神だったのかもしれない。摩訶不思議な漂流譚は、命の尊さを思い知る宗教的な体験にさえ昇華していく。

清水節

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