人生はビギナーズのレビュー・感想・評価
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いつでもビギナーズ
淡々と進んだり、戻ったりしながら静かにこの映画は進んでいきます。
まるで大人になってからの人生のようにゆっくりとメリハリを感じることもなく『いつものように』
いつものように静かに日々は流れながら、
ある日突然『いつも』が『初めて』に変わる日が訪れる。
人生は子供の頃だけじゃなく、73歳だろうが35歳だろうがいくつでも、いつでも『初めて』の連続だ。
妻に死なれてしまうのも年の離れた彼氏が出来るのも、フレンチの彼女が出来るのも母親が死んでしまうのも、ゲイの父親とその彼氏と付き合うのも、いつも『こんなことは初めて』なのだ。
『初めて』があり『新しい』が始まる。
しかし始まってしまうとまた『いつも』がゆっくりと戻ってくる。
『いつも』は時に『過去の自分』と『葛藤』を運んでくる。
人は人と出逢って関わることによって
『初めて』と『始めて』が出逢い新しい自分とも出逢えるのである。そしてまた『いつも』が戻ってきて。
この淡々とした進行がとてもリアルにそんな人生を感じさせてくれました。
私はこの映画を観てこれからいくつになろうとも、これからの人生が楽しみだなぁ~と思えました。
これからの『初めて』と『始めて』が、今出来ないこと、今の自分と違う自分に出逢えるチャンスになるだろうと思えた、それが嬉しい作品でした。
メッセージは前向き
もうちょっと明るい雰囲気を想像していたのだけど、思いのほかしっとりというかしんみりというか。
マイク・ミルズ監督の作品は初めてでしたが、「サムサッカー」とかもこんな感じなんでしょうか。伝えたいメッセージはちゃんと前向きに終わってますけど。
若干、時系列をいじりすぎな気もしなくはないですが。それゆえに伝わりにくくなってしまっている部分も少しあるような、ないような。
でも、犬がかわいい。
メラニー・ロランもあいかわらずかわいい。髪の毛ボサッとしてても似合ってるもん。
ちょっとボケ味
ガンの宣告、ゲイの告白、オリヴァーとアナの運命的な出会いと別れ、父の余生の生き方というのが物語のポイントだが、予告篇やHPなどから得られる【あらすじ】と本篇では、その時系列が大きく異なる。
そのためもあって、父親によるゲイの告白が、予告篇で見るほどインパクトを発しない。
アンとの出会いと別れは、父親の最後の生き様と同時進行ではなく、オリヴァーが生き方を見つめなおす過程が、物語のプロットのラインにすっきり乗り切らない。
編集で過去と現在を行き来しつつ、大筋では同じ事を伝えようとしているのだが、全体にボケ味になってしまった。やはり、がんの宣告、衝撃の告白、戸惑いの中での出会い、破局と父の生き様という順序の方がしっくりくる。または、編集でそう見せることもできたはずだがキレが悪い。ボケ味の原因は編集とも言える。
出演者は文句なし。
ユアン・マクレガーは、どこか優雅で物腰が柔らかく、声を張り上げないゆったりした喋りで品がある。父親のように思い切った行動をとれず、母親との思い出に浸る、38歳にしてナイーブな男を上手く表現している。
クリストファー・プラマーは、自分に素直に生きることの喜びを表現し、老齢ながらも色気を発する演技はさすがだ。
メラニー・ロランは、正体が謎の登場から、自分の居るべき場所を求める姿まで、不思議な魅力を振り撒く。いま、ノリにノッてる女優のひとりだ。
オリヴァーの少年時代に出てくる母親役のメアリー・ペイジ・ケラーも魅力的。満たされない心のはけ口を求める少し奇妙な行動が、やがてオリヴァーの人間形成に影響を与えていく。
そして雑種犬のコスモの絡みが楽しい。愛犬アーサーは、オリヴァーにとってたった一人の家族。鳴かれると心配でたまらず、鳴かないと忘れられたようで哀しい。まるで自由奔放に生きた父親の呪縛から逃れられず、あがいているようだ。
「ビギナーズ」とは、不器用な人々
という意味だと思う。
愛とか恋とか、そういった感情以前の
他人とのつながりを、うまくとることが出来ない人々が
編み上げた一枚のタペストリーが、この作品。
時系列を無くしたストーリーの構成は、
戸惑いを覚えるかもしれないが、登場人物の感情の波長が、
観るものの心の波長と重なったとき、
彼らの気持ちは、映画の中のタペストリーに織り込まれる。
最近の中ではベストの1本。
父から息子へ贈った最後の言葉
突然、父ハル(クリストファープラマー)からゲイだと告白された息子オリヴァー(ユアンマクレガー)。
一方で、新しい恋人をつくり、仲間とのパーティやエクササイズに精をだして、愛にあふれた人生を謳歌する父。
この対照的な二人を軸に、織りなされる親子の物語。
不思議なことに、父がカミングアウトをしてからのほうが、お互い素直に心を開いて、あらたな親子の交流がスタートする。
相手が素直に心を開けば、その受け手の心もまた正直に向き合おうとする、その純粋な関係性が心地よい。
しかし、息子が少しずつ父親を理解して来たころには、父親はもうこの世にいない。
ふさぎがちな日々が続いた時、その喪失感を埋めてくれるかのように現れた一人の女性アナ(メラニーロラン)。
父の最期の人生が後押ししてくれるかのように、
オリヴァーはアナと素直に心を開き、愛を確かめ合っていく。
原題である「Beginners」
その言葉がこんなにも大きな意味を、大きな希望を与えてくれるとは、
この映画に出会うまで考えたこともなかった。
これからの人生、大切に胸にしまっておきたい貴重な作品だ。
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