「魅力的な人間は、人を見下さない」最強のふたり ソビエト蓮舫さんの映画レビュー(感想・評価)
魅力的な人間は、人を見下さない
半身不随のフィリップと、定職がないドリスの、
奇妙な縁と、次第に強い絆で結ばれていく、2人の物語。
雇われる側のドリスが、一貫してとても人間臭くていい。障害者で気難しさのあるフィリップに対し、対等な立場で接するドリス。
そうあるべきだと分かっていても、実際そうする事は、やっぱり難しいんだよなあ。
介護の仕事をちょろっと齧っただけの私だが、初心者ほど、仰々しく恐る恐る、
介助する際は接してしまうもの。それをドリスはなぜか最初から、雑ではあるが、しっかりと恐れる事なくできている。
技術は未熟だし、傷つきそうな事も平気で言ってしまう所もあるが、
気難しいフィリップの目には、逆に表裏がなく、壁も作らず、
腹の中が見える人物として映り、好意的にとらえられる。
フィリップは、身体も自由が利かないが、ドリスと接する事で、体だけでなく、心もほぐれていく。
ドリスの家で働く人々も、当初はドリスを警戒しているが、相手の懐に入るのが上手いドリスによって、彼らも次第に打ち解けていく。
なんでそんなアンタが無職なのって、不思議に思うほど、人間関係の構築が上手い。
ドリスの人となりがよくわかるのが、フィリップの娘との対話のシーン。人を見下す傾向がある娘に対して、烈火のごとくキレる。
彼にとって、オペラ音楽を茶化したり、障害者の性反応へのイジリや、ナチスドイツ式の敬礼は「冗談」に過ぎないのだが、
人を見下す事だけは、冗談では済まされない。
善悪の判断基準が明白で、そこを押さえておくと、彼の行動原理や理屈も更に見えてくる。
へりくだる事もないし、見下す事もない。変に気張って取り繕うこともない。
より良く見せようともしない。
自然体で、友と対峙する。人と対峙する。
それさえ出来ていれば、魅力的に人になれるんだなと思えた。