「音楽がいいな」裏切りのサーカス よしたださんの映画レビュー(感想・評価)
音楽がいいな
オリジナルのBGMもいいのだが、それ以上に劇中のサウンドスケープを構成する音楽が素晴らしい。
ラストのフリオ・イグレシアスの歌唱による「ラ・メール」は冷戦構造下の平和を謳歌していた時代へのノスタルジーに満ちて、胸がつまる。もちろん、映画はそんな時代に祖国への誇りや自らの生命を懸けて諜報活動を行っていたスパイたちの物語なのだが、音楽で再現された時代の平和な空気とのギャップが切ない。
それと、諜報部のクリスマスパーティー(日本の忘年会に当たるのだろう)に、スターリンの仮面をしたサンタ(なんと赤い服を着ているではないか!?当たり前のように見えて、西側への皮肉も利いている)が歌い始めるソ連国歌。今では五輪の表彰式でも聞くことができなくなったこの歌は、オリンピックのボイコットくらいしかさや当ての方法がなかった平和な時代を彷彿とさせる。
テロとの戦いの名のもとに、中東に東西からの爆弾が降り注いで20年ほどになるが、スパイたちの暗闘によって保たれていた平和が懐かしい。
そんなノスタルジーに満ちたスパイ映画であった。
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