「想像以上の出来。観てよかったと嬉しくなる。」新少林寺 SHAOLIN マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
想像以上の出来。観てよかったと嬉しくなる。
アンディ・ラウが2つの顔を見せる。
ひとつは戦に明け暮れ、誰も信じない冷血漢・侯杰(こうけつ)。長引く内乱と、そこに付け込もうとする海外勢力。人を迂闊に信じると、いつやられるかもしれない日々。侯杰が安らげるのは、美しい妻・顔夕(がんせき)と愛娘・勝男(しえんなん)と共にいるときだけだ。
権力こそが家族を守れると信じる男の果てしない私利私欲が、力の限りを尽くして争いを繰り広げる。
力の誇示は、“恐れ”に対する人間の弱さの裏返しであることに気づいていない。
もうひとつの顔が浄覚(じょうかく)だ。
富も地位も家族までも失った侯杰がたどり着いた少林寺。かつては愚弄してはばからなかった少林寺の門を叩き、人としてどうあるべきか、徐々に心穏やかな生き方を学ぶ浄覚。その顔は、侯杰の疑心暗鬼に満ちた顔とは正反対だ。
いい顔になる。きれいな顔になる。
悪役の曹蛮(そう・ばん)をはじめ、少林寺の面々の配役もいい。
この作品でのジャッキー・チェンは、いわば安息所だ。息抜きにいい味を出す俳優になってきた。
物語自体は単純だ。カンフー映画らしい、しつこいほどの格闘場面もありきたりだ。
それでも、やるかやられるかの激動の時代を背景に、静の象徴・少林寺を舞台に据え、ひとりの男の改心を丁寧に描いた人間ドラマとして、しっかり肉付けすると、こうもいい映画になるものかと嬉しくなってしまう。観てよかったと思う。
音楽がやや平凡なのが残念だが、想像以上の出来だ。
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