ジェーン・エア : 映画評論・批評
2012年5月22日更新
2012年6月2日よりTOHOシネマズシャンテほかにてロードショー
キャストの年齢を原作に近づけることで生まれ変わった古典ラブ・ストーリー
何度も映画化されている「ジェーン・エア」だが、ラブ・ストーリーだ!と感じたのは今回が初めてだ。お互いを求め合うジェーンとロチェスターの切ない想いが、真っ直ぐ胸に飛び込んでくる。これは多分、ミア・ワシコウスカとマイケル・ファスベンダーのキャスティング効果だと思う。
何しろ昔見た「ジェーン・エア」は、オーソン・ウェルズやジョージ・C・スコットがロチェスターを演じていて「なんでジェーンがあんな怪物みたいなオヤジに恋するのか分からん」と首を傾げたものだ。だから逞しくてハンサムなファスベンダー=ロンチェスターには大満足。暗い過去に苛立ち、荒々しい感情がほとばしるシーンのセクシーな匂いにもうっとりする。ミアのジェーンも、シャーロット・ブロンテも納得すると思えるほど適役。ジェーンは、身分や財産で女性の運命が決められた時代にあらがうように、自分の意志で人生を決める強いヒロインだ。「あなたのように美人でもなく財産もない若い娘が……」と面と向かって言われてしまう慎ましい外見、自分の生き方にこだわる強い意志、人間観察の鋭さと若さゆえの率直さ。ミアの好演も手伝って、ジェーンのすべての要素がイキイキと描写されている。
フランコ・ゼフィレッリの「ロミオとジュリエット」(68)が好例だが、キャストの年齢を原作に近づけることで古典が逆にフレッシュになることがある。同じように今回は、俳優たちが持つリアリティが、キャラクターに新しい命を吹き込んだ。原作は古典だが、しきたりや社会通念に打ち勝って想いを貫くジェーンの生き方は、今の私たちと少しも変わらないと感じさせるのだ。そして、シャーロット・ブロンテがジェーンに託した女の夢を痛いほど感じた。
(森山京子)