麒麟の翼 劇場版・新参者 : インタビュー
阿部寛&溝端淳平コンビが高める、バディ・ムービーの可能性
名コンビへの階段を着実に上がっている印象だ。「麒麟の翼」の主人公・加賀恭一郎と松宮周平。連続ドラマ、スペシャルドラマに続く、直木賞作家・東野圭吾氏のベストセラー・シリーズ最新作の映画化だが、演じた阿部寛と溝端淳平はそれぞれのキャラクター、2人のコンビネーションに無限の可能性を見いだしている。緊張感あふれるミステリーの世界の軸になりつつ、時にはホッとする笑いをかもし出す。2人の掛け合いも硬軟自在のテンポで、話は次回作以降への夢へと膨らんでいった。(取材・文/鈴木元、写真/堀弥生)
阿部が後輩に向ける期待と、溝端の先輩に対する敬愛の念。このふたつが絡み合い化学反応を起こすことで、加賀と松宮は共に成長を続けてきた。加賀を主人公とするシリーズの第8作を連続ドラマ化した「新参者」が2010年4~7月に放送され、平均15.2%の高視聴率を獲得。昨年1月には第7作「赤い指」がスペシャルドラマとしてオンエアされ、再び15.4%を記録した。連続ドラマのころから雑談レベルで映画にしたい旨の話はしていたそうだが、それが第9作「麒麟の翼」で実現した。
阿部「ドラマが映画化されるのは、すごくうれしいこと。映画のサイズになったときに違う表現、違う加賀シリーズができるのではないかと思ったし、より人物を濃厚に描いていける。観客も大画面で集中して見ることになるので、いろいろな可能性が見えてきて期待感がありました」
溝端「連続ドラマは重厚感があって、エンタテインメント性が高いというよりは心にじっくりと訴えかける作品だった。これは映画館で見たほうが面白さが増すのでは思っていたので、念願がかなったという感じですね」
東京・日本橋にある麒麟(きりん)の像の前で男性の刺殺体が発見されたことを発端に、加賀と松宮らの捜査により容疑者とされた青年とその恋人、被害者の遺族らの思惑、人生が浮き彫りになっていく。加賀シリーズは東野氏がデビューのころから書き連ねているが、その中でも最高傑作と自負する原作だ。
阿部「『赤い指』も家族の中で起きる事件の話でしたが、今回はさらに身近な話で、親が子を思うがゆえに距離が開いてしまったという切実な問題を引き起こしてしまう。被害者の家族、容疑者の家族、加賀の家族と3つの家族の関係が絡み合って、事件解決へとストーリーが進んでいく。その展開が面白いと思いました」
溝端「実は映画になることが決まってから原作を読んだんです。個人的には、松宮がどれだけ出てくるのか、ドキドキしながら読んでいました。前半だけだったら、どうしようって(笑)。でも、いろいろな人がいろいろな目線で見られる原作だと思いました」
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