果てなき路
劇場公開日:2012年1月14日
解説
アメリカン・ニューシネマの伝説的作品「断絶」(1971)のモンテ・ヘルマン監督が、「ヘルブレイン 血塗られた頭脳」(89)以来21年ぶりに手がけた長編監督作。若手映画監督を主人公に、映画製作の過程とそこで起こる事件を描く。実在の事件をもとにした映画の製作を始めた若きアメリカ人映画監督のミッチェル・ヘイブンは、オーディションで映画のヒロイン役にぴったりな女優ローレルと出会い、恋に落ちる。撮影が進むにつれて2人の仲は深まっていくが、ある日、撮影スタッフが滞在するホテルで銃声が鳴り響き……。
2011年製作/121分/アメリカ
原題:Road to Nowhere
配給:boid
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果てなき路の終点である行き止まりのトンネルで犯罪が行われ、男女は、死体を替え玉にして逃げる…という実話の映画を撮るにあたり、監督はイメージぴったりの女優を抜擢し、加速度的に彼女との愛を深めながら撮影を進めてゆく。
ぴったりなのは当然のこと。ローレルはヴェルマ本人である。女優が登場人物の役になりきるのではなく、登場人物が女優になりきっているのだ。
男優もセスナ機で墜落するタッシェン本人だ。
そして、実話ではヴェルマは自殺したことになっている。
で、キューバの政治的な思惑も絡みながら、保険調査員がその事実に気づく。ヴェルマが生きていては辻褄が合わない。そしてついに悲劇が起きる。
監督は発砲したあと二人の遺体を撮影するが、その様子を謎の撮影クルーが囲んでいる。
何も知らない無邪気な映画監督の話を、別の監督が撮っているようだ。
ラストの監獄の面会シーンでも、ナタリーが最後の撮影を終えた感じだし。ものすごく不気味だ。
撮ることと観ることを同時に体験することは、虚構と現実の境界線があいまいになる。まるで映画という無限ループに入り込んでしまった感覚。
で、まんまとループにはまった私は、終わった瞬間に「もう一度観たい!」と思わされた。
「第七の封印」の悪魔が引用されている。悪魔は、何かを途中で頓挫させ終わらせる残酷さと同時に、何かを「永遠」に残すというチャーミングなところがあるようだ。
無限ループの中で、目を閉じたヴェルマの顔は永遠に美しい。
モンテヘルマンの前作、あの名作『断絶』のローリーもまた永遠だ。エンディングの「ローリーに捧ぐ」に涙した。