英雄の証明(2011)

劇場公開日:

英雄の証明(2011)

解説

ローマの将軍コリオレイナスの悲劇を描いたウィリアム・シェイクスピアによる戯曲を、舞台を現代に置き換えて映画化したサスペンスアクション。レイフ・ファインズが初監督と主演を務めた。数々の武勲をたて力をつけていったローマの独裁者コリオレイナスは、その独裁性を危惧した護民官の策略で国を追放されてしまう。絶望したコリオレイナスは、自身の命を狙っている宿敵オーフィディアスのもとを訪れるが……。共演にジェラルド・バトラー、ブライアン・コックス、ジェシカ・チャステインら実力派が顔をそろえる。

2011年製作/123分/G/イギリス
原題または英題:Coriolanus
配給:プレシディオ
劇場公開日:2012年2月25日

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(C)Coriolanus Films Limited 2010

映画レビュー

4.5シェイクスピアと迷彩服とマスコミと

2012年6月12日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

興奮

知的

「英雄」で「証明」?! さっさとソフト化されるB級ハリウッド・アクションみたいな邦題だけなら、危うくスルーしていたかもしれない。名優レイフ・ファインズ初監督作品、そしてシェイクスピアの翻案、という前情報だけで観た本作。これが久しぶりの大収穫、得難い拾い物!だった。これだから、つくづく映画はやめられない。
正直、シェイクスピア翻案というだけなら、さほど食指は動かなかった。はるか昔にシェイクスピアが生み出した物語は、幾多の時を越え今もなお息づいている…という点に異論はない。けれども、なぜか翻案ものの多くは、「置き換え」の技巧が先立ち、生き生きと躍動するはずの物語はどこか硬直する。あえて視覚的・物理的な置き換えなくても、受け手が頭の中で日々の出来事を重ね、想像をふくらませれば十分…という気がしてしまうのだ。
それが、どうだろう。本作は、シェイクスピア翻案の私的ベストワン!と言いたい。ニュース映像をふんだんに取り交ぜ映し出される、とある国の紛争と政治。直情的な大衆と日和る政治家、もてはやしとバッシング。流麗な台詞回しがなければシェイクスピア劇だということを忘れてしまいそうな、「どこかで、幾度となく見た風景」が繰り広げられるのだ。
物語に引き込まれるうち、いつの間にか、迷彩服でマシンガンを乱射する兵士たちに、一枚布を纏い盾に剣、弓矢を手に戦う姿が被る。シュプレヒコールを上げ、デモンストレーションに没頭する群衆も同様。(ある意味、風呂に集う「テルマエ・ロマエ」の人々よりリアルに…。)マスコミ(テレビ番組)を利用した陽動作戦さえ、すでにローマの時代から使われていたテクニックであることを実感させられる。
絶望した男を救うのは男気溢れる敵にして同士…と思いきや。アジア圏の任侠ものやマフィアもののような男たちのドラマは脇に置かれ、無限に根を広げ絡み付くような血族(特に母子)劇が戦場で展開する。子に対峙し揺らがぬ軍母を演じたバネッサ・レッドグレーブが圧巻。最近では「ジュリエットからの手紙」など、思慮深く、心やさしくチャーミング、という役柄の彼女ばかりを観てきたので特に新鮮だった。軍服を着こなすその気迫ときたら! 男たちがかすむほどだ。
独裁政治が否定され、社会主義が崩れ、消去法的に民主政治(時として衆愚政治)が選択されている現代。例えば裁判員制度に時として見られ得るように、一握りの賢者の判断より、凡人の集まりである大衆の声が優先される。たとえ口先だけの政治家や愚かな大衆が闊歩しているとしても、味わいある台詞回しのわずかな片鱗を、時には耳にしたいものだ。

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cma

3.0哲学の撃鉄

2020年2月21日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

現代戦のリアリティ皆無、セリフの冗長。
「なんちゅう詰まらん映画だ」と思ったが、観終わって間もなく考え直した。
これは斬新な映像表現のレトリックかもしれない。

怒り、慈しみ、憤り、悲しみといった人間たちの感情が際立っている気がしなくもない。
古代を乱暴に現代へ当てはめるという制作過程が、結果的にあらゆる表現を記号化しているからだ。
目指したのは、戦争ひいては人社会のデフォルメというべきか。

ゆえに「役者の演技や舞台セットなどは最低ラインを超えていれば良い」という意図まで透けて見える。
場合によっては、製作者はシェイクスピアである必要性は無いとまで考えてるかもしれない。
演技もカメラの構図も音楽も、最低ラインさえ超えていればそれで良いや、と。

奇妙さが、物事への思考を巡らすきっかけとなる。
気づけば「戦闘とは、いやいや戦争とは、そもそも人とは……」と考えていた。

劇的すぎる。
その違和感が思考の雷管を叩き、不知の知に至る。

この、映画を娯楽と思ってないかもしれない監督の頭脳は、
曇りがかった頭脳の持ち主である私には計り知れない。

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DWK9

4.0シンドラーのリストのアーモン・ゲート再び

2019年5月13日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

個人評価:3.8
シェイクスピアの作品を、現代の舞台で描く為、まるで戯曲を3D化した様な感覚になる作品。それによって違和感のあるシーンは多々あり、もう少し現代風にアレンジした演出や脚本でもよかったのではと感じる。
また撮影場所が、あまりにも低予算を感じずにはいられない背景なので、やや世界観の品位が落ちてしまうのは残念。
しかしながら、主人公であるコリオレイナスは、氷の刃のような青い瞳のレイフ・ファインズにうってつけな役柄であり、「シンドラーのリスト」のアーモン・ゲートさながらなキレッキレな演技。自身で監督主演したのも首肯ける。
母と妻にバネッサ・レッドグレーブとジェシカ・チャステインを迎え、脇も完璧な布陣である。

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カメ

3.0シェークスピア

2018年11月4日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 あらすじだけ読むと、まるで古代ローマ時代の映画かと思ってしまうが、現代に置き換えて作られた作品だ。

 冒頭では食糧不足などで暴動が起きるほど内部事情の悪い大国ローマがニュース報道によって描かれている。斬新だ・・・とも思ってみたが、ヴォルサイとの現代的戦闘シーンの後、オーフィディアス(バトラー)と直接対決となるマーシアス(ファインズ)はいきなり銃を捨て、ナイフだけでの対決。なんなんだ、この展開?銃撃戦のクライマックスをカンフーで戦う展開と一緒じゃないか(笑)。

 まぁ、その不自然な点は置いといて、最初の見せ場である、執政官へと推挙された直後の民衆の変わり身の速さには驚いてしまう。民衆を見下したような目と台詞、積もり積もっていた人々だったが、マーシアスを憎んでいた議員たちが一言煽ると次々と同調していく様子。政治家の傲慢さもさることながら、民衆も流されやすいことがわかる。最初は死刑を宣告されたが、友人でもあるメニーニアス議員(ブライアン・コックス)や母親(レッドグルーヴ)の忠告によって穏やかに対処し、追放という罪に収まった。そこからは放浪の旅。スキンヘッドだったマーシアスが長髪になるまでの期間歩き続け、敵国であるヴォルサイにたどり着き、ライバルのオーフィディアスに会う。そして、ローマ国に復讐のためヴォルサイの仲間になったのだ。誰もが恐れおののく軍人が敵国に下った。やがて彼らはローマに侵攻する・・・

 人間の心までも失った生粋の軍人マーシアスは元戦友の説得もメニーニアスの説得も受けない。おかげでメニーニアスは自殺。そして母親、妻(ジェシカ・チャスティン)、息子がローマを炎で焼き尽くさないでと説得に来て、心を動かされた。ついに和平交渉により講和条約を結ぶが、ヴォルサイでの権力者となってしまった彼はオーフィディアスによって処刑される・・・

 やはり現代劇では不自然さが目についてしまい、戦争の迫力は足りない。また、腐敗した政治家や、民衆の苦しみというサブテーマもどこかへ行ってしまい、普通の悲劇となってしまっている(シェークスピア劇なんだからしょうがないけど)。だからこんな変な邦題がつけられてしまったのか・・・

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kossy