劇場公開日 2012年12月1日

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恋のロンドン狂騒曲 : 映画評論・批評

2012年11月20日更新

2012年12月1日よりTOHOシネマズシャンテほかにてロードショー

アレンお得意のテーマがうまく溶け合った軽妙な悲喜劇

同時期に公開されるドキュメンタリー「映画と恋とウディ・アレン」によれば、ウッディ・アレンは、熱烈なベルイマン信者らしく、悲劇は喜劇よりも上位にあると考えているらしい。だが、近年、彼の作品で悲壮、深刻なトーンが支配的なのは、同じくロンドンを舞台にした「マッチポイント」ぐらいで、アレンの本領は、やはり自身のパーソナルな部分を徹底して戯画化し、さらに芸術における<才能>という主題をアイロニカルにとらえた時に、もっとも発揮されるし、コクのある屈折した笑いが弾けるのだ。

恋のロンドン狂騒曲」は、このアレンお得意のふたつのテーマがうまく溶け合っている。長年連れ添った妻ヘレナを棄てて、若いコールガールと結婚し、バイアグラを常用するアルフィ(アンソニー・ホプキンス)は、アレンの私生活の極端なカリカチュアとしても充分に可笑しい。娘のサリー(ナオミ・ワッツ)の夫ロイ(ジョシュ・ブローリン)は一発屋の作家で、スランプの果てに、交通事故に遭った友人の原稿を自作と偽って発表、大絶賛を浴びる。「ブロードウェイと銃弾」の劇作家を彷彿させる強烈な皮肉だ。

若い男に新妻を寝取られて激昂するアルフィと才能の枯渇で常軌を逸した所業に出るロイのエピソードには、荘重な悲劇へと変貌する危うさ、ノワールな手触りがある。一方、傷心を抱え、オカルトショップの主人とソウルメイトになるヘレナも、務めたギャラリーのオーナー(アントニオ・バンデラス)に岡惚れするサリーも戯画化のタッチはやや弱い。ただ、肥大化した妄想にとらわれた4人のそれぞれの恋の行方を諧謔(かいぎゃく)のグラデーションを加えながら、軽妙なスケッチとして仕上げた手腕は、やはりアレンならではである。

高崎俊夫

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