劇場公開日 2011年10月1日

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エンディングノート : 映画評論・批評

2011年9月20日更新

2011年10月1日より新宿ピカデリーほかにてロードショー

微笑ましく幸福感でいっぱいの笑顔を見よ

高度経済成長期の日本を背負ってきた会社ひと筋の熱血サラリーマンだった主人公・砂田知昭氏は、第2の人生を迎えた矢先、末期がんと宣告される。そこで彼は、エンディングノートなる「死ぬまでにやらなければいけないTO DOリスト」を書いて実行することを人生最後の大仕事に定める。段取りの良さで会社の要職まで駆け上がった彼は、この期に及んでも自分の人生の最終章まで段取ろうと試みるわけだ。本作は、そんな戦後日本の申し子のような砂田氏の最期の日々を彼の末娘である砂田麻美監督が丹念に記録した奇跡的なドキュメンタリーである。

ビデオカメラに映し出されるのは、生々しく壮絶ながん闘病記などではなく、持ち前の明るさで飄々と生きる段取り男・砂田氏のユーモラスな日常だ。丁寧語が使われる主人公の内面の「声」(監督自身が担当)も深刻ぶらず内省的でも思索的でもなく、主人公の家族に対する着飾らない素直な告白になっていて、えもいわれぬ笑いと哀感を誘っている。撮る側と撮られる側の双方に情愛の念も感じられ、リラックスモードの被写体がいい。それは、監督が娘としてずっと観察してきたありのままの父親の姿なのかもしれない。

その砂田氏、ほぼ全編で快活な笑顔を爆発させているので、悲しさよりも先に楽しさが湧き上がる。笑う門には福来たる、だ。砂田家の「家族アルバム」の様相を呈する映画は、一家の大黒柱である主人公に笑顔があるからこそ救いがあり、微笑ましく、観ているわれわれまでを勇気づけ幸福感で満たしてくれる。それは確かに何の変哲もない無名氏の笑顔だが、生の輝きとしてフィルムへ永遠に定着された、実に感動的な奇跡の笑顔なのだ。

(サトウムツオ)

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