「2度目に観るときはここをお見逃しなく 1月25日更新」ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日 チャプチャプさんの映画レビュー(感想・評価)
2度目に観るときはここをお見逃しなく 1月25日更新
パイが病室で『コックの話』を始める場面
長い漂流が終わって救助されて、観客はホッとして油断している。その心理のスキを突いて「どんでん返し」が語られますが、
『コックの話』は事実ではありません。パイは人殺しはしていないんです。
この作品を2択問題のようにとらえている人が多いのですが、『コックの話』も『虎の話』もどちらもフィクション。
この映画は、『虎の話』と『コックの話』を重ね合わせて比較考量したときに、空白の真実=『パイの漂流中に何があったか』が
推理でちゃんと解き明かせるようにできています。
「真相は藪の中」というような曖昧な作りではありません。
見逃してはならないのは話を始めるときのパイの仕草と表情です。
いわゆる「目ェが泳いでいる」状態。ゆっくりゆっくり考え考え話している。ノープランで場当たり的な作り話をするときヒトはあのような様相を呈します。
1回目に観たとき、私はパイがヤケクソでデタラメな話を始めたのかと思った。
「不思議」を信じようとしないオジサン達にうんざりして、「わかったわかった、あんた達が聞きたがってんのはどーせこのテの話だろ」と、いかにもなサバイバルストーリーをでっち上げたのだと。
でも、話が進むにつれてパイの表情は真剣そのものになってきて、声を詰まらせて話終えるときの涙はとてもウソ泣きになんか見えない。
しかも、観客に考える間をあたえず、カナダ人ライターが「シマウマ=船員、ハイエナ=コック…」と種明かしモドキを展開するので、やっぱりこっちが現実だったのか??? と“受け入れざるを得ない”ような心境に追い込まれてしまう。
あんなオチいらん!! と酷評している人、後味の悪さで★1個減らしましたというレビューetc. 気持ちはわからんでもない。
けど、後味が悪い妙な気分になるのは、作品が不出来だからではなくて、信じなくていい話を無理に信じようとしているからなんです。
パイの自供の矛盾を見抜いて、なぜパイはやってもいない殺人を告解したのか? そこから真実が見えてくる。
病室のシーンはこの作品全体の謎を解く、大事な糸口なんです。
【パイの自供のココが変!】
まず、あまりにも都合よく“悪者”が登場する。
しかもその“悪者”たるや、(最終的にはパイの母を殺害するような凶悪な奴だというのに)、およそ悪者らしからぬ矛盾したことばかりしている。
食料が十分あるのに鼠を喰っていたという供述からして変。自己チューな野蛮人なら、暴力にモノをいわせて水と食料を独り占めするとこからじゃね?
百歩譲って、「ビスケットなんかより鼠の方がうめぇぜグヘヘヘ」というゲテモノ喰いだったとしても、
(そんなコックの料理やだ~)
なんでわざわざパイ母子を説得して、船員の脚を切断する手伝いなんぞをさせるのか?
そんな面倒なことをするより、ほっとくか、あるいは「こいつはもう助からねえ」と、ひとおもいに殺してしまったほうが楽に肉が手にはいるし。
しかも母がキレてビンタしても、男はその時点では暴力は振るわない。かわりに切断した脚にかぶりつくパフォーマンス。「俺様に逆らったら喰っちまうぞ~」という威嚇なのか?
罵られてビンタされても反撃しなかった奴が、我が子をかばって逃がそうとするとナイフで刺し殺すのか?
殺してすぐに死体は海へ捨てた?
翌日、パイは筏からボートに移動。コックは反省して??無抵抗。
母が殺された直後に逆上して突っかかっていったならまだしも、一晩時間をおいてから無抵抗の相手を殺すのって…、あのパイにそういうことができるのか?
それと、
みもふたもない言い方だが、新鮮な死体が手に入ったら、さっさと覚悟決めて食べちゃわないと食料としての利用価値が無くなる。
画面からはあまり暑さを感じないかもしれないけど、赤道付近の非常に暑い環境だから肉はすぐ腐り始めます。
注)アン・リー監督は、観客が“暑さ”に気づかないように、わざと冬にこの映画を公開しています。
(詳細はamazonの「ライフ・オブ・パイ」ブルレイ4枚組の商品レビューにup済み)
あの環境で生肉が食用足り得るのはせいぜい1週間(煮炊きする道具無いですから。生食ですから。)
それも血抜きして解体してブロック肉にした場合の話。死体のまま放置しておいたら2~3日で内臓からぐっちゃぐっちゃに腐ってとんでもないことになります。
パイの自供を真に受けるなら、
母を殺されたショックと、人を殺したショックからさっさと立ち直って、一両日中に死体を解体して、食えるだけ詰め込み、残りは削ぎ切りにしてテキパキ干肉造りをしたことになりますが………
それに経過日数を考えると、パイがコックを殺してボッチになるのは、長く見積もっても船が沈没して1ヶ月以内です。
●船員の傷口悪化→壊死→死亡 まで放置したとしても2~3週間以上の長患いにはならない。切断したせいで死期はもっと早まっている
●船員死亡の翌日、釣餌の件、母 コックをビンタ。
●1週間後、亀の件、コック 母を刺殺
●翌日、パイ コックを殺害
という供述なので、
まとめると:約2~3週間+1日+1週間+1日=約1ヶ月
ほんで、漂流日数227日。
円周率や素数とからめて、この数字に何か神秘的なものを見いだそうとしている人もいるようですが、ぶっちゃけ7ヶ月超です。
漂流1ヶ月目で人肉を食べたけど、その後は魚や亀とかを食べて生還しました?
半年、海の幸で漂流できるなら人肉喰わんでもよくね?
そもそもパイがコックを殺した時点では、まだビスケットや水は多少は残っていたはずなんです。
ガチベジのパイでさえ人肉に食らいつくような深刻な飢餓状態であったなら、野蛮な肉食男が女性の遺体を完食せずに海に捨てるわけがないからです。
【第2の創話】
冷静に考えればここまでツッコミどころ満載なのに、話を聞いた保険屋さんも観客も言葉を失う。
パイの“感情”は真実だからです。
人の心の痛みがわかる人なら、これ以上追求せずにそっとしておいてあげようって思いますよね。
でも曖昧なままパイを人殺し認定してしまうのは優しさでも良識でもないと思います
パイが語ったのは、実際に漂流中に起こったことをアレンジした第2の創話。
話始めは「えーと誰を誰にしようかな」ってキャスティングしつつ、
(この時点では保険屋さんの追求をかわすことだけを考えて、本人もあんな重い締めくくりを想定してなかったと思われ)、
即席の矛盾だらけの話をしていくうちに、実際のつらい記憶が甦ってパイは耐えられなくなる。
なぜパイは事実をありのままに話さず、保険屋さんが一番知りたがっている船の沈没原因について、「わからない」の一点張りなのか?
漂流中にホントは何があったのか?
謎はちゃんと解けるように出来ています。そのための大事な手がかりが漂流前の家族描写の部分にぎっっっしり。
後日、下記に真相を追記しますが、まずはヒント集の方を読んでみてください
字数制限のため、謎解きのヒント集としてはamazonのカスタマーレビュー「ライフ・オブ・パイ/4枚組」「DVD1枚」に1本づつ投稿済み。同じタイトルの「2度めに観るときはここをお見逃しなく」というレビューです。
スタンプラリーみたいになっちゃってすみません。Yahoo映画に携帯からネタバレ無しの500字投稿してしまったのが悔やまれるわ
できればスグには 真相 は読まずに、謎を解いたあと、答え合わせをするような感じで読んでいただければ、と思います。
■■ 真 相 ■■
字数が どぉぉしても足りなくて、結局ブログにしました。
えいちてぃてぃぴぃころんすらすら d.hatena.ne.jp/chap-chap3
携帯からだと一発で行けたんですけど、検索ウィンドウだと「はてな」の他の項目が山程でてくるので、
検索ワード「ライフ・オブ・パイ専用ザク格納庫」でひっぱるか、hatenaのホームページの検索ウィンドウに上記ブログタイトルを入れて検索してください。
面倒なことになってすみません。
すでに当映画COMの拙レビューと、尼尊投稿済みヒント集2本 お読みになっている方は、
「記事の一覧」1月25日 からお読みください。
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字数ギリギリまで【ヒント】の追加を。
ココに投稿した内容は、一言で言えば「コックの話」は真に受けちゃいけないよという、ただそれだけなんですが、大部分の人が信じてしまっているのでしつこく矛盾を書き出したわけです。
もう十分だと思いますが、例えばこんな短いセリフ
「足を折ったのは食堂で話しかけてきた仏教徒の船員。言葉は通じなかったけど苦しんでいた」なんていうところもおかしいんです。
船員さんはちゃんとパイたちと英語で会話してましたでしょ。ケガの痛みがひどくて英語で文章をまとめられなかったとしても「No! My leg! Don't cut! No! No!」みたいな単語を並べただけの片言英語ならできそうなもんなのに、ボート上では一切言葉が通じなかったみたいな供述になっている。
足を折ったのは船員でもシマウマでもないんですよ。実は。
あと、これだけは断固として申し上げますが、虎はウィリアム・ブレイクの虎。「能動性の象徴」です。
「攻撃性・獣性の象徴」とか「パイの邪悪な側面」などと誤解すると、この映画は永遠に解けません。
シマウマを生きながら食い漁ったり、パイにもオランウータンにも見境なしに攻撃を仕掛ける浅ましく残虐なハイエナ。
それに対して、虎は堂々と力強く美しく、恐ろしいけれど目を奪われる(しかもどこかしら憎めない)存在として描かれている点をお見逃しなく。パイは虎を恐れてはいるけれど、でも虎が好きなんです。
W・ブレイクの、虎と子羊に象徴される二元論については、尼様の「ブレイク詩集」のカスタマー・レビューに移動予定。(詩集のレビューとして通用するように書き直さねば)
できれば、Wikipediaでブレイクの概要ぐらいは見ておいていただけますか。ハリウッド映画にも多大な影響を与えている詩人兼画家兼思想家です。
蓮の花(ロータス)のモチーフが何を象徴しているかも、Wikipediaで調べればすぐわかりますよ。
Wikipediaつながりでもう一つ。
「インド-Wikipedia」 目次「9.7 オーストラリアとの関係」の箇所を読んで見てください。
……だからサントッシュ父さんは、コックの「カレー・イーター」の一言にあんなにキレたんです。
ラッセンのイラストのようなファンタジックな映像の数々は、パイの創作を映像化したものなので、いわば劇中劇です。
アン・リー作品自体は現実と地続きの話運び。パイが生まれてから移住するまでの背景を調べると、インドはパキスタンや中国と戦争をしたり、どんどんきな臭い方向に進んでいて、親としては息子が兵役に取られたり、訓練だけでなく最前線に送られるかも知れないというおそれが十分にあったんです。
「移住するのはあなたのためよ」と甲板でお母さんがパイに諭すのはそういう意味です。
それと、この映画の真相は決してimmoralな内容などではありません。テーマ曲から受ける慈愛の印象そのままです。ご安心を。
ieeehtg様
ブログ見て下さってありがとうございます。
あ〜でも今日(1/26)は、更新出来そうもありません。
>明日は…
なんて書かずに、「次回は…」って書けばよかった〜って後悔しています。
アイムソーリー
でも近日中に更新しますのでよろしく。
そろそろかなぁと思い覗いてみたら何と本日更新されていらっしゃる!!
すごい偶然です 笑
コメント字数大変なんですね・・(´;ω;`)
早速ブログの方も拝見させて頂きましたが
ゾクゾクっと鳥肌が立ちました。
残り4分の3もぜひとも見たいです。
第3のストーリーを見ているような感覚で
めちゃくちゃ面白いです(*´∇`*)
というか何か泣きそうにもなりました 笑
更新楽しみにしております♪
ieeehtg様
せっかくコメントを下さったのに、お返事がこんなに遅れて申し訳ありません。
あんな長文を3本も読んでくださったうえに、好意的な?コメントまでくださるとは、
誠に、文字通り「有り」「難い」ことだと思いました。
うわ~紫のバラの人みたい~ とか(笑)
(おとといアメトーークで「ガラスの仮面芸人」をみたばかりなので)
【真相】はもうUPしてあります。結局ブログになっちゃった。
よろしければ ぜひお来しくださいませ
リンク貼れないみたいなんで、
叡智TTピ~://のあとに
d.hatena.ne.jp/chap-chap3
オーストラリアはこの作品の謎解きには直接関係はないんですけれど、カレー・バッシングというインド人に対する差別があって、初めはインド移民を快く受け入れていた社会でも、移民が増えていくとバッシングが始まる、ということを言いたかったんです。
カナダはUSAに比べるとずっと有色人種差別が少なくて住みやすいと聞いたことがありますが、やっぱどこにでも差別する人はいるし、サントッシュ父さんは、見知らぬ白人社会に移住するにあたって、家族を守っていくために神経ビリビリしているんです。
この映画の構成は、アン・リー作品の中に、2つの劇中劇がはさんであって、矛盾や変な映像はいずれも「パイの創作」の部分に集中しています。
(アン・リー作品には死角なし!)
劇中劇以外の、ファンタジー色のない、家族の現実的な描写の部分にこそ大事なことが凝縮してあるのですが、未だに「前半退屈」「このシーンいらん」と、劇中劇の部分が映画の本体だと誤解している人が多いのは残念です。
前代未聞のぶっ飛んだ構成の映画なので、スグには理解できなかったとしてもしょうがないです。
ゴッホの絵も生前1枚も売れなかったというし、ピカソの絵を自信たっぷりに下手くそだと言い切った一流文化人もいたそうですから、世の中そんなもんなんでしょう。
今回おかげさまで、コメントのお返事で1000字追加できました。
そっか~、コメントって1000字まで書けるのか~
またコメントが来れば更に1000字書けるのか~
…字数乞食とか字数の亡者とか、なんと呼ばれようともやっぱ来訪者の多いレビューサイトに【真相】書きたかった。
どうせブログに来てくれるヒトほとんどいないだろうし
(;_;)尼尊が字数を紅…
真相を早く見たいです!!
他の方のレビューを見ても全く腑に落ちず、ライフオブパイってめっちゃ難しいなぁと
思っていたのですが、たまたま拝見したチャプチャプさんのレビューは圧倒的な内容で
インド-AUの関係だったり背景にある状況も分かり素晴らしく面白いです。
ぜひアップ楽しみにしておりますので^^