裏切りのサーカスのレビュー・感想・評価
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見応えアリ!
予めレビューを拝読し、公式サイトで相関図をアタマに叩き込み鑑賞
久々に見応えのある良い作品だ。無駄なシーンなど無い、一瞬たりとも目が離せない、いったい誰が『もぐら』なのか!?まったく読めない展開
登場人物、特にサーカスと呼ばれる諜報部員の4人は名前と暗号の二通りの呼び方があるので、やはり顔と名前くらいは予習していく必要があります。
全体に落ち着いた色彩だからこそ赤、青、黄の色が印象に残る。メガネフレームの色の違いで現在と過去を区別してもいる。
ゲイリー・オールドマン演じるスマイリーが考えるシーン、シグナルが青から赤に変わり、レールが切り替わるカット、これぞ映画が走り出す瞬間!
そこから大団円へ向かう。『もぐら』がわかった後も“なるほど”と納得の展開だった。他のエンタメ系のスパイ映画も楽しいが、本作のような地に足が着いた大人のスパイ映画もかなりのものです。難しい映画なので、誰にでもという訳にはいきませんか、最近の映画は噛み応えがないなぁと感じている方に、ぜひ映画館で観ることをオススメします。予習を忘れずに。
無常感が凄まじい
登場人物の顔を覚えるのがとても苦手なので、誰が誰だか分からないままで、時系列も勝手に勘違いしてしまい薄ぼんやりとしか理解できなかったのだが、それでも結末に流れる音楽と映像の無常感が凄まじくて鳥肌が立った。
美術や映像の具合が大変すばらしく1974年に撮影されたかのように錯覚するほどだった。また、全体に大変な高級感があり、格安チケットで見たのが申し訳ない気分になった。
あんまり理解できなくてもスクリーンで見てなんだか得した気分になる映画だった。ぜひもう一度きちんと理解しながら、なんだったらガイドブック片手に見てみたい。
難解な「スパイ映画」と見せかけて、実は「男」と「男」の情念の映画
1970年代初頭。イギリスの諜報機関「サーカス」の中軸に潜むソ連の二重スパイ「もぐら」をあぶり出す、それが作戦失敗の責任を取らされて引退した元諜報部員、ジョージ・スマイリー(ゲーリー・オールドマン)に課せられた任務だった。
この映画には、ほぼ同時代のショーン・コネリーの演じた、世界一有名な諜報部員を主人公にしたそれとは全く正反対に、プレーボーイ・スパイも、派手なアクションも、ない。ただあるのは、ひとのこころの裏側に潜む情念。
東西対立が明確に、歴然と存在した時代背景を考えれば、己の理念と理想を貫くため、二重スパイに堕ちていった、というのも判らなくはない、結局のところ、それらを阻むのは、彼らの間にふつふつと沸き起こる「男」同志の愛情、情念だった。
「J・エドガー」を観てもわかるけれど、ある種、緊張感が常に持続し、ひと時も休むことを許されていない組織の中では、同性同志の愛情が生まれやすいのか、どうか。異性よりも心を許しやすいのかもしれない。主人公の老いたスマイリーにはそういう感情はないけれど、妻との関係は冷え切っており、彼女の彼の同僚との不倫関係を知っているため、人生に疲れきっている。
印象的な場面は、直接的な描写を避けて、セリフもなく、音楽と、各々の表情だけで、それぞれの感情を淡々と表現しているのが、素晴らしい。特に末端の工作員(トム・ハーディ)が、ロシア女性と人知れず出会う場面での、コンパクト、鏡の使い方は非常にエロティックだ。
ラスト、二重スパイが発覚し、ただ死を待つ男と、その愛の標的になり、かつ彼に裏切られて死の淵まで追い詰められた男が、対峙する。互いの情念が複雑に絡み合うこの場面は、フリオ・イグレシアスの「La Mer」が伴奏にながれて、これでもかというぐらい、切ない。
冒頭のブタペストの街中、英国諜報員が銃撃される場面、諜報機関の幹部が政府高官と会う場面、音の使い方が効果的。スマイリーが推理を働かせて、二重スパイである「もぐら」の正体を導き出すのを、彼のアジト近くにある鉄道操車場の鉄路ポイントが切り替わるのとダブらせている場面、「もぐら」誘き出して待ち伏せする場面でのサスペンスの盛り上げ方は、古典的だけれども、緊張感は充分に感じられる。
もともと原作が難解だし、それをもとにしたこの映画も決して解りやすい作品ではない。現在進行形と過去進行形が入り組んでいて、現在流行の時系列を無視した映画的リズムとなっていることが、話の筋の理解を難しくしている。
それでもこの映画に魅せられるのは、雲が垂れ込めたロンドンを、スマイリーらを乗せて疾走する「シトロエンDS」と、ポール・スミスが衣装デザインを担当したスーツケースを着た諜報員たちと、スクリーンに映し出される色調(撮影はホイテ・ヴァン・テホイマ、クリスチャン・ベイル主演「ファイター」の撮影監督でもある)が、1970年代初めを見事に再現しているからかもしれない。
ネットで顔と名前を予習してから観に行くことを薦める
スマイリーのゲイリー・オールドマンがいい。
最初、金縁眼鏡で登場し、上司のコントロールとともにサーカスを追われるように去る。無口で冴えない印象を受ける。
やがて政府高官レイコンから極秘に特命を受け、二重スパイ〈もぐら〉の捜査に乗り出すスマイリーがまずやったのはメガネの新調だ。太い黒縁の眼鏡の奥から見つめる目は意志の強さを感じさせる。抑えた静かな物言いも、言葉は明確で妥協を許さない。
現在と回顧シーンの区別も、眼鏡のフレームの違いに注意すれば区別がつく。
徐々に〈もぐら〉を追い詰めていく過程が緻密で張り詰めたものがあり面白いが、人物相関が頭の中で組み上げられないと、かなり難解なストーリーだ。
たぶん、もう一度観たくなるだろう。
話の組み立て自体は丁寧に段階を踏んでいて、「ぼくのエリ 200歳の少女」のトーマス・アルフレッドソン監督の演出により一段ずつ階段を昇るように謎が紐解かれていく。それでも、登場人物の把握に追われてしまって話に着いていけなくなることがあるのだ。
ストーリーに没頭できるよう、事前に登場人物の名前と顔をさらっておくといいだろう。観終わってわかるが、どの人物も重要だ。それぞれにいい役者を配している。
翻訳(字幕)も難しいところだろうが、もう少し解釈しやすくする工夫がほしいところだ。たぶん、観るのが2回目だったら今のままでいいのだろう。きっと説明過多でくどくなるに違いない。字幕をつける作業は単なる翻訳ではないだけに、今作のように複雑なストーリーでは、そのさじ加減が大変だと思う。
徒労感のある内容に対し、どこかほのぼのとしたエンディングは、気持ちよく劇場をあとにすることができる。
もう少しひねりが欲しかった
ほぼ同時期に公開の『Black & White/ブラック&ホワイト』もスパイモノですが、今日の『裏切りのサーカス』もスパイモノ。ですがテイストは全く違っていて、『Black & White/ブラック&ホワイト』はお馬鹿ムービーですが、『裏切りのサーカス』は重厚なエスピオナージになっています。それもそのはず、原作がスパイ小説の大家ジョン・ル・カレ。そりゃぁ、重厚な内容にもなりますよね。
ただ、その重厚さが話を分かり難くしている事もあります。二重スパイを炙り出す物語と言えば、二重三重に物語が絡みあい分かり難くなるものですが、これもその例外ではありません。ただ、二重三重に物語が絡みあうところで、一体誰が信用できるのかが分からなくと言う要素が多くの場合はあるんですが、この作品の場合、誰を信用すれば良いのか?と言う価値観の所は、あまりどんでん返しになったりはしませんでしたね。その意味では、あまりにも淡々と物語が進んでいってしまうのでドキドキ感が足りないかな。
“もぐら”の正体が判明し、スマイリーが、その“もぐら”から女と、男宛てに手紙を預かるんですが、やっぱりその手紙に最後のシーンを依頼する内容が書かれていたんですかね?今はどうか知りませんが、イギリスのエスタブリッシュメント層では、アラン・チューリングみたいに少なからず同性愛者が居たりしますからねぇ。
さて、イギリスMI6の長官が“C”と称されるのは有名な話ですが、この物語中では“C”は“Control”と呼ばれていましたね。実際のところは“C”が何を意味するかについて諸説あるんですが、一般的には初代長官の名前から来ているという事なんですけどね。“C”をフォネティックコードで読んでいるんだとしたら、普通は”Charlie”で、“Control”にはなりません。どういう事なんですかね?
ところで、この物語って実際の事件が下敷きになっているようですが、その実際の事件ってやっぱりキム・フィルビーにまつわる、ケンブリッジ・ファイブの話なんですかね?
脚本が伏線を処理し切れていなくても、卓越した演出力で納得させられてしまう作品。
冒頭のコントール(スパイチームのリーダー)の極秘命令を受けた工作員ジムが、ハンガリーに潜入し、幹部の誰が「もぐら」(ソ連の二重スパイ)であるのか情報を持っている重要人物を確保するシーンから、素晴らしい緊迫感へ、一気にスパイの世界に引き込まれました。
けれども、この失敗でコントールは退任後、病院で入院中に暗殺。コントロールの右腕だったスマイリーも、もぐらの存在すら知らされず、道連れで退任させられて、以降の展開は、枝筋を並べすぎて、伏線を収束しきれずにラストにもつれ込んでしまいます。特にラストの展開は、余りに急で、突然「もぐら」が誰か急浮上するので、あれれと混乱しました。上映会場で人物関係図などが配られると思いますので、入念に登場人物とその役柄について充分予習しておかれるとより楽しめると思います。
こう書くと駄作のように読み取れるでしょうけれどトーマス監督は、驚異の演出力を発揮して、脚本に難のあるストーリーを最後までミステリックに仕上げました。
ちょっとストーリーは消化不良なりながらも、描かれていく映像の雰囲気で最後まで何が起こるのかついつい画面に釘付けにさせる演出力はただ者ではありません。予告編の出来が秀逸なので、過剰な期待感で上映に臨んでしまうのが本作の問題。そこそこの期待で、意外さを感じる方が楽しめると思います。
原作ものは、2時間の尺にまとめるのがとても困難なことです。本作では、なるべく原作に忠実であろうとエピソードを生真面目に拾っていったのが徒となりました。
だいたい肝心なもぐら候補につけられた“ソルジャー”などコードネームの命名理由は解説されず。スマイリーの妻アンが、同僚のビルに寝取られる不倫関係も中途半端でなくともいいぐらい。スマイリーのもぐら狩りチームで、情報係となるピーターは、自国の情報機関から首になるのを覚悟で、書庫から様々な情報を盗み出すものの、もぐら捜査に
活かされているところが描かれていません。
さらに死亡したことにされた工作員ジムのその後の消息の描かれ方も説明不十分でした。
トドメは、「二度目、真実が見える」と言うコピー。人を期待させといて、あの終わり方は語るほどのような複雑さは、全く感じなかったのです。もう少し「もぐら」を推定するまでのスマイリーの推理の過程を見せて欲しかったです。
他にも突っ込みどころは満載ですが、それでも凡作とは言いがたいスパイ映画として卓越した映像を楽しませてくれます。寡黙なゲイリー・オールドマンの存在感はたっぷり。007とはちがって、一見、目立たないしスパイらしくないのに、正念場では凄腕を見せるメリハリのある演技でした。往年の必殺シリーズ中村主水のように。
先ずは予告編だけ見て、一度目は欺かれましょう(^^ゞ
果たして、「二度目、真実が見える」となるのかどうか!
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