マリリン 7日間の恋 : 映画評論・批評
2012年3月13日更新
2012年3月24日より角川シネマ有楽町ほかにてロードショー
マリリンとミシェル・ウィリアムズの資質の違いが顕わに
「マリリン 7日間の恋」なんて甘いタイトルがついているが、この映画のポイントはメソッド演技を巡ってのマリリン・モンローとローレンス・オリビエのバトル。そのバトルを通して浮かび上がる意外にしっかりしたマリリンの女優魂を見て、ますます彼女が好きになった。メソッド演技でリアルな感情を追求するあまり、精神不安定になっていたとされるマリリンだが、その不安な精神状態すら、自分が納得できるまで相手を待たせるための盾にしてしまうのだ。反メソッドの旗頭的存在で知識と技術で役を作り上げる達人のオリビエに、瞬間の輝きで勝負するマリリン。演技では作り出せない彼女のスター・オーラにオリビエが嫉妬するシーンもあり、マリリンこそ、映画が生み出した映画のためのスターであったと納得できる。
ミシェル・ウィリアムズは、今、マリリン役として考えられるベストの女優。何より雰囲気が似ている。特に助監督のコリンを魅了していくプロセスは少女のように無邪気で可愛くて、男ならみんな彼女に恋してしまうはずだ。それなのに、この映画を見ていて強く意識してしまうのは「マリリンがいない」という喪失感。セックス・シンボルと祭り上げられたマリリンだが、映画の中の彼女はあまりにはかなげで、肉体の存在感はむしろ薄い。大地に根づいた強さがあるミシェルの体とは異質のものだ。マリリンの魅力を演じて逆にマリリンとの違いが顕わになるとは。演技以前の俳優の資質というものを考えさせられた。
(森山京子)