「捉え方が観た人によって違うけど…」少年は残酷な弓を射る ねこた とまをさんの映画レビュー(感想・評価)
捉え方が観た人によって違うけど…
タイトルの語感と、DVDジャケットのエズラ・ミラーの美しさ、ティルダ・スウィントンが出演しているというところに惹かれてレンタルしました。
(ミーハーなところもあるけど、いわゆるジャケ借りです。なにか力のあるジャケットですね。)
お話自体はかなり簡単に要約すると親子の憎悪が発展してある事件に至るまでと、その後の時間を交互に観せて何があったのかを追っていく展開なんですが…
冒頭の血のようなトマト祭りの風景と、役の上で結婚前の一人身を謳歌しているティルダ・スウィントンの興奮に酔いしれている表情が印象的。
このあとの展開の暗雲を予感させる雰囲気で好きです。
それまでは仕事にも恵まれ、充実していた女性が結婚、不意に子どもに恵まれる…。
生まれた子どもは、なぜか母親にだけ懐かず、まだ自意識も持たない年齢のうちから反抗…ともすれば憎しみににた態度を示す。
…たんたんと、子どもが大きくなっていく過程でのエピソードと母親の戸惑いが続いていきます。
子どもをあまり望んでいない女性だから、それが子どもにも伝わってしまっているのは分かるんですが、赤ん坊の頃から既に子どもが母親にだけ他とは違う態度を示すもんで、お腹の中にいた頃からあの親子の関係はこうなるべくしていたんだろうか?と思ってしまいました。
…重いです。
合間に挟み込まれる、事件の予感と、事件後の母親を取り巻く環境で、何があったのかと興味を持たせない限り、観るのがしんどくなってしまう感じです。
(なので、挟み込むように時系列をパズルのようにしてあるのは効果的でした)
…事件については印象的だったタイトルが災いして、他の意味を含んでいるにしてもネタバレ状態なんですが…(^_^;)、その過程をみせるお話なのでなんとも…。
事件後も息を殺すように暮らしながら、なんで私がこんなことに?って母親は思ってたのかな?
さて、最後に大人の刑務所に移ることになった息子ケビンとの対面が出てきます。
ここまで、何度面会に来ても会話がなく、間が持たなかった親子が初めて、ケビンの大人の刑務所に移る緊張と戸惑いからまともに会話をするシーン。
言葉少なに「ずっと分かってるつもりだったけど…」と、初めて母親に助けを求めるような、告白するような言い方の息子。
「今までだって要領よくうまくやってきたでしょ?」と、突き放すような言葉を放す母親。
面会時間は終わり、明るい外の光あふれる刑務所の出口に歩いていく母親の姿で映画は終わります。
…このシーンの前に、刑務所を訪れる前日だとかのあたりに、母親は息子の衣類にいつもより丁寧にアイロンをかけ、彼が帰ってきたときに快適に過ごせるように住まいを整えている。
長いこと受け入れられなかった息子を受け入れる準備をしているようにも見えたけど、あの最後の面会シーンとか、歩いていくシーンとか…私には成人する息子の呪縛から解放されて安堵の表情をみせているようにも見える…。
または、やっと親子のわだかまりが解けたのか?
私は未婚なので、完全に感情移入したりは出来ず、見守るだけの形になりましたが、
このお話は捉え方が人によって様々な気がするの。
観た後、世のお母さんに感想を求めたくなりました…。
でも、ここまで極端な話しではなくても、多かれ少なかれ、一人の個人が〝親だから〟という理由で犠牲にしてきたものや、なんで私がこんなことを…と思ったこと、世の親御さんの中にはあるわけで…。
父親とか、母親とか当たり前のようにこなしてる方にしたらお叱りを受けるかもしれませんが、親の愛は無償とはよくいったものだな、と。
…話に触れないと語れないので、やや、ネタバレになってしまいましたが、機会があれば観て頂きたい部類のお話です。