あなたへのレビュー・感想・評価
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【我が人生で高倉健さんの映画を初めて劇場で鑑賞した作品。今作に出演したビートたけしさんや岡村隆史さんが、高倉さんの人柄に惚れ込んだ作品でもある。】
今作は、恥ずかしながら、高倉健さんの映画を映画館で観た最初で最後の作品である。
内容は人口に膾炙していると思われるので割愛するが、今作には故、大滝秀治さん、田中裕子さん、佐藤浩市さんという当時の邦画を代表する名優が僅かなショットに出演するために多数集まっている。
ロードムービースタイルの映画も面白かったが、健さんが演じた倉島が亡き妻の絵手紙に書かれた想いを叶えるために、旅する途中で出会ったビートたけしさん演じる男や岡村隆史さんが演じる男との遣り取りも面白く、その後NHKで放映された今作の制作風景を映したドキュメンタリー作品を見て(勿論、録画して偶に見返している。)、高倉健さんが共演した人達を思い遣り、時に高級な腕時計をさり気無くプレゼントしていた事を知り、改めてファンになった作品である。
残念ながら、この作品完成後程なくして、世を去られたのだが個人的に意義深い作品なのである。
勿論、鑑賞後に購入したパンフレットは大切に保管している。
<2012年8月30日 シネプレックス岡崎(現ユナイテッドシネマ岡崎)にて鑑賞>
映画らしい映画かな。
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妻に先立たれた高倉が、その遺言により遺骨を海に散布する話。
その旅で色んな人と出会う。
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まあ映画らしい映画かな。
でもいつも言うように、徘徊型の映画はあまり好きではない。
ラストシーン近くでやっとわかった。 主演は高倉健。 しかし主役は別の人だった。 ああそうか! そうなのか! イマイチだと思って見ていた映画の最後の最後に この映画が明るく輝いた瞬間だった。
BSテレビ東京で映画「あなたへ」を見た。
劇場公開日 2012年8月25日
3週連続!高倉健シネマスペシャルの3周目である。
高倉健81才
田中裕子57才
佐藤浩市52才
余貴美子56才
綾瀬はるか27才
ビートたけし65才
大滝秀治87才
降旗康男監督78才
富山県の刑務官・高倉健は妻・田中裕子を亡くした。
故郷の九州に散骨して欲しいという妻の遺言。
高倉健は手製のキャンピングカーで出発する。
いわゆるロードムービーであるが、
高倉健が旅の途中で出会う、
草彅剛やビートたけしや佐藤浩市や余貴美子、
これらのエピソードにいったい何の意味があるんだろう?
そう思いながら見ていた、
高倉健晩年の作品にしては精彩を欠いている。
そう思った。
しかし、ラストシーン近くでやっとわかった。
主演は高倉健。
しかし主役は別の人だった。
ああそうか!
そうなのか!
イマイチだと思って見ていた映画の最後の最後に
この映画が明るく輝いた瞬間だった。
上映時間は111分。
満足度は5点満点で5点☆☆☆☆☆です。
いい映画だった。
鳩を飛ばす
公開当時に観てあまり印象に残らなかった。それが時を経て二度三度と観るうちに、ぽつん、ぽつんと、腑に落ちる小さな点が増えていく。豆電球がつくように。輝きがちょっとずつ増してくる、そんな作品です。
愛した女性と遅い結婚をした男、その妻を亡くし、弔い(海へ散骨してと遺言)の旅に出る。男も妻も、多くは語らない者同士。妻亡きあと、男は何を考えているのでしょう...二人がわかり合っていたのなら、なぜ妻は共に墓へ入ろうとしなかったのだろう。妻の本意は?自問自答しつつの旅は、男の痛みを治していく道でもある。
『あなたへ』というタイトル。
昔、健さんが自伝本『あなたに褒められたくて』を出された時の記憶をふと思い出しました。息急き切って読んだ末の、大ショック!健さんほどの人が、マザコンだったのか?と(大変失礼な表現でゴメンなさい)。でも先日引退表明した白鵬も、同じようなコメントで。「母に、よく頑張った、と言ってもらえたのが嬉しかった」。また別の番組では老教授が「妻を亡くした哀しみは、妻の前で輝いていた『自分』を失った悲しみだと気付いた」と。
あのショック。でもあれは健さんのせいじゃない。「高倉健」は、誰もが認める男の中の男。でも本に書かれた「健さん」は決して強くはなく、むしろとても繊細だった。それが私は無意識にショックだったのでしょう。弱く幼い人間は、守ってくれそうな人に自分のヒーローや守護神のイメージを勝手に着せ、拠り所にしようとしますから。
どんなスターやヒーローたちも、自分だけを照らしてくれる母や妻を太陽にして、生きている。
この主人公もそんな一人かもしれません。
真面目で仕事一筋の善人、不器用だが責任感の固まりのような男が、訳ありの女性と遅咲きの恋をし、結ばれて、幸せだった。ずっと二人三脚で人生を歩もうとしていた。男として一人の女性を守り通そうと決意していた。その覚悟、確かに愛かもしれない。
でも本当は、守り通していたのは、妻のほうだったのではないか。妻が太陽になり、寂しさや孤独に凍えないよう男を守ってくれていたのだとしたら。
むろん男は、自分が妻を守っていたと信じている。妻だって、経済的にはもちろんのこと精神的にも守られていたはず。でも太陽を傍におくことは、もしかすると太陽自身の自由意思を閉じ込めさせた部分もあったかもしれない。
妻の遺言は鳥の絵手紙。
「夫婦愛」というカゴに住む、つがいの鳥だったのか。安全安心。でも。魂には一個一個、個有の希求がある。カゴに押し込めきれない無意識の声に、どれほどの大人が耳を傾けられるでしょうか。
亡くなった妻は夫より一足早く、自分の声に向き合えたのかもしれません。妻亡き後を生きる夫にも、魂を成長させる促しを仕込んでから逝きます。
散骨のために夫を旅させる。
妻亡き後もなお、夫婦愛の思い出のカゴの中で生きるであろう夫を、カゴから連れ出す旅。貴方自身の魂の成長、その旅が始まりますよと、妻の声なきメッセージが響くようです。散骨の旅は、妻が準備してくれた夫の飛翔訓練だったのではないか。
功を奏して、道中いろいろな出会いがある。
袖ふれあうも多生の縁。
カゴは、もう長年で男を守るシェルターのような固い殻にまでなっていたかもしれない。縁にふれ、揺れ始め、殻が割れ始める。魂がまた動き始めた。
主人公よ、この妻の愛に気付け...!
ずっとその声がわたしの中では鳴り響いていました。彼の人生で、妻ほど彼の幸せを祈ってくれた人はいなかったのでは。それは肉体が滅んでも、継続している。でも男には聴こえない。「妻はわたしのことをどう思っていたのでしょう...」。
食堂の奥さんが、男に言った一言。
「夫婦といえど、全てはわからないでしょ。」
奥さん自身に向けた一言でもあったでしょう。こんな何気ないゆきずりの一言が、男の殻を一撃し、何かが溢れました。
「鳩を飛ばす」という隠語が出てきます。
主人公は食堂の奥さんの「鳩」になり、あるメッセージを、ある人に運ぶ。奥さんは主人公に、頼んだのではなく、ただ委ねた。主人公を動かしたのは何だったのか。
旅に出る前、主人公にとっての愛、それは人生の助手席に妻が座って居てくれること。大事な人を守ることだったかもしれない。でも愛とは、鳥を大事にカゴに囲っておくこと、だろうか。妻は妻、男は男の、魂の旅がある。孤独そうかもしれないが、そうではない。縁は一本一本、広い網目のように繋がっている。
主人公は自分が「鳩」になった時、自分も誰かの縁の一部だと、実感したのではないか。夫婦に限らず、誰もが広く繋がりあった網の一部だと。
自伝で健さんはスターであると同時に、人としての弱さを持ちながら生きていることを、わたしに晒してくれた。今ならわかります。弱さを見せられる強さ。でもほんとは弱いも強いもない。そう簡単には分けられない。
世界を動かしているのは法や政治、お金や同調圧力。でもそれだけじゃない。人は「鳩」を翔ばしあっている。小さな思いと気遣い。思いがけない縁で何かが起きる。意図せぬ愛となり、人が動き動かされ、助けられる。
魂がどうしたいか。
それに従って生きるしかない。誰かの幸せを祈りつつ。
カゴに押し込めるのは他人じゃなく、自分かもしれない。翔べるか不安な時は、この作品を思い出そうと思います。
心優しいあなたへ
この映画を楽しむためには
まずは精神が成熟していることが前提となるような気がします。
直接的で派手な表現ではなく、邦画の醍醐味と言える、登場人物の何気ない台詞や、ちょっとした表情、間に込められた感情を想い涙します。
「ありがとう」を一番のテーマにおいて描かれているので、終始思いやりにあふれています。
生きていく中で経験する寂しさや葛藤に疲れ、人の優しさに触れたい時にお勧めしたい映画です。
映像、音楽、キャストは文句なしです。
観てから何年も経ちますが、時々思い出して、また観たいなと思わせてくれる映画です。
途中、歌われる「星めぐりの歌」は本当に素晴らしいですよ!
切ないなぁ(涙)
こんな夫婦になりたいものだ
ささやかな幸せを共有できるような
でも女房と別れるのは辛いなあ
そんな辛い時に健さんの人柄で
いろんな人が集まってきて
点と点がつながる…
みんな、
本当にいろんな事を抱えながら頑張ってるんだ
ありがとう、健さん
いい映画でした
それぞれの夫婦の形
ANA NH231便にて鑑賞。
それぞれの夫婦の形を丁寧に表現されていました。
なかでも、高倉健さんの演じる深い愛の表現は素晴らしいです。名俳優・高倉健を改めて感じさせてくれます。
最後の方は涙しました。
佐藤浩市さんや綾瀬はるかさんの様な華のある方が田舎の漁業村にいることに少し違和感を覚えましたが笑
昨日からの大好きな健さん作品、録りだめレンタルダビングDVD鑑賞も...
昨日からの大好きな健さん作品、録りだめレンタルダビングDVD鑑賞もこの遺作で一区切り。
7年前の劇場鑑賞以来の2度目の鑑賞。1度目より感慨深かった。私も老いてきた故か(笑)
車中泊をしながらの旅、憧れます。ビートたけしには会いたくないが(笑)山頭火の魅力も再確認です。
不満点
・田中裕子ではなく倍賞さんに奥さん役をしてもらいたかった。もしくは本作出演者なら原田美枝子。
・舞台はやはり北海道からでなきゃ。そして無理矢理の竹田城。
結論
・高倉健はやっぱりいい。
ひとり男の、ロードムービー
最初の「塀の中」のシーンから、健さんの過去作を想像したけど。
違いましたね。倉島は元刑務官で定年後、木工などの技能指導官の設定が新鮮。
出てきた風景はざっと、富山→飛騨→京都→竹田城(兵庫)→関門トンネル。
その道中で出会った、山頭火の歌が好きな元教師、特産物催事場で売り子をする男性達。それぞれと交流し、亡き妻の話をし、別れていく。
そんなロードムービーになってました。
本当は妻と旅行するために作った、木工家具を積んだワゴン車。
車だからいろんなところで立ち止まり、妻の事を思う。
深く大切に愛していんだなあ。
多弁じゃないから余計、その悲しさが伝わります。
相手の懐には深く入らない距離感。健さんの凛とした感じが伝わります。
また亡き妻役の田中裕子さんが、儚くもろい感じがとてもぴったり。
抱きしめたら消えちゃいそうな雰囲気がまたいい。
しんみりストーリの最後。
「え?!」。
び、びっくりしたわー。なんか最後ありそうと思ったら。
このひねり方好きです。
健さんの遺作、残念だけど最後に「どうだい?」なエンドロールもかっこよかった。一時代を築いた健さんに、敬礼したいです。
てっきり健さんが囚人かと思ったら
結婚する前の井出洋子は童謡歌手として刑務所の慰問コンサートで歌っていたのだ。それも大勢の囚人のためを装って一人の内縁の夫のために・・・
洋子の故郷長崎へと英二(高倉)はキャンピングカーで旅立った。岐阜では埼玉から来た元国語教師の杉野(ビートたけし)と出会い、京都ではいかめし販売の田宮(草彅剛)、南原(佐藤)と出会う。次は竹田城址。天空の城として上手く撮れてる。
山口では杉野と再会するが、彼は車上荒らしの常習犯だったのだ・・・門司で田宮、南原と再会。長崎の漁師大浦(大滝秀治)を紹介してもらう。長崎では食堂を営む濱崎家に世話になり、7年前に夫を亡くしたという多恵子(余)と飲み明かす。
無事散骨も済み、またもや田宮、南原と会った英二。南原は実は多恵子の夫であり、失踪して別人になったという告白を聞くのだった・・・
健さん最後の作品となったが、そのことが重くのしかかる。もはや夫婦愛などというテーマがどこかへ飛んでいってしまいそう
繰り返し観ることをお勧めします
健さんの最高傑作のひとつです。
初見でこの作品を理解するのは、かなり難しいと思います。
脚本が素晴らしいのですが、大事なことは何も言いません。
散骨の旅をしながら、健さんは三つのケースに出会います。
・道を見失った人
・一歩を踏み出す勇気のない人
・過ちを犯したものの、やり直したいと思っている人
健さんは、やり直したい人に対して、鳩の役割を果たします。
健さんをこの旅に導いた奥さんもまた、健さんによって立ち直ったひとり。
物語は循環しています。
ただの散骨話ではなく、大きなスケールの物語。
初見では何とも思わなかったシーンも、物語を理解してから観てみると、全く隙がありません。
薄香に着いてからは名シーンの連続。
感涙の臨界線で右往左往する羽目になりました。
インタビューで『ディア・ハンター』を引き合いに出し、時代と映画の関係に触れていた健さんが、震災後の日本に対してこの作品を撮りました。
ただ歩くだけのラストシーンは、やり直したいと願う”あなたへ”の無言のメッセージ。
遺作になってしまったのは非常に残念ですが、遺作にふさわしい最高のラストシーンだと思います。
しかしながら本作品は、この分かりにくさゆえ、正当に評価されていないと感じていて、思わず長文レビューになりました。
健さんファンの皆さん、繰り返し観ることをお勧めします。
稀な映画体験ができる、大人の作品です。
高倉健さんの渋みが大好き!
高倉健さんの多くを語らずに演じる姿に感動しました。
彼の演じる姿だけで、もう映画が完成されている気がします。
妻を大切にして生きてきた彼が最後に、亡き妻の骨を散骨する姿に胸がジーンときました。
沢山の豪華ゲストにも関わらず、皆さんが物語にうまく調和して一つの作品として映画が完成しているので素晴らしい…。
久しぶりに素敵な愛のある映画を鑑賞させていただきました。
改めて観ても良い作品は感動します。
妻の骨を散骨する為に、海へ向けて旅する夫。
妻との様々な思い出と共に、車は少しづつ少しずつ静かに走り続けます。
旅先で出会う様々な方とのモノクロのような淡々とした流浪の旅。
それがカラフルで温かみのある旅へと変化する様子に感動しました。
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