裏切りのサーカスのレビュー・感想・評価
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鑑賞動機:原作10割
『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』既読。と言っても4人の中の誰がもぐらなのかという、ミステリ的興味で引っ張っていく話だとは覚えていたが、誰かは忘れてたけど。
余計な説明セリフないので、かなり集中して観ないと/観ていても「え、今のシーンはどうゆうこと?」ってなってしまう。溜めて溜めてから「お前かー!」と明かされるわけだが、まあそんなに意外ではないし、この映画のポイントもそこではないんだろう。見せる/見せないの選択や情報の出し方は、意図があってされているようだが、それをどこまで汲み取れるか。
この頭のキレるダンディなスマイリーが、アンが絡むと途端にへにょへにょのいじけたオジさんになってしまうのが、何ともやるせない。
説明は除き、全てを映像で語ろうとしている、様々な愛のかたちを描いた映画?
スウェーデン出身のトーマス・アルフレッドソン監督による2011年製作のフランス・イギリス・ドイツ合作映画。原題:Tinker Tailor Soldier Spy、配給:ギャガ
有名らしいが、ジョン・ル・カレの原作は読んでおらず。
時間系列と登場人物、種々のエピソードが入り乱れて分かりにくく、観客の観察力・推理力に挑戦する様な映画との印象。無駄な説明は省き映像で人物像を語らせ、細部まできめ細かく作り込まれた映画で、随分とできる脚本及び監督とは思った。
最初のタイトルバックに重ねる映像、更に住まいやルーチン行動も示す一連の映像が随分と格好が良い。主人公ゲイリー・オールドマン演ずるスマイリーの立場や状況、更に性格まで、上官ジョン・ハートへの追随行動、そしてドアに挟む木片や郵便物の仕分け等で、見事に映像により語らせている。退官後、眼鏡フレームの色を変えるのも、観客に時間系列を明示する意味で上手い。
意味ありげに映す絵は、後に裏切り者コリン・ファース(「英国王のスピーチ」でアカデミー賞)がスマイリー妻にと持ち込んだもので有ることが明かされる。出ていった妻を深く愛しているせいか、その絵を捨てないでいるスマイリー。職員パーティーでスマイリー妻を誘惑していたコリン・ファースと、それに気づかないスマイリー。
両刀使い?のコリン・ファースはハンガリーで撃たれる工作員マーク・ストロングにもパーティーで色目を送っていた。解雇された女性職員キャシー・バークが持ち出す写真が示す、長い二人の関係性。スマイリーのために情報取るベネディクト・カンバーバッチも男性の愛人がいて、同性愛がやけに目に付く。諜報組織には多いのだろうか?
一方、イスタンブールに派遣されたハンサムなトム・ハーディは美しいソ連工作員妻スベトラーナ•コドチェンコワに恋し、彼女の西側脱出希望を成功させようとする。組織内上層部にスパイがいることを愚かにも本部に連絡し、必然的にソ連工作員から攻撃を受ける。ハーディは知らないが、美しい彼女が無惨に呆気なく撃ち殺される映像を観客は見せられる。
スマイリーは死後の住居訪問で上官ジョン・ハートにスパイである嫌疑持たれていたことを知り愕然としていたが、部下として動いてくれているカンバーバッチにも重要な情報は伝えていない。車内に入り込んだハチを慌てず冷静に窓を開けて外に出て出す姿やキャシー・バークに高級酒を土産に訪問し欲しい情報を得ること等も含め、諜報員としての戦略的資質をうまく表現。
スマイリーは、かつて愛妻からのプレゼントであるライターを、寝返りを促していたソ連諜報員カーラに渡したらしい。彼は今や敵側の長となリ、ハンガリーでの待ち伏せの指揮を取っていたことが、そのライターを映す映像で示される。スマイリーとカーラは敵同士であるが、何処かお互い恋愛をしている様な関係性が醸し出されるのが何とも不思議。
ラスト、コリン・ハートを撃ち殺すマーク・ストロングは深い愛の故にも思えた。スパイ映画の外形ながら、本当のところは、一方的な愛、同性愛に異性愛、更に宿命のライバル同士の愛と、様々な愛のかたちをこの映画は描こうしている様に思えた。
製作ティム・ビーバン、 エリック・フェルナー、 ロビン・スロボ、製作総指揮ジョン・ル・カレ、 ピーター・モーガン、 ダグラス・アーバン、スキー デブラ・ヘイワード ライザ・チェイシン 、オリビエ・クールソン、 ロン・ハルパーン。
原作ジョン・ル・カレ「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」、脚本ピーター・ストローハン、 ブリジット・オコナー、撮影ホイテ・バン・ホイテマ、美術マリア・ジャーコビク、編集ディノ・ヨンサーテル、音楽アルベルト・イグレシアス
出演ゲイリー・オールドマン(ジョージ・スマイリー)、キャシー・バーク(コニー・サックス)、ベネディクト・カンバーバッチ(ピーター・ギラム: スマイリーの下で働く)、コリン・ファース(ビル・ヘイドン(テイラー))、スティーブン・グレアム、トム・ハーディ(リッキー・ター、「ダークナイト ライジング」のべイン役等)、キアラン・ハインズ(ロイ・ブランド(ソルジャー))、ジョン・ハート(コントロール)、トビー・ジョーンズ(パーシー・アレリン(ティンカー))、デビッド・デンシック(トビー・エスタヘイス(プアマン))、サイモン・マクバーニー(レイコン次官)、マーク・ストロング(ジム・プリドー: ハンガリーで撃たれる)、スベトラーナ・コドチェンコワ(イリーナ: 敵側工作員妻)。
格調高い難解なミステリーに偽装した茶番劇
警察や諜報機関に限らず組織内部の腐敗や裏切りはもはや定番のありふれたストーリー、それを脚色や編集でズタズタに分解、ゲイリー・オールドマンという名優の重厚な風格で格調高い難解なミステリーに偽装した実に手の込んだ茶番劇である。演技がわざとらしく早々に気付いていたがひっかけかと思っていたらフルハウスとはふざけ過ぎ、幹部同士は昨日今日の間柄では無い筈、ここまで東側にやられ放題のMI6は村役場程度の管理体制、セキュリティなのでしょうか。鮮度の悪い自虐ネタをいかに調理するかアルフレッドソン監督は映画技法の手腕を見せたかったのでしょう。
二重スパイを探せ
DVDで鑑賞(字幕)。
原作(ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ)は未読です。
正直言って、難しかったです…
イギリス映画界を代表する俳優陣が大集結した豪華なキャストだし、あらすじを読むととても知的で骨太な物語を堪能出来るかもしれない、と期待を大きくして観たのですが、私の知能レベルが足りていなかったようです…
登場人物の関係がふとした瞬間分からなくなり、誰がどう云う役割でどう行動したのか、挙げ句の果てに何が主題だったかを見失うと云う始末で、完全に置いてけぼりを食らい、巻き戻して観直す気力も失われてしまいました。
淡々とストーリーが進んでいくこともあって、途中から非常に眠くなって来たことも、分からなくなった要因かもしれません。字幕で観なければ良かったなぁ、とも思いました(笑)。
※修正(2022/06/20)
なんとなく気付く
モグラは誰かを探すお話しですがコリンファースだろうと思ってたらやっぱり。キャストのメンバーで主役級もやる方ですしただの脇役でおさまるわけないかと気付いてしまうので謎解きみたいなミステリアスな部分は感じられなかった。
スパイ映画独特のあの冷たい雰囲気は最高でかっこいい映画です。何度も見返して楽しめるし毎回初見のように新鮮で面白い。俳優がみんな渋くてかっこいいです
スパイの選択
映画館で鑑賞後、もう一度最初から観てKarlaの姿を確認したい!と思いつつ、内容を忘れた頃に2度目の鑑賞。最初のシーンで見逃したと思っていましたが、元々映っていなかったんですね。
名前で呼びあったり、名字で呼んだり、更にはコードネーム。登場人物の把握が難解なので、じっくり観ないとなりません。
処刑の危険を冒してでも祖国に忠誠を誓い帰国したKarla。常に保身に走るPoor Man。愛情のもつれを仕事に利用できる冷淡なTaylor。任務中でもルールを無視して直感を優先、恋に盲目的なTarr。自分と同じように誰しも愛する人との生活が弱点であり、そのためなら祖国を裏切れると信じていたSmiley。
愛国心や任務への忠誠心は、個人的感情を上回ることが出来るのか。Karlaが常に持ち歩いていたSmileyのライターは、彼が「人を感情ごと手中に収めて操れる」ことを意味しているのかも知れません。英国側はスパイ以前に、良い意味で人間味のある愚かさを感じました。疑う下地は充分あっても、信じたいという気持ちを優先したくなる心情は、恋愛や浮気にも通じます。
諜報組織の中でのスパイ活動、騙されるフリをして欺くつもりが、まんまと騙されている…。東西冷戦時代の価値観で、どちら側を「選ぶ」のか。愛を選ぶのか、政治的理念か、それとも祖国を選ぶのか。スパイとて所詮人間、任務遂行においても、淡々と情愛が絡むサスペンスでした。
洋題のままがいい作品
物語のオチ的に完全に洋題のままが良かった作品
洋題のままだったら見た後にだからこういうタイトルなのかとおしゃれさを感じられたと思う
1回目見るときは混乱してよく分からないぐらい、難しい内容
勝者のいない闘い
原作者ジョン・ル・カレの文体と、トーマス・アルフレッドソンの映像はよく似ている。
ル・カレは本筋とあまり関係のないエピソードでも詳細に執拗に描写する。溢れるばかりの情報に本筋が埋没していく。(だから難解だといわれるのだと思う。)
アルフレッドソンの映像もワンカットに収められた情報量が異常に多い。俳優の台詞や動きだけではなく、壁にかかった絵など小道具にまで深い意味が込められている。始まりからラストまでみっちりと詰った映像は、まさにル・カレ節だと思った。
全体的に硬く冷たい石のような映像だったが、突如として熱くなるシーンがある。
トム・ハーディが演じるリッキー・ターのパートが熱い。
敵方の女スパイと恋に落ちるター。
「恋に落ちてる場合じゃないだろう。スパイの任務に集中しろよ。
人を欺き欺かれてきた百戦錬磨の工作員が、いとも簡単に一目惚れするなよ。」
そんなツッコミを入れたくなる程の、揺るぎないターのパッション。
職務から逸脱した激情。嘘にまみれた男が見せる、真実の愛が切ない。
マーク・ストロングが演じるジム・プリトーのパートも眩しい。
愛する人が裏切り者だったプリトー。
「裏切り者が誰か最初から気付いてたでしょ。
気付いてたんなら、組織のためには告発しなきゃダメでしょ。」
そんなツッコミを入れたくなる程の、プリトーの一途な愛。
組織を守るというスパイの大義よりも、彼は報われない愛を選ぶ。
男たちがスパイ本来の大義・職務・本分から逸脱したとき、この映画は信じられない程の輝きを放つ。
そしてこの物語の本質は正にそこにある。
国と国との威信をかけた闘いに主眼を置いたのではなく、そこからこぼれた個人の激情・真情・矜持、個人の尊厳に主眼を置いたからこそ、深い感動を喚ぶのだ。
スマイリーの苦悩もそれが核となっている。
敵の黒幕カーラの狡猾な仕掛けによって、スマイリーの妻アンは利用され汚されてしまう。心の奥底の一番繊細な部分を踏み躙られてしまう。
非情な仕掛けだが、カーラとってはスパイの作戦・職務としてやったまでのこと。
スマイリーも自分の組織を守るという大義のためなら、相手の一番弱い部分を攻めるだろう。個人の尊厳を踏み躙るだろう。彼自身がそれを知っているからこそ、苦悩するのだ。
この物語には勝者がいない。誰もが何かに傷つき愛する者を失っている。
映画のラストに流れる曲「La Mer」の歌詞が切ない。
「汚れなき美しき海よ
どうか愛を歌って
私に生きる力を与えておくれ」
スマイリーは「生きる力を与えてくれる何か」を守るために闘っているのかもしれない。
<追記>
原作ファンの個人的な好みを言えば、トム・ハーディにはジェリー・ウェスタビー役をやって欲しかった。彼の「スクールボーイ閣下」が観たかった…。
スパイの世界
冷戦下、イギリス諜報部の二重スパイ探しを描いた作品。
あぶらののった、魅力的な人ばっかり出てます。
ゲイリーオールドマンはすっかりおじいちゃんだけど。
コリンファースは好きだし、
ベネディクト・カンバーバッチがいい!
ナイスボイス!!いい声してます。
トム・ハーディのブリティッシュアクセントもしびれるし・・・
とまー、
男優ばかりに気をとられそうですが、
お話自体もスリリングで、
誰がスパイなのかと
探りながら、
互いのだまし合いに手に汗握る展開でした。
ちょっと難しかったけど・・・。
スパイって大変ですね。
だまし合いだし、提供する情報も小出しにしたり、
平気でうそつくし、
人を疑ってかかるのが仕事って
頭がおかしくなりそうです。
でも、そんな中でも、妻が出てったことに悩んだり
恋人を失って涙したり、
人間としての痛みもあって。
うーん、大変。
一番印象的なのは、二重スパイが射殺される場面。
やっぱり、近しい人ほど、
かわいさ余って憎さ100倍。
そういう感情は、どこの世界でも一緒かな?
現れ方は違うかもしれないけど。
知らない世界を描いて
ぐっと見るものを惹きつけつつ、
普遍的な部分で共感を生み、
深い余韻を残す見事な映画です。
本当の腐ったリンゴは別にいる!
ファナティックなまでの映像美。どこを切っても素晴らしく絵になる。
そしてあまりにも豪華で渋い俳優陣。
しかし、物語は無駄に難解、時系列も複雑で、登場人物も多くストレスが溜まる。その割に犯人探しは割と単調で、これで、二度見させようってのはどうなの?そもそも、なーんで今更、冷戦時代のスパイ映画(苦笑)--などと思っていたのだけど・・・
この映画のモデルとなった、実在の大物二重スパイがいると聞き、ネットでその写真(正しくは、切手の肖像画)をみて、思わず声をあげてしまった。
「アッ!!! この男は・・・!!!」
そう、この男こそ、真の腐ったリンゴだった。
うーーーーん!!! これは分からないだろう、、、いったい何人がこのプロットを見ぬけたのかなあ?
もう少し分かりやすいヒントを映画の中で提示してくれないと・・・。これが分からないと、この映画の価値は半減しちゃうんじゃないの?
逆に、分かると俄然評価が上がる。うんうん、確かにもう一度見たいぞ。そうか、やはりコントロールの読みは間違ってなかったんだ。そういや、あのセリフもあの言動も腑に落ちる。それであのラストシーンか。
封切当初、英国人から「この映画は英国人以外には分からないのではないか」と言われていたらしいが、その意味がようやく理解できた。しかし、分からないなら分からないで、それでいい、というスタンスなんだろうか。いや~~、恐ろしい映画です(笑)
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