「冷徹な鎧。」J・エドガー ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
冷徹な鎧。
今回のイーストウッド卿は、かなり冷徹に描いている。
ディカプリオの熱演(老けメイクね^^;)をよそに、どこか
遠くから眺めているような冷徹さに満ちている気がした。
そもそもが、エドガー(フーバー長官の方が耳慣れている)
擁護の内容にはなっていないし、とはいえ、
彼の人となりは十二分に感じ取れる作品になっている。
ただ、いつもの卿の映画ではないような、そんな感じだ。
「ヒアアフター」が、その後の震災で上映されなくなった時、
こんなにいい作品なのに勿体ない…と思った。
確かに大津波による恐怖は描かれていたが、その後の人生、
その足取りをしっかりと描いた作品であった。
私的にこのエドガーよりは、ドラマ性もあって良かったなぁ。
確かに彼の人生を知るうえではリアルで興味深い。けど、
どんな人間にもあるのであろう弱味や過信による虚癖を、
彼がどんな場面で行使していたかを、いつもの押しの強さで
ディカプリオは熱演しているが、その独壇場ともいえる彼の
弁舌が冴えわたるほど周囲は冷めていく…といったような、
つまり本人がどういう立場に見られていたかを観客で再現
させようという意図のもとで作っているかのような、冷徹で
突き放したような感が私にはあって、何か入り込めなかった。
どんな悪党にも、大バカ野郎にも、クソジジイにも(爆)、
大いに寄り添い(まぁ遠目になんだけど)見守る目線がどうも
今回の作品にはまったく感じられなかった。どうしてだろう。
聞くところによると、今回の卿は企画持ち込みの雇われ監督?
のような立場だったようで…あまり乗り気じゃなかったのか^^;
スコセッシと組めばとことん黒くなれたディカプリオなのにね。
まぁ相性の話をしてもしかたないのですが^^;
とにかくこのエドガー(やっぱりフーバー長官にしようっと!)の、
個人的な欠陥に深く深く入り込み、大偉を成し遂げた権力者で
あると同時に、いかにエゴが強くて他人に批判的であったかを
これでもかと掘り下げてくれる問題作。彼ほどでないにしても、
こういった鎧を纏わないと何も出来ない愚か者は多い気がする。
さりとて人間は(特に男性は?)、自分をより大きく見せることに
御執心になる生き物だから、その均等技を伝授してくれる側近
(彼らありきですね^^;)の存在は計り知れないほど大きい。
フーバー長官成功の源は、彼に就いてくれた二人にあると思う。
しかし…またゲイ絡みだったのねぇ^^;
必ずや一番!意地でもトップ!めざせ首位!…みたいに、
大きな期待をかければかけるほど、小さい頃から頑張るでしょう。
だけど一番大切なのは、一番をとった「あとの生き方」。
そこをきちんと教えないのは、親の欺瞞なんでしょうかね。
そう考えると、非常に勉強になる映画ではありました…(汗)
(だけど味方を得られたのだから、魅力あったのよね?きっと^^;)