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映画レビュー

何がDVか? 意外と難しい問題

2025年2月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 DV(Domestic Violence : 家庭内暴力)の現状を捉えた前作を受けてDV裁判の実態を記録したドキュメンタリーです。

 まず、一日に何件ものDV案件を流れ作業の様に次々と処理せねばならぬ裁判官の目まぐるしさに圧倒されます。個別の問題を精査しつつも時間を区切って判断しなければ判決を待つ人々を積み残してしまいます。そもそも、そんなにもDVが多い事が驚きです。

 そして、それぞれの案件で目を惹くのは、明らかに被害を受けているのに告訴を急に取り下げる妻が少なからず居る事です。彼女は「父親が逮捕される姿を子供に見せたくない」と語ります。それに苛立つ裁判官は、突然の棄却に苛立ち、自身の権限で夫から妻への接近禁止令を下すのでした。

 この辺には、1994年に制定されたアメリカの DV防止法である VAWA (Violence Against Women Act) が深く関わっている事が、鑑賞後に勉強して分かりました。それまで DV は家庭内の揉め事と考えられ、警察は夫婦の仲裁に入る程度であったのに対し、この法では DV を犯罪として規定し、暴力の軽重によらず、また警察官の目前で行われたか否かに関わらず、犯行が行われたと疑われる場合は、警察官は逮捕令状なしで加害者と疑われる人物を「逮捕しなければならない」義務を負いました。加害者・被害者の意志に関わらず「逮捕によってまずは二人を引き離す」事が優先される事になったのです。だから、「えっ、逮捕だなんて、そんなつもりじゃなかったのに・・」と言う場合も生じます。

 本作中でも、「そりゃあ、単なる夫婦喧嘩じゃないのか」と思える例も取り上げられていました。しかし、「そんなの家庭内で片付けろよ」とした即断こそが、女性がDVを広く社会に訴える事を難しくして来たのですから、「何がDVか」は本当に難しい問題です。

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