あなたへのレビュー・感想・評価
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高倉健と旅をする
高倉健。
今や死語となった“銀幕スター”を体現出来る唯一の存在である。
数々の映画から寡黙で不器用というイメージだが、素顔は意外とユーモア溢れる。
先日「スマステ」に生出演(!)した時、「“TVタックル”のスタジオに行きたかった」ととぼけたユーモアで、緊張する香取・草なぎの両名を和ませてくれていた。
そんな懐の広さが、ビートたけしを始め多くの人々に慕われリスペクトされている。
色んな意味で大スターと呼ぶに相応しい。
“高倉健は何を演じても高倉健”と言われる事もある。
確かにほとんどの役柄は変わり映えしない。
でもそれがピタリとハマる場合がある。
“高倉健は何を演じても高倉健だが、やはり高倉健でないと成り立たない”場合である。
「幸福の黄色いハンカチ」や「鉄道員」がそうだ。
「鉄道員」なんか、もし高倉健でなかったら、あそこまでの作品にはならなかっただろう。
本作もピタッとハマった。
亡き妻の遺骨を故郷の海に撒く為旅をする。
また作品雰囲気も高倉健本人のようだ。
真面目でありながら所々ユーモア溢れ、人の善意を感じ、人に感謝したくなる。
正直妻の遺言の意味が今一つピンと来なかったが、そんな不器用さも含めて。
漫画やTVドラマの映画化が氾濫する今の日本映画界で、昔ながらの実直な映画作りと、80過ぎてもスターとして輝き続ける高倉健に「ありがとう」と言いたい。
期待しすぎてしまいましたf^_^;
高倉健さんの佇まいは別格として、佐藤浩市さんの存在が最初から最後までなんか納得いきませんでした。
久しぶりに田中裕子さんの笑顔を見て、ホンワカ気分になりました。
清々しく優しい作品になりました。
映画館は、たくさんのお客様です。みんな、久しぶりの健さんを今か今かとお集まりのようですね。
「あなたへ」なんてタイトルに、ハンカチ片手に観ていましたが、そんなノスタルジーだけの映画じゃ無く、心温まる優しさに包まれた映画でした。
亡くなられた奥様からの遺言に、健さんは車で奥様の故郷へと旅に出ます。
そこで、もう一通の最後の手紙を受け取るために。
素晴らしい景色と雑多な人間模様を織りまぜながら、旅は終着となりました。
遺言の散骨も無事終わり、訪れた古い写真館に飾られていたセピア色の写真は、きっと奥様でしょう?
最後のはがきに残された「さようなら」の言葉に、健さんの中で止まってしまっていた時間が動き始めたようでした。
すべてを知る奥様からの、最後のエールと感謝の気持ちなのでしょう。
エンディングワードの「さようなら」を、自分ならどの様に受け止められるのかな?そう思いながら、優しさに包まれて映画館をでました。
(。-_-。)
季節外れの風鈴の音ほど、物悲しく響く事はない!
ビックスター高倉健主演の本編を観られる事の楽しみは、彼の特別なファンに限らずに、邦画ファンなら、誰が観ても間違いなく、楽しみなロードムービーだ!
高倉健主演の「あうん」のプロデューサー古市聖智が遺したオリジナル作品であると言う本作品「あなたへ」は久し振りに、邦画らしい、邦画を観られたと言う非常に満足感が得られ、観終わった後は、正に気持ちがほのぼのと満たされる秀作であった。
健さん演じる倉島英二は、妻洋子(田中裕子)を最近亡くしたばかりだが、その亡き妻が2枚の絵手紙を残していたが、1枚は彼女の生れ故郷である長崎の平戸市の郵便局でしか受け取れないで、しかも受け取るにもその期限も限られていると言うので、英二は生前妻と一緒に旅行をする予定で、手作りで改良を加えて準備をしていたその愛車を走らせて、一途に平戸市へと向かう。しかも、その妻の遺言では、遺骨を故郷である平戸の海に散骨をして欲しいと言う最後の希望だった。
平戸へと向かう旅の途中で、様々な人々との出会いを通して、亡き妻洋子にとり、英二と言う自分の存在とは一体どんな存在であったのだろうかと、熟年夫婦の心の拠り所を再度見つめ直す旅を始めるこの作品は、観ていて感慨深いものだった。
平戸の郵便局で受け取った妻からの絵手紙には、只一言だけ、「さようなら」と記されていた事で、洋子にとって英二の存在とはどう言うふうに映っていたのかと、英二は自身の存在に対する疑問を持ち始めるのだが、かつて英二が妻の洋子に対して、自分の時間を止めてしまう事無く、自分自身の人生を再び歩んで生き直して欲しいと激励するのだが、洋子もそれに応える様に、今先立って行くにあたり、一人遺された英二が、洋子との想い出の中だけに生きる事無くして、残された英二自身の余生を精一杯、満足のゆく人生へと再び歩み直して欲しいと願う、妻の命がけの愛のメッセージには心を打たれる。
人生とは、時に本当に残酷で、予告無く或る日突然愛する者との死別がやって来るものだ。しかしその遺された人間にはその生涯を終わらせるまでに、再び亡き者と共有した時間とは別の人生の時間が必ず存在している。その新たな別の人生を大切に生きる事で、より一層亡き者と過ごした愛の時間を高いものへと昇華させる事が出来る事を知らしめてくれる本作は、究極の人間愛をテーマとして描いている作品と言える。
そして、同時にこの作品は、私達が持つ、もう一つの愛、郷土愛の存在の良さを再び教えてくれるのだ。郷土愛の1つの表れとして、遺骨の散骨を故郷で行う事を望むと言う表現で象徴している。自分の人生を護り、育んで来た自然の存在に対する精一杯の愛の表現を描いている点である。人は死んだその後でも帰省を望むと言う、言わば生物としての帰省本能とも言うべきか、自己の郷土に対する愛が表現されているのだ。
一方、旅で出会う若者の三浦貴大演じる卓也は婚約者奈緒子(綾瀬はるか)の漁師であった父南原慎一(佐藤浩市)がかつて、漁で遭難し、亡くなっているにも関わらず、その娘の奈緒子が漁師である自分と結婚する事を望んでくれている事に対して、心より感謝し喜んでいる。これこそが生活の場である故郷に対する郷土愛の最大の愛情表現でもある。
今日では、都市化が進み、郷土色が失われつつあると言うが、故郷がこうして生きる生活の場として、自然に受け継がれて生きていく事の素晴らしさも教えてくれる、邦画ならではの素晴らしいテーマだ。
夫婦でも総て相手の気持ちを理解している事なんてありはしないと語る多恵子(余貴美子)の存在も忘れてはならない。
幾つもの素晴らしい愛を描いている本作は素晴らしい作品だが、私は個人的な好みとしては、洋子と英二の散骨をめぐる話しだけで終わらせると、よりシンプルであり、尚一層、純粋で解り易い作品としてスッキリとする事が出来たと考えているが、あなたはどうこの映画を観るのだろうか?楽しみである。
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