「説明口調を排した演出が映えるスリリングなコメディ」鍵泥棒のメソッド よねさんの映画レビュー(感想・評価)
説明口調を排した演出が映えるスリリングなコメディ
落ちぶれた俳優志望の桜井は銭湯で出会った銭湯に似つかわしくない風貌の男近藤が転倒して頭部を強打するのを目撃、咄嗟の出来心で自分と近藤のロッカーの鍵をすり替えて立ち去る。病院で目覚めた近藤は記憶を失くしていることに気づくが、すり替えられた荷物から自分が桜井であると信じ込んでしまう。雑誌の編集長水嶋は病床の父を安心させるために超短期の婚活を決意、あらゆるツテを駆使して理想の男性を探している最中にひょんなことから近藤と出会い、失った記憶を取り戻そうとひたむきに生きようとする近藤に次第に惹かれていく。そんな3人が織りなす全編スリリングで先が読めないコメディ。
香川照之、堺雅人、広末涼子の抑制の効いたセリフと表情や仕草、会話の間合い、さりげない小物、風景などで観客に想像させるタイプの見事な作品で、映像のあちらこちらにさりげなく伏線が張り巡らされてそれがサクサクと回収されていくのが実に痛快。ドラマとはこうあるべしというお手本のような作品でした。
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