臍帯
劇場公開日:2012年6月16日
解説
「トニー滝谷」「亀は意外に速く泳ぐ」などのプロデューサーを務め、自身も中編映画を監督してきた橋本直樹の初長編監督作。ある壮絶な運命を背負った母娘の姿を描き、第23回東京国際映画祭・日本映画ある視点部門ほか、各国の映画祭で上映され、第14回上海国際映画祭では審査員特別賞を受賞した。生まれてすぐに捨てられ児童養護施設で育ったミカは、大人になり自分を捨てた母親・直子を探し当てる。優しい夫とひとり娘の高校生・彩乃と幸せに暮らす直子をしばらく監視していたミカは、ある決心をする。
2010年製作/108分/日本
配給:ゴー・シネマ
スタッフ・キャスト
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2014年1月31日
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鑑賞方法:DVD/BD
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今まで見た映画の中でも言葉がかなりすくないほうだと思います。
静かに進んでいく物語は次第に緊迫感を増します。でも、最後はほっとしました。
いい意味で解りやすく、物語が進行していくなかで、色々考えながら鑑賞することができました。素敵な作品だと思います。
2013年6月6日
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鑑賞方法:DVD/BD
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「臍帯{実録 少女監禁事件}」などという、おどろしいタイトルなのでえぐい物語なのだろうと思ったのですが、若い女性が女子高校生を監禁して、しかも、自分も一緒に監禁部屋に入ってしまうという展開にちょっとだけ期待したのですが、ことごとく肩すかしの展開。ある程度、狙ったものではあるのかもしれませんが、そもそも誘拐・監禁されたら普通の人は「なぜ私がこんな目に遭うの?」って犯人に聞くものでしょう。ところが、この被害者はそういうことを聞くでもないし(しかも彼女にはまったく心当たりもないのです)、犯人を襲って、鍵を奪おうするでもない。
さらに犯人のほうも「監禁」とは言いながら、被害者の手足を縛ろうともしない。ひょっとしたら平和国家ニホンを風刺したいのかとか、心中するつもりなのかと深読みしたのですが、そんな意図は何にもない、ただのお涙ちょうだいドラマだったというのが途中ではっきり分かってしまいました。
一つだけ印象的だったのは犯人役の役者さんが藤原竜也にそっくりということでしょうか。
まあ、そんなわけで見るまでもない作品だと思いますね。
2012年7月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
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臍帯(さいたい)とは、へその緒のこと
生まれてまもなく、母親に捨てられたミカ
彼女は母親の直子が、郊外の港町で
優しい夫と高校生の一人娘、綾乃と
ごく普通の生活を送っているのを知る
昼となく、夜となく、雨の日も風の日も
その平凡で平和な一家団欒を覗き見るミカ
ある日、彼女は、綾乃を拐かして監禁する
そして直子に一通のメールを送る
「あんたの一番大事にしていたものを壊してあげる。
あんたから大事にされなかった娘より」
メールに動揺する直子、一方でミカの心も崩壊していく
今の邦画界では数少ないなった、業界や観客に
媚びを売らない上質の心理スリラー
暗い画面、数少ない台詞、
長廻しによるカット割り
そして救いのないストーリーと、
ヒットする要素はなにひとつないけれど
なぜか惹きつけられる作品
ハマってしまうと、まさに観客と、作り手、演じ手、
そして作品が「臍帯」=へその緒で繋がっている
ように思ってしまう作品でもある
上映後に橋本直樹監督と
主演の於保佐代子さんのトークショーがあって
監督の話を聴くことが出来た。
事前のインタビューで
「優れたエンターテイメントは作らない
観てくれたひとの2割がわかってくれればいい
映画は映画館で始まり、映画館で終わるもの」
という趣旨の発言をしていた橋本監督
「平均的な、中庸な映画は作りたくない
いいかわるいか評価が分かれる作品を
作って行きたい」
とトークショーでもいっていたが
その点でいえば、この作品はまさしく
「観客を選ぶ作品」だろう
かつて子を棄てた上に、そしてまた
子どもを誘拐されても、何も出来ずに
保身にはしる母親の業の深さと
一見、悪魔的な所業でありながら
純粋に母を慕う心が少しずつ現れてくる
主人公ミカの心の移り変わりが
ほぼ全編を鬱々として雨が降り注ぐ背景と
同期して描かれていく
ここからネタバレ
5日間、ミカによって監禁された綾乃
精神を壊された彼女を、ミカは
直子のもとに連れて行く
綾乃を発見して気も狂わんばかりの直子
それを目撃してミカは思わず
直子に近づき、叫ぶ
「お母さん、私も抱きしめて」
ところが直子はその女をミカと気がついて半狂乱となり
近くにあった包丁で刺してしまう
それでもなお「お母さん、抱いて」と呟くミカ
直子は母として無意識にミカをそっと抱くのだった
トークショーのなかでこの終わり方に
疑問を持った観客もいたようだが
個人的にはこのラストシーン、日本の伝統的な
「親子物」にある結末の付け方だと思った
当初、ああいう終わり方は考えていなく
撮影現場で考えた、と監督は言っていたが
その終わり方だったからこそ
この母娘は、長い時間をかけて
やっと一緒になれたのだ。
主な登場人物である三人の女優たち
数少ない台詞と長廻しによる演出にこたえて
それぞれが、それぞれに熱演
内省的な痛みや苦しみを、抑えた演技で
表現していたのは、秀逸
誰にでも勧められる映画ではないことは、確か
それでも観ておくべき映画でもあることも、確かである