劇場公開日 2012年6月30日

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「負荷がかかる名作」少年は残酷な弓を射る Raspberryさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0負荷がかかる名作

2015年3月2日
iPhoneアプリから投稿

母子の絆は、ただの幻想かもしれない。血のつながりだとか、自分のお腹を痛めたということは、思い込みにすぎない。本当に相手を理解したいなら、相手を自分の親とか子として見るのではなく、自分とは違う一人の他者として向き合うしかない。敬意をもって。

いくら理想を演じても、絆は生まれない。
ケヴィンは人一倍洞察力が鋭く、母親の欺瞞が許せない。彼女から、大切なもの(夫と娘、そして社会生活)を奪い、強制的に自分に向き合わせた。

そうなって初めて(あまりにも遅すぎるのだが)、母親は他者としての息子に「なぜ」と問いかける。母親目線のフィルターを外して彼を見た。すると、息子も初めて母親を他者として眺めたのか、それまでわかっていたはずの理由が「わからなくなった」と言う。

抱きしめることは、相手とひとつになるためのものではない。どうしたってひとつにはなれない相手の、むきだしの孤独を、少しでも癒すためのものだ。
これを「愛」と呼ぶなら、いくら体面を繕っても、「愛」はごまかせないのだと痛感した。

赤、青、黄色と、象徴的な色が交錯する作中で、ラストシーンの、全てが漂白されたような白が印象的だった。

Raspberry