ものすごくうるさくて、ありえないほど近いのレビュー・感想・評価
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映画だからこそ、より自由に、もっと豊かに
あの ダルドリー監督ということで、期待して観に行きました。
海外ベストセラー原作の佳作に出会うと、映像による「翻訳」は、言語による「翻訳」以上に、オリジナルをより自由に・豊かに描きうるのだなあと感じます。例えば、同監督の「愛を読むひと」がそうでした。原作未読ですが「めぐり会う時間たち」も、時空を融通無碍に越え、豊かな物語を紡いでいたと思います。
本作は原作(の訳書)を読んでから臨みました。三層の物語が絡み合い、読むのは少々大変でした。個人的には(認識不足もあって)911よりドレスデンのパートが印象的深かったです。「ドレスデン運命の日」を観返したくなりました。
さて、映画。こちらは911にあくまで焦点を置き、語るべき物語をくっきりと打ち出していたと思います。その分、祖父の物語であるドレスデンともう一つの物語は、背景としてぐっと後退していました。やや盛り込みすぎの感がある原作から枝葉を適度に刈り取る等「自由な翻訳」が成功しています。けれども、同監督ならば、映画による「豊かな翻訳」も本作以上に十分可能だったかと思われ、少々惜しまれます。マックス・フォン・シドーが素晴らしいだけに、もっと観たかったという気持ちがひとしおでした。
それから。幕切れの「up」を「引く」と訳した字幕は、どうにも違和感があります。「up」以外の何ものでもなく、むしろ和訳は不要かと。物語の肝ですから。
ちなみに、予告でガンガン流れていたU2は登場しません。というか、U2の余地がない、まったく似合わない映画でした。(私はU2好きです。本作については、です。)U2を期待した人も少なくないと思いますし、予告は本編と乖離していたのでは、という思いが残りました。
数千万円のデジタルカメラ
で、全編撮影されている。このカメラは人物の顔のアップがとても得意である。カメラオタクの私が見ても フィルムで撮影したものとほぼ 区別がつかない 。とても美しいと思った 。ただ どういうわけか デジタルカメラはボケ味がシンプル というか、ボケの部分の味わいが出ない。カメラマンが それに気がついているので 全体に顔のクロースアップが多すぎて単調な演出になってしまってる。画面に人物の全身が映るショットは常に非常に短く、美しい風景のカットはほとんどない。ちなみにこのカメラマンは4回もアカデミー撮影賞にノミネートされて2回受賞している。この作品と 「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬」
を比べてみるとデジタルとフィルムの味わいの違いがよくわかると思う。この作品だけ見ていると悪くない映像だと思っても、3度目の埋葬の方を見ると圧倒されるんじゃないかな。 もし されないとしたら、あなたはもっと素晴らしい モニターかプロジェクターを買うべきだ。もっとも、すでにフィルム用カメラは製造されてないけどね。悲しいことに。
ストーリーはそれほど素晴らしいものではないと思った。中盤と 終盤とに3つのエピソードがあるんだけど それらはあまりうまく溶けあっておらず 一つ一つのエピソードの完成度も低いと思った。この映画がうまくいったのは 少年の演技力とカメラマンのカバー力によるものだと思った。あと 音楽の使い方も上手かったね
9.11 がネタになっているからちょっと書くけど・・ あそこに 突入している飛行機が 皆さんにはリアルに見えるのかな? 見えるならもっと素晴らしい モニターかプロジェクターを買うべきだよ。
とても感動しました
タイトルなし
映画って難しい。間違いなく秀作なんですが、素晴らしいと感じたかと言うと…。でも駄作ではないです、決して。何とも言いようの難しい作品。
まず主人公の男の子に乗り切れなかった。父親を理不尽に亡くしてああなるのもとってもよくわかるし文句のつけようもないんだけど、彼に乗り切れなかった。これは単純に自分の精神年齢が子供で赦しがないからかも。ただ加えて関係するのかもしれないのが9.11。この映画の背景でしかないので「それを言っちゃあお終いだろ」と自分でも思うんだけど、やっぱり"お互い様やろ。アメリカもそれ以上殺してるだろ。被害者ぶるなよ"と無意識に感じてしまう。他の映画では考えもしないのになぜだろう。
また、祖父とのエピソードや鍵の顛末その他、踏み込みきれていない、散漫で取り留めのない印象で終わってしまったと感じた。これも他の映画でもっとテーマから離れた着地の仕方をしている作品はゴマンとあるのに、この映画だけ気になってしまったのがなぜかわからない。でも例えばクーリンチェ少年殺人事件を自分は映画史指折りの傑作だと思うが、あれは少年少女の喧嘩や恋模様の裏に台湾の歴史を含ませている所に強烈な迫力を感じる。そう思うと、この作品の中のアメリカの歴史に血生臭さと被害者意識だけを感じてしまい、心の何処かで「飛行機は何の理由もなくツインタワーに突っ込まんよ」と思ってしまう。歴史を背負いきれてないっていうのか。エドワード・ヤンってやっぱり凄いんだな、とは思った。彼なら何とかしている気がするから。
結局よくわからなくなった。映画って難しい。
なんか小難しくないか
映画を見る目を
苦しくて涙…して良いのか?
少年の行動力と、それを支える大人たち
感動的な内容にも関わらず、何故か感動に繋がらず…
全く知らない作品のTV放映だったが、何せ、
「リトル・ダンサー」
「めぐりあう時間たち」
「愛を読むひと」
で魅了させて頂いた同じ監督作品と知って
初鑑賞した。
アスペルガー症候群の子供が、
9.11で父を失う中でもたらし、彼自身と、
そして接した人々の関係復活劇的様相で、
本来はかなり感動的な内容の作品だ。
しかし、何故か己の感動に結びつかない。
様々なことが頭をよぎる。
父親が9.11で亡くならず、
また彼が花瓶を手に入れてなかったら、
更にその花瓶を落とさなかったら、
との3エピソードの一つでも無かったら、
その後の物語の成立しない作品だが?
息子がアスペルガー症候群ではないとしても
話として成り立たなかったろうか?
それに絡み、よもや本質的な意味ではなく、
展開をドラマチックにするべく方法論的に
そのような病状の設定にした背景は
ないのか?
父親が特に息子と接していたからだと
しても、また、
母親と本来あったように見える溝は、
後でそうではないと分かるのだが、
母親に別の男性がいたと
息子は思っていたからなのか?
祖父の2度に渡る祖母との別離は、
もしかして、
声を失ったことにも起因していて、
父親同様に戦争の悲劇として
語られているのかも知れないが、
説明はなく想像するばかりだったが?
等々、疑問に感じる展開構成が
感動を阻害したのか、
その理由も不明のまま鑑賞を終えた。
そんな中、何とか監督の製作意図として
感じてきたのが、
ラストシーン直前までは、
アスペルガー症候群の少年が
父親の残した謎のキーを巡っての
他人との交流がもたらす症状克服ストーリー
のように思えたが、
最後の最後には、祖父・祖母や
彼が最初に調べに行った黒人夫婦の描写を
通して、
また、少年と母親との関係も含め、
家族の絆の復活的ストーリーではあった。
しかし、上記の理由も含め、
没入を妨げる何かがあり、
ダルドリー監督の前記の映画に比べると、
今一つに感じてしまった。
尚、私の一番好きな
スティーブン・ダルドリー監督作品は
「リトル・ダンサー」です。
notstop looking 〜 愛してる
多弁で利発な少年オスカーをトーマス・ホーンか熱演。その表情、真摯な眼差しからラスト迄目が離せなかった。
辛い体験により言葉を失った老人と行動を共にするうち、オスカーは徐々に心を開いていく。1年間ずっと心を痛めていた出来事を打ち明ける姿が切ない。
少年の母親を演じたサンドラ・ブロック、老人を演じたマックス・フォン・シドーの演技に魅せられる。
終盤の母親の告白に驚かされました。もし私がオスカー少年だったなら、ショックを受けるかも知れません。
少年期に難役を見事に演じたトーマス・ホーン。もう一度映画界に戻る事はないのでしょうか。
NHK-BSを録画にて鑑賞 (字幕版)
理不尽極まりない9•11
あの日のあの衝撃は、
世界中の人々にあってはならないことが
現実に起こってしまったことを知らしめた。
色々な目的で様々な場所に行く為
飛行機に乗っていた人々が、
忙しい仕事の真っ最中の人々が、
救助や消防の仕事に携わる人々が、
何をしたというのだろう。
こんな目に遭うような事、誰もしていない。
お父さん子だったオスカー、
いろんな話して憧れて大好きだった。
だけど、あの日のお父さんからの
電話をとる事はできなくて。
ママが一年間手付かずにしていた部屋に入り、
物色中に鍵を見つける。
Blackと封筒に書いてあるのも見つけ、
おそらく父がこの鍵に合う鍵穴のある物を
Blackさんが所有しているのだろう、と考え
ニューヨーク中のBlackさんを探しに行こうと
決意して実行して行く。
実は、みんな心配していた。
傷心のママ、
近くで見守るおばあちゃん、
その同居人で実は‥‥。
そして、出会った多くの人も。
オスカーの身の上を知ると、
抱きしめた人がいた。
何度も何度も抱きしめた人、ハグ好きヘクター
皆、傷つき何かを無くしていた。
そして、鍵🗝の持ち主がみつかり、
想像していたストーリーとは違ったけれど、
無事に元の場所に。
膨大な電話帳のリストにもめげないオスカー、
ことが上手く運ばないとロッカー工場で暴れる
ガスマスクつけて電車に乗る。
人との会話で。
発達障害を持った子かな?と思った。
なぜかと思った。
勝手な推測、
大人でもやり遂げられるか、という内容。
一つのことに執着し、なかなか逸れない、
普通なら馬鹿げたことやってられない、
と思い直すところ、突き進む。
そして、感情も露わに出し、
周囲の目を憚らない。
それでかなぁ。
だのに、
ママに「また恋してもいいよ。」と言い、
ママに、「代われる人はいない。」と返される
❤️
また、「パパが、あんないい子いないよ。って言ってた。」と言う。 🌺
おしゃまな優しい面も。
お祖父さんも帰って来て、パパの話も聞けるかな。
繰り返してはならぬこと
父との繋がりを求め、ひたすらに突き進む少年。母を拒絶する言葉、本心でないことは母も本人も分かっているが、一瞬でも思って口にしてしまった事実はずっと残る。
終盤までは、少年の執拗な鍵への執着を、彼の特性によるものと思っていた。
しかし、あの日少年に何があったのかが分かると、自身を維持するための必死の行動だったのだと分かる。何故母を拒絶してしまったのかも。回想される内容、少年の表情には心が締め付けられる。
父の教え、母の強さ、祖母や同居人の優しさに支えられながら、数年をかけて多くのブラックさんと交流した少年。母への一言が、彼が大人になったのだと思いつつも、余りにベタなセリフでほっとした。
物語上、非常に大きな役割を果たした祖母の同居人。彼を演じたマックス・フォン・シドーの演技はとても印象的。偶然にも、少し前にフラッシュゴードンを観たばかりであった。
22回目の9.11にBSで鑑賞
不条理な事件で父を失う悲劇から立ち上がろうとする少年と母の愛の物語
大好きな「リトル・ダンサー」の監督スティーブン・ダルドリーの映画作品4作目。舞台演出家から39歳で映画監督デビューしても作品数は少なく、他には「愛を読むひと」しか観ていない。結論から言うと、「愛を読むひと」が最も映画らしい秀作だったが、完成度では「リトル・ダンサー」が抜きん出て素晴らしく、この「ものすごくうるさくて、ありないほど近い」は、映画として不足があるものの題材のユニークさにおいては観る者を惹きつけて離さない面白さに満ちている。これは、ジョナサン・サフラン・フォアの同名小説『Extremely Lound and Incredibly Close』(2005年)の原作の独創性故であろうし、先ず何より2001年の世界を変えたアメリア同時多発テロ事件を題材にしながら、主人公をアスペルガー症候群の病気を抱えた多感で繊細な11歳の少年にして、現実にある予期せぬ悲劇に立ち向かう少年の内面の成長に焦点を絞ったストーリーが素晴らしい。ダルドリー監督はあるインタビューの中で、原作者と脚本家エリック・ロスとの三人でアイデアを出し、原作の何を選択するかに苦心したと答えている。つまり、原作者を納得させることが大事であったという事だ。そして、音楽用語の“マッシュアップ”を用いて三人のミックスとバランスが成されたことを語っている。ここに、この映画の面白さと難しさが同居している。原作を忠実に再現したら129分には収まらなかっただろうし、それでも映画としては整理しきれていない脚本の複雑さが挙げられる。映画の理想はオリジナル脚本であり、有名で優れた小説を脚色することもまた大変な労力と才覚が必要なのだ。エリック・ロスは「フォレスト・ガンプ/一期一会」「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」のベテラン脚本家と知る。脚本家ひとりの問題では無いのを充分承知しても、この映画のウィークポイントを敢えて一つ挙げるならば脚本である。
それをカバーして余りあるのは俳優陣の充実度とダルドリー監督の演出の安定感である。変わった題名がそのまま主人公オスカー少年の不思議な人物像を表すが、頭の回転の速さと工作の才能の高さを持ちながら、感情を制御できない苛立ちを抱えている。物事を理論立てて答えを導く賢さと、人に怒りをぶつける乱暴さが同居した少年。この傷つきやすく精神不安定なオスカーを演じた13歳のトーマス・ホーンが、この映画の最も素晴らしい点であることは間違いない。スター俳優のトム・ハンクスとサンドラ・ブロックの子供という難役も違和感なく、キャラクター表現の巧みさは、これが演技初挑戦とは思えない。大々的にオーディションをしたが、偶然にもテレビのクイズ番組で好成績を上げたホーン少年を制作者スコット・ルーディンが見つけたという。こういうのが映画制作で一番価値がある。成績優秀な少年は、この後映画には出ていない。(調べると今年26歳になり法律事務所でアソシエイト弁護士をしていると分かった)殆ど主人公のナレーションにより物語が語られるため、ハンクスもブロックも前面には出てこない。このふたりでなくても出来る役柄なので仕方ないのだが、描き足りない欠点は少し感じる。それを補うのが、後半から登場する今は亡き名優マックス・フォン・シドーの謎の間借り人。ベルイマン映画の常連からアメリカ映画や他のヨーロッパ映画に数多く出演し70年近くのキャリアを重ねた。父トーマスの最後の声を聴く二人の場面のやり取りは、涙なしでは観られない。他ではアビー・ブラックを演じたヴィオラ・デイヴィスが印象に残る。短いシーンでもいい演技を見せていて勿体ないと思っていたら、後半のクライマックスに再登場してきて納得した。
肉親を失う深刻な悲劇の物語だから、観て泣いてしまうのは必然である。(でも沢山泣けたから良い映画とは言い難い)それでも感情を解放して観てしまうと、この映画には泣かせどころが多くある。特に母親リンダが息子オスカーの調査探検の先回りをしていたエピソードのクライマックスは、様々なブラックという名の人々の人生を垣間見せたモンタージュに、この映画の本質が凝縮されていて深い感銘を受けた。スティーブン・ダルドリーの演出の巧さは、やはり観ていて感心してしまう。原作をリスペクトした脚本故の詰め込み過ぎの映画としての贅沢な不満を憶えながら、この映画には、創作の難しさを改めて教えてくれた労力を評価したい。人は苦しみから逃げないで、どう生きて行けばいいのかをオスカー少年の健気で真剣な調査検索で描いた物語を、良い映画に創作しようと映画に愛情を傾けたダルドリー監督の力作である。
全て見守っていた母の愛
夫婦の愛、親子の愛が輝く作品
沢山の愛に溢れていた
パパとの“8分間の距離”を永遠に延ばす旅。
静かに進む物語だけど、静かな音楽と相まって、気がつくとすごい夢中になってました。
何というか、ゆっくりなのにすごい引き込まれ方でしたね。
今作がデビューという子役トーマスホーンがまた素敵。
無垢で、とても傷つきやすい感じがとても滲み出てました。
また、タンバリンやガスマスクを持ち走るその姿は、どこかエリオットを思わせるから不思議。
この子役の輝かせ方も、ダルドリーの魅力なんでしょうね。
そんな彼の父親にトムハンクス、母親はサンドラブロックというものすごい安心感。
亡き父を感じていたい為、途方もない謎解きを繰り返し、やっと辿り着いた先でまた全て無くしてしまう。
でも実は、沢山の愛に溢れていた。
失意から踏み出す勇気、家族の愛、人々の愛。
嬉しい涙が溢れる、そんな素晴らしい作品でした。
今までで1番泣いた。
序盤からずっと重くて今までで1番泣いた映画。
トム・ハンクスが良いお父さんすぎたのが拍車をかけた。
男の子がめちゃくちゃかっこよくて演技が上手だった。
終始すごい重くて辛いけど、最後は希望が見えた。
電話のシーンと、おじいちゃんに話すシーンと、「あそこにいたのがお母さんだったら良かったのに」のシーンが最も泣けた。
親は偉大。
誰もが大切な何かを失っている
登場人物ひとりひとりの感情が丁寧に表現されている。
終盤の「大勢の人が大切な何かを失ってた」というセリフで視聴者の共感が引き出される。ラスト、失望を受容し次のステージへ進もうとする主人公の姿に、背中を押される感覚を覚える。
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