「映像に酔っちゃって、大傑作にし忘れちゃったよ(ご謙遜)」グランド・マスター しんざんさんの映画レビュー(感想・評価)
映像に酔っちゃって、大傑作にし忘れちゃったよ(ご謙遜)
天下のウォン・カーウァイ監督である。映像を無下にはできまい。
だから超傑作になることをブン投げちゃっても一向に問題ないのである。
ウォン・カーウァイの映画でなければいけない、ということだ。
イップ・マン といえば、もうドニーさん、というぐらいドニー・イェンさんの「イップ・マン」はカンフー映画として、面白くできていた。
ここにきて、イップ・マンをウォン・カーウァイ、トニー・レオンで作ったと聞いて、ドニーさんのクンフーにしびれてしまっていたので、まあ、アクションは期待せず、ではいた。
しかし企画として、物語としては、これはものすごく面白いものになるかもしれない、という期待感もあった。
まあ、実際アクションは寄りの絵ばかりだし、構図もかっこ悪いものばかりで、ましては自慢の映像美も
「え~、いまさらこんな絵を取るの?」
というくらいかっこ悪い、気恥ずかしいの連続である。
ではお話はどうかというと、時代に巻き込まれる、武術家としての生き様、時代の変化、武術家たちの「正しい」抗争が描かれる。
そう、「ゴッドファーザー」や「ワンス・アポン・・・」の武術家バージョンにもなりえる題材である。
実際、イップ・マンが試される場面や、ツイイーさんのお父さんの教え、ツイイーさんの無情感など、結構面白い。
ところが、ウォンさん、お得意の映像を優先してしまい、2時間ちょいで収めるには、てんこ盛りすぎて、どうにも物語は上っ面だけを追っかけちゃって、逆にそれらを映像で邪魔しちゃってる感が強い。
キャラクターの心情は絵に投影してるよ、とでもいうのなら、まあ、それでもよいが、もっと登場人物の背景を描いて、エピソードを織り交ぜるべきではなかったか、とつくづく残念に思う。
この題材でこのデキかあ、ああ、もったいない。。。
いっそ、アクションが無いほうが面白かったりして。