最強のふたりのレビュー・感想・評価
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【93.0】最強のふたり 映画レビュー
作品の完成度
実話に基づく題材を扱いながら、社会的メッセージ性を前面に出すことなく、普遍的な人間ドラマとして昇華させた手腕が見事な完成度を誇る作品
頸髄損傷で車椅子生活を送る富豪フィリップと、セネガル移民出身で貧困層の若者ドリスという、フランス社会における二つの「隔絶された世界」を象徴するキャラクターが出会い、互いの価値観を認め合う過程を、ユーモアと感動の絶妙なバランスで描き切る
シリアスなテーマを扱いつつも、湿っぽさや「お涙頂戴」的な演出を徹底して排し、軽快なテンポで物語を進行
この「重すぎない」トーンこそが、観客がフィリップとドリスの関係性を素直に受け入れ、共感し、最終的な感動へと導かれる最大の要因
文化、階層、身体的制約というあらゆる壁を超えた真の友情のあり方を提示し、観客に深い幸福感と生きる活力を与える点で、極めて高い芸術性と娯楽性を両立
フランス映画としては異例の全世界的な大ヒットを記録し、その年のフランス興行収入一位を達成
フランス国外でも高い評価を獲得した事実は、本作が持つテーマの普遍性と表現の完成度の高さを証明
受賞歴
第24回東京国際映画祭:東京サクラグランプリ(最高賞)、最優秀男優賞(フランソワ・クリュゼ、オマール・シー)
第37回セザール賞:主演男優賞(オマール・シー)受賞、作品賞、監督賞など計9部門ノミネート
第36回日本アカデミー賞:最優秀外国作品賞受賞
ゴールデングローブ賞:外国語映画賞ノミネート
英国アカデミー賞(BAFTA):外国語映画賞ノミネート
監督・演出・編集
監督はエリック・トレダノとオリヴィエ・ナカシュの共同監督
実話の持つ重みを理解しつつ、物語の核心である二人の交流に焦点を絞った演出
フィリップの抱える苦悩や孤独、ドリスの持つ荒削りながらも純粋なエネルギーを、過剰な説明や感傷的なカットを避け、自然な日常の描写を通じて表現
特に、ドリスがフィリップの介助を、従来の介護の枠を超えた「対等な人間関係」として捉え直していく描写の巧みさ
ユーモアとシリアスの場面転換のテンポが非常に良く、全編を通じてリズム感が保たれている
編集はドリアン・リガル=アンスー、特に序盤の疾走感あるシーンと、二人の関係性の深化に伴うゆったりとした描写の緩急のつけ方が絶妙で、物語に引き込まれる要因の一つ
キャスティング・役者の演技
主演
フランソワ・クリュゼ(フィリップ)
首から下は動かないという難役に挑み、主に顔の表情と声のトーンのみでフィリップの感情の機微を表現
上流階級の知的な品の良さと、事故による身体的制約、そして孤独を内に秘めた複雑な心境を見事に演じ切る
ドリスの奔放な行動に対する当初の困惑から、次第に心を開き、人生の喜びを取り戻していく過程を、微細な目の動きや口元の変化だけで表現
その繊細かつ深みのある演技は、観客がフィリップの「魂」に触れることを可能にし、物語にリアリティと共感性をもたらした
オマール・シー(ドリス)
エネルギッシュで自由奔放、裏社会にも通じた若者ながら、根は優しくまっすぐなドリスを魅力的に体現
その圧倒的な存在感と天性の明るさが、フィリップの閉塞的な生活に文字通り「風穴を開ける」
彼の発する飾り気のない言葉や、身体を大きく使ったコミカルな動きは、映画全体のユーモアの源泉
フランソワ・クリュゼとの対照的な演技スタイルが、互いを引き立て合い、化学反応を起こす
第37回セザール賞主演男優賞を受賞した演技は、単なるコメディの域を超え、深い人間愛を表現
助演
アンヌ・ル・ニ(イヴォンヌ)
フィリップの秘書として、フィリップの日常と精神的な安定を支える重要な役割を担う
ドリスの不適切な行動に厳しく対処しつつも、彼の人間性とその介助者としての資質を公平に見極める理性的な人物像を表現
その誠実さとプロ意識は、フィリップの生活の土台となり、ドリスの成長を見守る母親的な視点も併せ持つ
時に見せるフィリップへの深い配慮は、言葉少なながらも印象的
オドレイ・フルーロ(マグリ)
フィリップが想いを寄せる文通相手エレノアとの連絡を取り持つ女性として登場
当初はビジネスライクな関係だが、ドリスによってエレノアとの関係に踏み出すよう促されるフィリップを見守る
知性と優しさを兼ね備えた大人の女性の魅力を自然体で表現
アルバン・イヴァノフ(バスティアン)
ドリスの親戚の一人として登場
登場シーンは少ないながら、ドリスの人間関係や、彼が元々いた環境の一部を垣間見せる役割
ドリスの抱える家族への責任感や、彼自身のルーツを理解する上で重要な背景を提供する
脚本・ストーリー
実在の人物、フィリップ・ポゾ・ディ・ボルゴとアブデル・セッローの交流を基にした物語
社会の分断や差別といった重いテーマを背景に持ちながらも、本質的には二人の孤独な魂の出会いと、友情による再生の物語として構成
型破りな介護人ドリスと、形式を重んじるフィリップの対比から生まれるコメディ要素が物語を軽やかに運び、観客を飽きさせない
ストーリーテリングはテンポ良く、必要な情報のみを提示し、観客の想像力に委ねる余地を残す
特にドリスの過去やフィリップの心情の深い部分を、セリフではなく行動や状況で語らせる点が優れている
物語の終盤、フィリップの再出発をドリスが優しく後押しするクライマックスは、感動的かつ爽快な結末を迎える
安易なハッピーエンドに終わらせず、二人の関係が人生の次の段階へ進むことを示唆する点が秀逸
映像・美術衣装
フィリップの邸宅は、パリの高級住宅地に位置し、美術品や古典的な調度品に囲まれた上流階級の優雅な生活空間として描かれる
対照的に、ドリスの住む移民街の公営住宅は、活気に満ちながらも混沌とした日常を反映
この二つの異なる世界を対比的に描き出すことで、フィリップとドリスの背景にある社会的な隔たりを視覚的に表現
衣装は、フィリップが常にエレガントな仕立ての服を着用するのに対し、ドリスはストリート色の強いカジュアルな服装
この対照が、キャラクターの個性を際立たせる
映像は全体的に温かみのあるトーンで統一され、感動的な場面では光の使い方が効果的
音楽
ルドヴィコ・エイナウディによるピアノ曲を主軸に、アース・ウィンド・アンド・ファイアー(Earth, Wind & Fire, EWF)などのファンク、ソウルミュージック、クラシック音楽が効果的に用いられている
フィリップの洗練された内面を表現するルドヴィコ・エイナウディの静謐なピアノ曲「Una Mattina」や「Fly」は、物語の感情的な深みを支える
一方、ドリスの持つ生命力や自由さを象徴するのが、EWFの「September」や「Boogie Wonderland」、ジョージ・ベンソンの「The Ghetto」などのソウル・ファンク
特に主題歌と明記された楽曲はないが、ドリスの介助初日の朝に流れるEWFの「September」が、映画の象徴的な場面で使われ、作品の軽快でポジティブなトーンを決定づけている
この新旧、ジャンルを超えた音楽の融合は、フィリップとドリスの異文化交流を音楽面からも表現する重要な要素となっている
作品
監督 エリック・トレダノ
オリビエ・ナカシュ
130×0.715 93.0
編集
主演 フランソワ・クリュゼA9×2
助演 オマール・シー S10×2
脚本・ストーリー エリック・トレダノ
オリビエ・ナカシュ
A9×7
撮影・映像 マチュー・バドピエ S10
美術・衣装 A9
音楽 ルドビコ・エイナウディ S10
9月も終わりになるので
シリアスとジョークのバランス
大好きな映画
私は介護士を目指す学生です
手離しで称賛してしまいたい。が・・・
リメイクも多く普遍的に愛され続けるフランス発ヒューマンコメディ
嫌な意味で裏切ってくる展開もなくとても気持ちの良い作品なのは間違いないが、「ステレオタイプが過ぎる」などの否定的な意見にも耳を傾けたくなる
パリの大富豪フィリップは全身麻痺である自身の介護人を選ぶための面接会を開いていた
そこにやってくる黒人のドリス。粗雑でデリカシーに欠ける言動も多い彼だが、そこが逆に印象に残ったのかフィリップに新しい介護人として選ばれることに
境遇も性格も趣味嗜好も全く異なる二人だが、それよりも大切な部分で噛み合った歯車が小さくも美しい物語を動かしていく・・・
リメイクも含めて初見の私は『グリーンブック』を思い出した
富豪で黒人の金持ちピアニストとそこに雇われる白人。ちょうど真逆の設定だからだ
個人的にはどちらも手離しで称賛してしまいたいくらい好きな作品だ
しかし、これはあくまで人種差別を直接的に感じず生きてこられた一日本人の感想
そうでない意見にも触れ考えを巡らすこと、それも忘れてはいけない大切なことだろう
特別視しない対等な関係
障害者だから、富豪だからと特別扱いの態度を取らない。
犯罪者だから、黒人だから、無職の放浪者だからと特別視しない。
二人は対等な関係で、だからこそ心から心地良く分かり合えたのではないかと思う。
実話に基づくというのが素敵でした。エンドロールで実在の人物の近況を聞けて嬉しくなりました。
まさしく最強
心まで障害者になるな!
首から下がマヒした大富豪のおっさん
素行の悪い刑務所帰りのスラム出身の青年
ひょんなことからヘルパーとして生活を共にする
交わるはずのない二人が交わり、それぞれの足りない部分を吸収し
互いの人生に影響を与え合う。
障がい系ってどうしても雰囲気が陰鬱になるイメージなんですけど
この作品は結構前向きでよかったですね。
介護される側もはれ物に触れるように丁寧に丁寧に気を使われると
息が詰まるものなんですかね。
だからこそ青年の気を使わない扱いを楽しんだのか。
どのような状態であろうと人の心の持ちようで人生は変わるものなんですかね。
気の持ちようってのは結構大事なのかもしれないですね。
ほんと、前向きに生きていきたいもんです。
もっと早く見ればよかった〜!
泣けました
どんな境遇にいても人とのつながりや友情の力は大きいんだと感じさせて...
どんな境遇にいても人とのつながりや友情の力は大きいんだと感じさせてくれる、心温まる作品です。フィリップ役のフランソワ・クリュゼと、彼を支えるドリス役のオマール・シーのコンビが最高で、全然違う二人がぶつかり合いながらもお互いに影響し合っていく様子が本当に微笑ましいです。
ドリスの無邪気さとユーモアが、富豪フィリップの硬く閉じた心を少しずつ解放していく様子が自然で、観ている側も気づけば笑顔になっています。富裕層と移民出身者という社会的背景の違いも描かれているけれど、重くなりすぎず、爽やかに進んでいくストーリーが心地よいです。
ただ、フィクションとしての美化された部分もあり、リアルさを求める人には物足りなく感じるかもしれません。とはいえ、見終わった後に温かい気持ちになれる映画です。
まあそういうこともあるんちゃう?
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