フライトのレビュー・感想・評価
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ゼメキス久々の佳作
ここ数年、ロバート・ゼメキスはモーション・キャプチャにハマっていて、ろくに実写映画も撮っていなかった。しかもその技術の立役者とはいえ、本人が作った映画はどれも大ヒットには至らず…(リメイク版「イエロー・サブマリン」も没になるし)。だから久々の実写映画には当然期待がかかる。
この映画は出だしの飛行機墜落シーンに尽きる。ウィトカー機長はコカインをキメた後に、機内でウォッカを2本空けるような男だ。悪天候のせいもあり、飛行機は不安感を残しつつ空港を出る。当然、観客はこの飛行機の結末を知っているわけだが、その「墜落」までの持っていき方は非常に上手い。
いつ落ちるのか、焦らしに焦らしてその時を迎える。飛行機はいきなり前のめりになって、落ちていく。騒ぐ観客、取り乱す乗務員と副機長。それに対し、妙に冷静なウィトカーは瞬時に状況を把握、試行錯誤を繰り返したあげくに期待を“回転”させることにする。
ここからは予告編を見た誰もが知っている。現実だったらあり得ないような事件を、見事なVFXと緊迫感のある会話で見事なリアリティを持たせている。こんなにハラハラするシーンはなかなかお目にかかれないが、残念ながらスリル満点なのはここまでなのだ。
私が思うに、この映画の最大の欠点は不必要なシーンがあまりにも多すぎることだ。ウィトカーが病院で出会う終末医療患者との会話がその代表格だが、そのどれもこれもが意味有り気な所がさらに問題である。彼らとの会話を通じて、得体の知れないウィトカーの中身を描きたかったのかもしれないが、そんなことをしなくてもデンゼル・ワシントンの演技だけで十分だ。
正直に言うと、ニコールもほとんど登場しない家族も不必要かもしれない。ニコールはウィトカーのアルコール依存症傾向を浮き彫りにするために、彼の家族はウィトカーの孤独感を表すためにいるわけだ。でもそれらはすべて他のシーンでも表されていることで、無意味にエピソードを増やしているだけに過ぎない。
おそらくロバート・ゼメキスは脚本を見たとき、映画の全体像ではなく個々のシーンが思いついたのだろう。例えばウィトカー御用達の麻薬の売人ハーリンの登場シーン。彼がノシノシ登場するたびに、バックにはザ・ローリング・ストーンズの「悪魔を憐れむ歌」がかかる。面白いが、あまりにも狙いすぎているのだ。「フライト」のBGMはロック好きにはたまらないが、あまりにも「分かってる」使い方をしすぎて結果的にクサい演出と化している。
だからそれぞれの場面の出来は光るものがあるのに、全体として見るとやや散漫な印象を拭えない。
様々な欠点はあるが、この映画はあらゆる点でかなり優秀だ。そのほとんどは主演のデンゼル・ワシントンによるものが大きい。今回、彼はウィトカーという内面的に複雑な人物を演じるにあたり、かなり抑えめの演技を披露している。これが功を奏し、彼が抱えるジレンマを露にすることに成功した。ウィトカーは独善的で救いの無い人物なのに、観客は彼に共感し、英雄であるとさえ感じる。だからといって、まったくの善人かと言うとまったくそうではない。このドラマの中核の部分をワシントンは生み出したのだ。
全体的に見ると「フライト」は良くできている。シリアスなシーンとユーモア溢れる場面のバランスが取れていて、(無駄ではあるが)様々なエピソードはどれも面白いので基本的に飽きることは無いだろう。繊細さには欠けるが、ロバート・ゼメキスの手腕は衰えていないらしい。
(13年3月13日鑑賞)
少し長いかな
広告から想像できる内容とは異なるが、それでもまあまあ楽しめた。
パイロットでありアルコール依存症の男性の話だが、冒頭の航空機墜落シーンが映画全体の内容の割によくできていた。
それ以後のアル中男の末路は言わずもがなであるが、主人公がパイロットということでそれに沿ったストーリーは珍しくてよかった。
墜落シーンは予告以上に見ごたえタップリ。
アメリカっていろんな意味ですごい。
アル中のパイロットのお話だけど、こういう状況が本当にあると思えちゃうところが怖い。
予告遍やスポットでは飛行機の墜落シーンばかりフューチャーされるからパニック映画と間違いそうだけどきちんとしたヒューマンドラマでした。
墜落シーンは見ごたえ十分です。こんな曲芸飛行が現実に可能なんでしょうか?まあ、そんなことは別として墜落シーンの特撮映像は大画面で一見の価値あり。すごいです。
その後のヒューマンドラマはパイロット失格の墜落ぶり。俺の感覚からするとあまりの暴走にどうにも理解できないのですが…。というか、これだけ周りの人たちの助けがあればどこかで立ち直りそうなもんだけど、とことんまで落ち続ける姿になんとも理解できずにラストシーンを迎えました。
ラストは‘良かった良かった’となるのですがここに来るまでにとっとと気付きなさいよ、って思います。
ただこれは病気をよく理解していないから?かも。
再生できてよかった。
揺れ動く天秤の針
オープニングから30分は、乗客・乗員102名を乗せた旅客機が高度3万フィートで制御不能になり不時着するまでの飛行に費やされる。予告篇にもあるように、かなりアクロバティックな操縦で96名が生還を果たす。この30分は、パニック映画1本分に値するほどのエキサイティングな演出だ。
ウィトカー機長がいかに冷静沈着な判断能力と操縦技量をもつパイロットであるかが描かれる。と同時に、ウィトカーとアルコールの関係、そして人間関係が組み込まれ、機長の過失致死罪を問う本題への伏線が多く含まれる。
ほかの誰もが真似のできない操縦で犠牲者を最小限にとどめ、どんなに多くの生命を救ったとしても、もしアルコールが入った体で操縦したとすれば厳罰に処せられる。機体不良の不運と、たとえアルコールが入っていようと奇跡的な不時着を達成した功績、この話にはそのどちらに重きを置くかという天秤は存在しない。いかに善行を施そうと、それ以前にやってはならない社会のルールがあり、結果オーライであってはならないと訴える。
社会を誤魔化し、人を誤魔化し、自分をも誤魔化し続け、ほころびが出るたびにまた嘘で固めていく人生。それが是か非かはけっきょく本人の問題なのだが、その判断を決するための天秤は存在する。その天秤は本人の中にある。たとえ社会から葬られようと何ものにも縛られずに開放された心を取り戻す勇気さえあれば、天秤の針をまっすぐ見ることができる。
揺れ動く針がぴたりと止まるまでのウィトカーを表現したデンゼル・ワシントンはさすがに巧い。
うーん飛行機の映画ではないのか
テレビで宣伝していて、面白そうに感じた。
面白かったのは前半30分でした。
後半は薬中毒とアル中の物語で、まるで2つの物語の様子、
後半は日本人には分かりずらいというか興味のないことだと思う。
アメリカの抱える問題を日本人もご理解下さいとでもいうのか。
航空機パニック映画と思ってみたら大間違いなのでご注意!
最後までア然、面白かったです
いいかげん深い心の暗闇に付き合わされるのに、あまりのことに笑っちゃって落ち込んだ気分になる間もなく…
なんなんでしょうか、面白かったです。
デンゼル・ワシントン演じるウィトカー機長、さっぱり読めないよどんだ眼で周りを翻弄します。客観的には黒なのでしょうが、奇跡的操縦で多くの命を救った大きなアドバンテージがありますし。
どう考えていいか判らないスキにつけこんでくる思いもよらない展開には、最後までア然でした。
組織の論理で事態収拾にかかる弁護士にドン・チードル、彼は何段階の困った顔を持っているのでしょう。炸裂してました、巧いです。
人生のフライト
事故調の審問まではいい感じできていたが、前日のホテルでご乱心は疑問が多い。アル中が9日もアルコールを絶てるのか?それはアル中ではないのではないか?そんな人間がホテルのアルコールに手をだすのか?その前に弁護士とか関係者とかが冷蔵庫のアルコールを排除しとけばいいじゃん。とにもかくにもウィップはウソをつき続ける生活からやっとフライトした。
長い
ロバート・ゼメキス監督12年ぶりくらいの実写作品。なるほど気合い入ってるなぁ~と思わせる1本。
ストーリーがなんとも斬新。旅客機の大惨事を見事回避させた凄腕パイロット。けど実は彼が搭乗中に酒を飲んでたという展開。
全体的な流れはすごく面白いと思う。でもさぁ、これ長すぎなんだよね。なにやら無駄な場面、間延びするシーン、薄い登場人物が多すぎ。これ90分にまとめたらものすごい名作になってた気がする。その辺ゼメキスさん、空回りの印象。
ところでデンゼル・ワシントンって、なんかやましい所がある役多いよね(笑)
不遇のデンぜル・ワシントン
冒頭、全裸の女性が部屋を歩き回るシーンがあり、私はシドニー・ルメットの遺作を思い浮かべてしまいました。とにかく、アルコール漬け、クスリ漬けの最低パイロットをデンぜル・ワシントンが演じ、最後には、改心し、疎遠だった息子ともめでたく和解します。そういうお話です。予定調和もいいとこです。この作品といい、前回の「デンジャラス・ラン」といい、最近のデンぜル・ワシントンは良い脚本に恵まれていないようです。このような脚本では、役者がいい演技をしても、結果的には、そこそこの演技にしか、見えません。それにしても、デンぜル・ワシントン、ちょっと、お腹に脂肪が付き過ぎですね。
他の役者では、気の弱そうな、弁護士を演じていたドン・チ―ドルが良かったです。
あまりよろしくない描写の末の見え透いた説教くさい落ち
冒頭シーンの主人公の振る舞いを見た瞬間から「これは間違った」と感じた。「彼は犯罪者に決まってるだろうが!」・・・金を払わせて見せるストーリーではない。当然の主人公の改心を見るまでに、延々と非行(思い違い)を見せつけられて、良識がある人ほど苦痛を味わいそうだ。
「興行するならアメリカだけにしてくれ!」と言いたいたいところだが、日本でもこのような「説教」が必要になってしまったかなとも思えて嘆かわしい。(キリスト教の場合は何というのだったか忘れたが、ありがたいと思って後からお渡しするのがきまりの)お布施を先に払ったと納得するか。。。
機長の心は荒天のち晴れ。
デンゼル・ワシントンの酔っ払いぶりが絶品。
寅さんのような人間味!
弱さと向き合い断ち切るに到る終盤が劇的。
自由の翼を得た彼に拍手。
大袈裟に煽り立てず、
淡々と静かに男の心の変化に向き合い続けるドラマ。
面白い。
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