「さよなら415号室の怪物」ドライヴ 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
さよなら415号室の怪物
スコア5.0判定はかなり出し惜しみしてるつもりなんだが、
今月2本目の5.0判定を出してしまいましたよ……。
だが、ムチャクチャ良い。
極力台詞を排し、視線や拳の動きなどの細かな所作や、
時計の音や革の軋み・背景音だけで状況を語り、緊迫感を煽る巧みさ。
メロディアスな挿入歌とスコア。それらと見事に同調する映像のテンポ。
車内の主人公の顔を照らす、オレンジの照明の艶っぽさ。
最初の10分間でもう溜め息が出るほど美しい。
シンプル。しかも極めて優雅に洗練されている。
終盤に入る前で少しもたつくが、
この美しさがほぼずっと続くのだから、
これを見事と言わずに何と言いますかアナタ。
そして主演のライアン・ゴスリングが本当に、
いやもうホントに、とてつもなくセクシーでカッコいい!
“男も惚れる男”たぁこの事ですよ!!
彼をカッコいいと思った事、いっぺんも無かったのに!(←微妙に失礼)
沈着冷静。用意周到。そして、寡黙。口ではなく行動で語る男。
マシーンのように動かない表情の皮膚の下で、
思考回路がバチバチと火花を散らしているのが見えるかのようだ。
序盤で完璧なマシーンぶりを見せる主人公だけに、
ヒロインとその息子との交流は温かみに溢れている。
やはり寡黙だが2人を優しく気遣い、微笑を浮かべ、時にはユーモアさえ滲ませる。
そして終盤での別れ。
エレベータ内でのキスは、
僕が今まで観た映画の中でも、とびきり美しいキスシーンだった。
暖かい照明に照らされた領域が二人きりの空間になるあの瞬間。
だがその直後の、身も凍る暴力。
いくら彼女を救う為とはいえ、彼女が自分に恐怖を抱き、
離れて行く事を彼は見越していたのだろう。
それでも怯える彼女の顔を見て、
惹かれ合ってはいても所詮は住む世界の違う人間同士だと痛感したのだろうか。
ここから先の彼は怪物同然だ。
血染めのジャンパーも脱がず、薄気味悪いマスクを身に付ける。
波打ち際、マスクを被った主人公が灯台の光に照らし出されるシーンのあの不気味さ。
人から恐れられて当然の、非情な怪物。
フランケンシュタインの怪物の有名な台詞を思い出した。
「我々には死がお似合いだ」
人間になる願いを棄てた悲しい怪物の物語だ。
彼は、415号室に戻らなかった。
クールでバイオレント、エレガントでロマンティックな傑作。
観賞後、男なら無口になること請け合いです。
<2012/3/31観賞>
きびなごさん、 こんにちは。
「アリス・イン・ワンダーランド」へのコメントをありがとうございます。
きびなごさんに、そう仰っていただけると、自分勝手なレビューに、少しだけ自信が持てるように思えます。
「ドライブ」
きびなごさんは、5点満点だったのですね。
私も5点にしようかどうしようか迷いました。
でも、現時点で今年一番の作品であったことは、間違いないです。
きびなごさんのレビューを読んでいると、
映画のシーンが蘇ってきます。
とても良かったですね。
ライアン演じるドライバーの過酷であったろう過去や、それに相反する純粋さが、素晴らしかったですね。
私のコメントへの返信は、お気になさらないでくださいね。
賛成意見、反対意見など思いついて、気の向いた時にでも、どうしようもなくヒマな時などに、またコメントを頂けると嬉しいです。
今週は、「プロメテウス」を見に行ってきます。