劇場公開日 2012年2月25日

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英雄の証明 : インタビュー

2012年2月21日更新

レイフ・ファインズ、初監督作を大女優V・レッドグレーブと共に語る

これまでニ度アカデミー賞にノミネートされている他、数々の賞を受賞し、さらに演劇界でも一目置かれている名優レイフ・ファインズ。そんな彼が満を持して、シェイクスピア劇をみずから映画化した。シェイクスピアの最後の悲劇、「英雄の証明」を現代に設定し、政治的なテーマと人間ドラマを融合させた独創的なアクション・スリラーだ。母親役を演じたバネッサ・レッドグレーブと共に取材に応じてくれたファインズは、大女優の傍らで終始謙虚な面持ちで、秘めた情熱を静かに語ってくれた。(取材・文/佐藤久理子)

——あなたは舞台ですでにこの戯曲のコリオレイナスを演じていますが、今回映画化しようと思った理由はどこにありましたか。

ファインズ「これはシェイクスピアの中でも僕のお気に入りの一作だが、それはこのキャラクターやストーリーがとても複雑で、様々な可能性を秘めているからでもある。以前舞台で演じたときは、怒れる暴君としての彼の一面に焦点を絞ったけれど、映画というメディアを使えば他の観点からもっと多角的なこの人物を表現できるのではないかと思った。それにこのストーリーは現代にも通じる要素ばかりだ。いつの時代にも戦争や政治的な衝突はある。僕自身、成長の過程で民主主義に対する疑問を抱いて来たし、権力を持つ人、欲する人の心理について考えて来た。さらにここには普遍的な母と子のドラマもある。だからとてもダイナミックな戯曲で、そういう点に心を引かれたんだ。バズ・ラーマンの「ロミオとジュリエット」を見たことも感化された理由のひとつだ。シェイクスピアのテキストと現代的な味付けの融合がファンタスティックな効果を生んでいる」

——バネッサ・レッドグレーブをこの役に勧誘するのは簡単でしたか。

ファインズ「幸い難しくはなかったけれど、とても緊張したよ(笑)。何年も前から彼女のことを知っていても、正式に仕事として何かを依頼するのは初めてだったから。当初からこの役はぜったいバネッサにやってもらいたいと思っていて、脚本の草稿がまとまるなり、誰よりも先に彼女に電話をしたんだ」

グレイブ「まあ、それは光栄だわ(笑)」

ファインズ「僕はとても緊張して、戸外の新鮮な空気を吸うために、庭に出て、ぐるぐる歩き回りながら電話をしていた(笑)。バネッサはとても熱心に聞いてくれたよ」

——(バネッサへ)あなたは彼から電話をもらったとき、どう思いましたか。

バネッサ「私も以前から彼と一緒に仕事をしてみたいと思っていたから、とても興奮したわ。でも同時に責任を感じて、ナーバスにもなった。彼になんとしても成功して欲しかったから。でもレイフは、これが初監督とは思えないほど素晴らしかったわ。彼はもっとも難しいことをやり遂げたと思う。シェイクスピアの台詞を用いて現代性やひねりを加え、深く情熱的で、政治的な要素を持った作品を作り上げたのよ」

——あなたが演じるコリオレイナスの母ヴォルムニアは、どんな女性だと思いますか。権力を愛する女帝でしょうか、それとも息子を愛する普遍的な母であり、むしろ権力争いの被害者なのでしょうか。

バネッサ「いえ、彼女は権力に飢えているわけではないし、被害者というのともちょっと違うと思う。彼女は女家長であり、一家は代々国を収めて来た指導者だった。彼らがいるから国も存在するといっても過言ではない。その伝統を彼女は継いで、息子に義務を果たさせようとする。息子はいわば国の魂のようなものだと知っているから。でも息子を心から愛していることに変わりはないわ。レイフ、あなたはどう思う?」

ファインズ「その通りだと思うよ。彼女にとってコリオレイナスは息子であると同時に、国を牽引する責任を負った公的人物でもある。でも彼自身は、そんな自分の任務を重荷に感じることはなかったと思う。彼にとってそれは生まれながらに自分の一部だったんだ」

——宿敵オーフィディアスに扮したジェラルド・バトラーは、この映画をシェイクスピア版「ハート・ロッカー」と称していますが、このキャッチフレーズをどう思いますか。

ファインズ「素晴らしいね(笑)。『ハート・ロッカー』を引き合いに出してもらえるなんて光栄だ」

——ジェラルド・バトラーとのエロティックとも言えるバトル・シーンが印象的でしたが、彼を起用した理由は? 彼自身も舞台で「コリオレイナス」を演じた経験があるのが決め手でしたか。

ファインズ「うん、それに彼も積極的に興味を持ってくれたからね。物語上、コリオレイナスにとって強力な敵対者が必要だったし、両者は潜在的にラブ・アンド・ヘイトの関係だ。憎みながらも惹かれ合うというような。だから肉体的にもタフで、カリスマ的な魅力のある俳優として、彼はぴったりだと思ったんだ」

——シェイクスピアの戯曲はこれまで何本も映画化されていますが、彼が今日生きていたら、映画の脚本を書いたと思いますか。

ファインズ「そう思うよ。彼は進歩的でつねに新しいことにチャレンジするのを恐れなかったから、もしかしたら自分で監督したかもしれないし、3Dだって撮ったかもしれない(笑)。監督業はとても大変な一方で、スリリングでエキサイティングな経験だ。とにかく、機会があったらぜひまた監督したいと思っているよ」

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