マージン・コールのレビュー・感想・評価
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リーマンショック前夜の人間ドラマ
映画マネーショートを観たので
こちらの映画も観てみました
本作はリーマンショック前夜の大手投資会社を舞台にしている
大規模のリストラを行っている大手投資会社から
リスク管理部門の社員をリストラし
その社員が残したUSBメモリから
このままだとだと会社倒産するくらいリスクがある
証券をもっていることが発覚する
そこから、急遽重役などが集まり
証券をどうするか決めようとする
投資会社はMBS(不動産担保証券)を大量に持っており
それがこのままだと値下がりをして会社資産を超える損失になる
そこでMBSを売るしかないとされるが
「問題のある証券」を顧客に売ることによって
会社の信頼に傷がつき、会社がやっていけなくなるということで
議論が紛糾する
しかし、結局は「問題のある証券」を顧客に売ることを決意し
会社はさらに大きなリストラをやりながらも
結局は生き長らえていく感じになる
サムを含む多くの会社の上司などは
解雇から免れることになる
人間ドラマというよりは
重役は責任を取ろうとしないで一般の社員にリストラで責任を取らせるということに感じる
破綻寸前の会社での悪あがきに見えるが会社が生き残るから無駄ではないのかな?
最初にクビにしたエリックを
強引に連れ戻そうとするが
エリックが戻ってもどうにもできない状況なのは変わらないので
パニックでやっているようにしか思えない
この映画でサムの犬が死にそうだというセリフがあり
ラストに結局は犬は死んでしまうという描写がある
この犬は投資銀行で働くサムの良心のメタファーなのかな?
演出はサスペンス。内容は人間ドラマ
大規模リストラが行われている中でケビン・スペイシー演じるサムは、飼い犬の治療費に1日1000ドルもかけたのにダメそうだと嘆く。失業者が出ている横でのこの発言は自分の金にしか興味を示さない非情な男に見える。このときは。
サムは勤続30年以上だという。サムにとって会社は家族だ。家族を守るため非情なリストラも敢行してきた。
他の経営陣には地位や金を守るため行動する自分たちと同じに見えていても、守りたいものの根幹がサムは違ったのだ。
だから会社が死んでしまうラストの強硬策に強く反対した。
冒頭の飼い犬についての嘆きの意味が、いくら手を尽くしても家族が助からないことについての悲しみに変わる。
墓穴を掘らずに済んだという経営者の言葉と対をなすように飼い犬の墓穴を掘るラストのサム。
飼い犬は会社のメタファーだ。サムは物語の中で家族のように大切な会社の墓穴を掘ったのである。
このレビューを書くまで気づいていなかったが、監督兼脚本はJ・C・チャンダーだった。
彼の作品は本作で3本目だが、観た作品に共通することとして、大きな力に翻弄されながらも抗う男を描いていると思う。
もう掴めるものがほとんどなくなった中でも微かに希望を見ようとする力尽きた男。そんな哀しき物語だったように思う。
リーマンショック時の巨大投資銀行を描き、とても興味深い映画ではあったが、リアリティを感じなかった
J・C・チャンダー 監督による2011年製作(106分)アメリカ映画、原題:Margin Call
サブプライムローン破綻による巨大投資銀行崩壊時の経営者による顧客を裏切る行動や中間管理職の葛藤や開き直り的行動等が描かれていて、興味深くはあった。
ただ、多くの社員が解雇される中、明日にも迫ってる自社の危機的状況を、首切られた調査員意外は誰も知らないという状況はかなり信じにくかった。反面、暴落中の債券を顧客に売る抜けろとのトップの指令は分かりやすかった。また、その指令には従え無いと思う中間管理職が結局は陣頭指揮してそれを行なうことや、馘首を免れて安堵する姿は納得できる部分はある。しかし、多くの債券が売り抜けられ、大量解雇もあり、何とか企業も主人公も生き残る様な描写には、リアリティを全く感じられず不満が募った。
実際はどうであったのか?
BBC製作の「リーマン・ブラザーズ 最後の4日間」(2009年放送)では、米国政府もしくは他企業が救ってくれると楽観的に思っていたが、そうはならなかったリーマン・ブラザーズの経営トップの姿がシビアに描かれていた。他力に縋るばかりで、自力再生の試みは全くなされていない様であった。やはりそれが現実だろうと再認識させられた。
監督J・C・チャンダー、製作ジョー・ジェンクス 、ロバート・オグデン・バーナム 、コーリー・ムーサ、 マイケル・ベナローヤ 、ニール・ドッドソン 、ザッカリー・クイント、製作総指揮カシアン・エルウィズ 、ローラ・リスター 、ジョシュア・ブラム 、カーク・ダミコ 、ランディ・マニス 、アンソニー・グダス 、マイケル・コルソ 、ローズ・ガングーザ、脚本J・C・チャンダー、撮影フランク・デマルコ、美術ジョン・ペイノ、衣装キャロライン・ダンカン、編集ピート・ボドロー、音楽ネイサン・ラーソン。
出演
ケビン・スペイシー、ポール・ベタニー、ジェレミー・アイアンズ、ザッカリー・クイント、ペン・バッジリー、サイモン・ベイカー、メアリー・マクドネル、スタンリー・トゥッチ。
ウォール街の力学
サブプライム・ローンへの投資を証券化し金融商品として取引可能にしたサブプライム・モーゲージは金融工学による巧妙なリスクの分散、不可視化を図った画期的な商品だったが当初から関係者の間では危険視されていたとリーマン・ショック後の報道で知った。金融危機を描くならその辺の舞台裏を描いた方が興味深いが本作では破綻の危機を前にした投資銀行の幹部の落胆と葛藤の様を描いている。銀行ものだからと言って間違ってもNYの半沢ものなどと期待してはいけません。
ケビン・スペーシーだから何か秘策があるかと期待したが、ウォール街の力学に屈してしまった。
脚本・監督のJ・C・チャンダーさんの父はNYの投資銀行家だったので、いくら映画でも青臭い嘘は描けなかったのでしょう。
余裕もなく小心者の私としては金融投資関係は余り縁のない世界なので登場人物に対してのリアリティは云々できないが理工系の秀才がかなりいるらしいとは聞いたことがある、上層部は如何にもという人物像、もっともCEOはリーマン・ブラザーズの元CEOを暗喩しているようです。
確かに解雇は身につまされはしますが証券関係は景気次第で待遇が極端な業界なので致し方ない気もします。
首元まで資本主義経済にどっぷり嵌っているご時世では善悪で描ける単純な話では無いですし謎のUSBなどとサスペンス風に入ったものの、それほどの盛り上がりにも欠けている、いわばドキュメンタリードラマを観ている感じというのが正直な感想です・・。
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