「特撮技術とメタ構造で楽しめた」進撃の巨人 ATTACK ON TITAN 神社エールさんの映画レビュー(感想・評価)
特撮技術とメタ構造で楽しめた
原作未読、アニメ版鑑賞済。
事前に駄作駄作と聞いてはいたものの、脚本に参加した町山智浩さんがこの作品でどういう物を描こうとしているのかって言う事を聞いていたので、少し前情報が入った状態で観賞。
巨人を生身の人間にしたり、特撮技術を多く取り入れる事で、PG12の規制の中でも襲われる様が生々しく、より恐ろしく出来ていたし、教会の中の人々が餌食になるシーンはハリウッドに比べて予算が少ない中でダイナミックな映像表現に仕上がってたと思う。
映画には描きたいテーマがあって、物語のそこここにメタファーが散りばめられているって言う事を前提に観ると、今観たからかも知れないけどこの進撃の巨人(の前編)では、"テロリズムをきっかけに憲法改正した日本"って言うメタファーに見えた。
壁は"戦争をしない"と決めた日本の憲法、そこに住む人々は海外の実状を知らない日本人、超大型巨人は海外の保有する核やテロ等の驚異、にそれぞれ見え、終盤エレン自身が巨人に変わるシーンは、日本が海外に対抗する為には核(かそれに類する武装)を保有せざるを得ない時代になってきているってメッセージに感じられた。
町山さんが言う所だと、破られた壁を修復しに行く壁外再建団の作業員は地震と津波によって壊された原発を修復しに行く東電の作業員をイメージしたものらしく、確かにそれを聞くと唐突に牛が出てくるのは、放射能汚染によって人類が全て撤退したチェルノブイリが動物の楽園と化しているって話を彷彿とさせる。
日本の粋を集めたであろう特撮技術や町山さんの脚本など、結構良い素材があるけれど、裏話を聞く限り(メチャクチャとまではいかないまでも)樋口監督が現場で改変してしまっている部分が空回りしてしまってる様にも感じた。
後編(の特撮技術や現代社会へのメッセージ)を観るのが楽しみでもあり、(それが現場の判断でどう変わってしまったか)怖くもある。