人生はビギナーズのレビュー・感想・評価
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ライオンかキリン 選ぶならどっちかな?
この映画作品のストーリー展開は、やや「マーガレット・サッチャー鉄の女の涙」の編集に類似している。
3カ月前に父親をガンで亡くした一人息子のオリヴァーの喪失感の色濃い日々の日常描写の物語だ。オリヴァーは元々内向的性格の強いデザイナーであるため、親を亡くして彼が現在一人でいる事を心配した、友人たちが無理矢理、彼を仮装パーティーに誘い出すところから映画は始まる。そしてパーティーで女優志願のアナに出会い、オリヴァーは彼女と友達以上恋人未満の関係を次第に築く事になる。彼の現在の生活と、父と暮したここ数年間の生活と、オリヴァーの少年時代の生活が交互に描かれているため、現在と回想シーンそして、回想の回想シーンと物語が展開する事が有るために、私は観ていてオリヴァーの気持ちに感情移入が出来たと思うといきなり過去へ戻されたり、現在に突然引き戻されたりとやや落ち着きが無い印象を受けた。しかし正直観ていて気持ちが、1つに連なって行かずに残念でもあるが、それこそが、観客に見せる現在のオリヴァーの不安な心情を伝える為の最上の方法なのかも知れない。
家族とは、身近な存在であるために勝手にお互い簡単に理解し合えると錯覚をしたり、或いは身近な存在であり過ぎて、一緒に暮していても、意識的に心の内を伝えようと試みない為に、案外お互いに深い部分で理解出来ないでいると言う事があると言う、世界中の人間に共通する普遍のテーマでもあるのかも知れない。その意味でもの映画はこの脚本展開と編集が最もこのオリヴァーの不安定さを描き出す上で最高の演出方法だったのかも知れないとさえ、この映画を観て考えていた。
編集や、演出もさることながら、キャストもこの作品は素晴らしい!クリストファー・プラマーはこの作品で見事にアカデミー助演男優賞を獲得したのも頷けたし、オリヴァーの繊細さを演じるユアン・マクレガーの喪失感溢れる目の演技、表情が素晴らしいのだ!!
彼は「トレインスポッティング」から「ムーラン・ルージュ」「天使と悪魔」「フィリップきみを愛してる!」など役柄も皆違う、悪役キャラからをナイーヴな役も演じているし、そして私の好きな「スターウォーズ」や「ゴースト・ライター」と大大大好きな作品に多数出演しているので、観客であるこちらも、昔も今もとっても目が離せないでいる注目の役者さんであるのだ。そして犬のアーサー君の大活躍もとってもキュート!!
さてこの映画のタイトル「ビギナーズ」の言う意味するところは、未来とは常に誰にとっても未知の世界で、新しい人生を歩む事が出来る可能性の扉が開かれていて、自分の人生を切り開いてゆく事に年齢は関係無く、例え75歳の高齢になってからでもビギナーとして新しい自分との出会いの人生が、その気にさえなれば、何時からでも始められると言う、素晴らしい勇気をこの作品は提供してくれる。人間何歳になっても親が存命でいてくれる事ほど有り難い事はない。たとえ自分が60代になろうとも親が生きて存在していてくれる事は心強いものだ。そして愛する人を亡くしたら、またその後は違った人生をスタートさせるのだ!さてあなたは、ライオンとキリンと人生の出会いでどちらを求めて生きるのだろうか?地味であるが、明日に希望が持てる、元気が貰える素晴らしい秀作であった。
いつでもビギナーズ
淡々と進んだり、戻ったりしながら静かにこの映画は進んでいきます。
まるで大人になってからの人生のようにゆっくりとメリハリを感じることもなく『いつものように』
いつものように静かに日々は流れながら、
ある日突然『いつも』が『初めて』に変わる日が訪れる。
人生は子供の頃だけじゃなく、73歳だろうが35歳だろうがいくつでも、いつでも『初めて』の連続だ。
妻に死なれてしまうのも年の離れた彼氏が出来るのも、フレンチの彼女が出来るのも母親が死んでしまうのも、ゲイの父親とその彼氏と付き合うのも、いつも『こんなことは初めて』なのだ。
『初めて』があり『新しい』が始まる。
しかし始まってしまうとまた『いつも』がゆっくりと戻ってくる。
『いつも』は時に『過去の自分』と『葛藤』を運んでくる。
人は人と出逢って関わることによって
『初めて』と『始めて』が出逢い新しい自分とも出逢えるのである。そしてまた『いつも』が戻ってきて。
この淡々とした進行がとてもリアルにそんな人生を感じさせてくれました。
私はこの映画を観てこれからいくつになろうとも、これからの人生が楽しみだなぁ~と思えました。
これからの『初めて』と『始めて』が、今出来ないこと、今の自分と違う自分に出逢えるチャンスになるだろうと思えた、それが嬉しい作品でした。
メッセージは前向き
ちょっとボケ味
ガンの宣告、ゲイの告白、オリヴァーとアナの運命的な出会いと別れ、父の余生の生き方というのが物語のポイントだが、予告篇やHPなどから得られる【あらすじ】と本篇では、その時系列が大きく異なる。
そのためもあって、父親によるゲイの告白が、予告篇で見るほどインパクトを発しない。
アンとの出会いと別れは、父親の最後の生き様と同時進行ではなく、オリヴァーが生き方を見つめなおす過程が、物語のプロットのラインにすっきり乗り切らない。
編集で過去と現在を行き来しつつ、大筋では同じ事を伝えようとしているのだが、全体にボケ味になってしまった。やはり、がんの宣告、衝撃の告白、戸惑いの中での出会い、破局と父の生き様という順序の方がしっくりくる。または、編集でそう見せることもできたはずだがキレが悪い。ボケ味の原因は編集とも言える。
出演者は文句なし。
ユアン・マクレガーは、どこか優雅で物腰が柔らかく、声を張り上げないゆったりした喋りで品がある。父親のように思い切った行動をとれず、母親との思い出に浸る、38歳にしてナイーブな男を上手く表現している。
クリストファー・プラマーは、自分に素直に生きることの喜びを表現し、老齢ながらも色気を発する演技はさすがだ。
メラニー・ロランは、正体が謎の登場から、自分の居るべき場所を求める姿まで、不思議な魅力を振り撒く。いま、ノリにノッてる女優のひとりだ。
オリヴァーの少年時代に出てくる母親役のメアリー・ペイジ・ケラーも魅力的。満たされない心のはけ口を求める少し奇妙な行動が、やがてオリヴァーの人間形成に影響を与えていく。
そして雑種犬のコスモの絡みが楽しい。愛犬アーサーは、オリヴァーにとってたった一人の家族。鳴かれると心配でたまらず、鳴かないと忘れられたようで哀しい。まるで自由奔放に生きた父親の呪縛から逃れられず、あがいているようだ。
「ビギナーズ」とは、不器用な人々
父から息子へ贈った最後の言葉
突然、父ハル(クリストファープラマー)からゲイだと告白された息子オリヴァー(ユアンマクレガー)。
一方で、新しい恋人をつくり、仲間とのパーティやエクササイズに精をだして、愛にあふれた人生を謳歌する父。
この対照的な二人を軸に、織りなされる親子の物語。
不思議なことに、父がカミングアウトをしてからのほうが、お互い素直に心を開いて、あらたな親子の交流がスタートする。
相手が素直に心を開けば、その受け手の心もまた正直に向き合おうとする、その純粋な関係性が心地よい。
しかし、息子が少しずつ父親を理解して来たころには、父親はもうこの世にいない。
ふさぎがちな日々が続いた時、その喪失感を埋めてくれるかのように現れた一人の女性アナ(メラニーロラン)。
父の最期の人生が後押ししてくれるかのように、
オリヴァーはアナと素直に心を開き、愛を確かめ合っていく。
原題である「Beginners」
その言葉がこんなにも大きな意味を、大きな希望を与えてくれるとは、
この映画に出会うまで考えたこともなかった。
これからの人生、大切に胸にしまっておきたい貴重な作品だ。
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