劇場公開日 2012年8月11日

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「今まで観た映画で一番おもしろい。本物。」桐島、部活やめるってよ makurano_twiさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0今まで観た映画で一番おもしろい。本物。

2018年9月13日
iPhoneアプリから投稿

「この映画、結局最後まで桐島出てこないんだって」

ってゆうネタバレをされてて、なるほど、群像劇ってやつね、そんで桐島が出てこないままクラスがどんどん混沌としてゆくってゆう・・・・・・って予備知識でなんとなく観はじめて、いろんなグループから見る桐島がいなくなった日々を眺め、ラストに向かうにつれて自分はぞわぞわしはじめた。そしてラストで衝撃が走った。この映画はすごい!本物だ!と思った。

本物のメタ映画。

学園生活のリアルを描いた映画だとか、これが現代のスクールカーストだとか、そんなの嘘っぱち。この映画はそんなもの、パッケージとしてしか使っていない。ただの設定として、要素としてスクールカーストを使っているだけで、ほんとうは超絶メタ映画なのだ。

最後まで桐島出てこないんだって。

そんな情報を入れていたから騙されかけた。桐島は最後まで出てこないんじゃない。最初から存在しないのだ。

いや、存在してたから、存在してたのにいなくなったからみんな騒いでんでしょ。じゃないのだ。最初から存在していなかったのに、みんなが存在していると思い込んでいただけなのだ。存在していると思い込んでいる桐島の所在が判明できなくなって、存在が不明になって、みんなが焦って不安になって騒いでいるだけなのだ。

他の映画評論などでもいろいろ考察されているけれど、端折って言うと、桐島という名前はキリストのもじりらしい。

みんなが尊敬する桐島。
桐島はキリストの見立てでしかないのだ。
だからみんなの前に姿を現さない。
そして桐島を必要とする者だけが桐島の存在を信じている。
だけど桐島を信じていない者は桐島がいなくなっても今までと変わらぬ日々を送っている。

学園生活とかスクールカーストとか、そんなしょぼいテーマを表面で繰り広げ、その本題は信仰する神がいなくなった世界とその人々を描いているのだ。

そしてこの映画には主人公が二人いる。

まず映画部の前田。彼がれっきとした主人公で、彼が主人公であることで表面のスクールカースト映画が成立している。しかし彼のしていること、彼のセリフの端々は、この映画がメタ映画であることを表現している。彼はこの映画の中で映画を撮る。その映画の中で現実を破壊しようと試みる。だけれど現実は変わらず、それでもこの現実で生きていかなくてはいけないと言う。そして彼は桐島が存在しないことに対して何の影響をも受けていない。そもそも、主人公の彼は桐島という名前すら一言も口にしない。

そしてもう一人の、ほんとうの主人公は桐島の親友のひろき。彼は桐島がいなくなったということで最も影響を受けている。表向きでは、一番の親友だと思っていた自分にも何の連絡もなしに桐島がいなくなってショックを受けている、というものだが、本題では、神様(桐島)がいないと知り、何に導かれればいいのか、自分が何をすればいいのかすら判らなくなっている迷える子羊なのだ。最も神様を信じていた分、生きる意味すら失っている状態とも言える。

この両極端なふたりの主人公のラストのやりとりと、そのあとのひろきの表情、行動、エンドロールへの向かい方。この映画がただのスクールカースト映画だとすれば、このエンディングには絶対ならない。

まあ、神様がどうとか、桐島は最初から存在しないとか、ほんとうにただの個人の感想です。おそらく自分好みの曲解でしょう。でもこの映画は不思議な部分や謎な部分が多くて、観るたびにいろんなことに引っかかります。なのでいろんな感想が出てくるでしょう。

いちばん最初の、教師たちの、「また桐島ですよ」の言い方も、不思議ですし。クラスの英雄的存在の桐島のはずなのに、教師たちからはむしろ逆な印象を受けますし。もしかしたら、桐島超不良説、なんてのもあるかもしれません。全然おもしろくないけど。

makurano_twi
CBさんのコメント
2022年12月30日

おっもしろいレビューですねえ。なるほど、そんな観方もあるのかと、感心しまくりです。
本サイトがあるおかげで、いろんな人のレビューに出会えて、俺は幸せです!

CB
makurano_twiさんのコメント
2018年9月19日

すみません、噛みました。

持ち前のドジっ子スキルが炸裂しちゃいました。大変失礼しました。

申し訳ありませんでした、カミツレインボーさん←失礼の二乗

ほんとごめんなさい。

makurano_twi
カミツレさんのコメント
2018年9月15日

コメントへのお返事ありがとうございます。
makurano_twiさんは、ご自身が良いと思った作品や好きな作品のレビューもちゃんと書かれているので、批判的なレビューを書いても別にいいと思いますよ。
それに、新海誠監督に対する分析も的確で、非常に鋭いご指摘だと思いました。
これからもレビューの投稿を楽しみにしております。

……一応、私の名前は「カミツレ」ですので、お間違えなきようお願いします(笑)

カミツレ
makurano_twiさんのコメント
2018年9月15日

カツミレさん

ほんとうは、おもしろいと思った映画の感想だけを書くつもりだったんですけれど、
どうしても、秒速五センチメートルだけは、もう、納得出来なさすぎて書いちゃいました。

映画の感想なんて人それぞれなんで、悪口みたいなのは書きたくなかったんですけどね。

秒速五センチメートルの主人公が初恋の思い出をうじうじ思い返すのと同様に、自分の秒速五センチメートルへの思いもふつふつといつまでも思い返してしまうので、
ここで発散して昇華させたかったのです。

makurano_twi
カミツレさんのコメント
2018年9月14日

makurano_twiさん、はじめまして。
レビュー、とても楽しく読ませていただきました。
私も「桐島=キリストの見立て」だと考える解釈に賛成です。
というか、本作の見方として、そう考えて観るのが一番面白いと思っています。

余談ですが、『秒速5センチメートル』のレビューには笑いころげました(笑)

カミツレ