「組織におけるの意思統一の大切さ」聯合艦隊司令長官 山本五十六 太平洋戦争70年目の真実 みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)
組織におけるの意思統一の大切さ
明治維新以降、日本は急速に近代化を進め、日清、日露戦争の勝利ので、欧米列強に肩を並べる程に急成長した。
表面的には、向かうところ敵なしという状態であったが、実情は、薄氷の勝利を繰り返してきた。
特に、日露戦争は、日本の全身全霊を賭けた壮絶な戦いであった。日本軍はロシアと日本の国力の差を踏まえ、早期講和を前提にするという共通認識を持って戦った。その結果、『敵を知り、己を知れば百戦危うからず』の諺通り、日本軍は奇跡的な勝利を重ね、ロシアとの講和を成立させた。近代日本はまだ若く未熟であり、周りは全て強国であったが、強国を倒すことでしか日本を近代化する道はないという共通認識が日本という組織を団結させた。日本の組織力を高めた。
本作の主人公である山本五十六も日本とアメリカの国力差を十分に理解していた。彼は、初戦に勝利し、早期講和に持ち込むことを考えていた。しかし、彼の思惑通り初戦の真珠湾攻撃が成功すると、日本軍、日本の世論は日清、日露戦争の結果のみを盲信し、武力で勝てると信じて疑わなかった。講和なぞ考えてもいなかった。日本という組織が意思統一出来ていなかった。日露戦争との大きな相違点である。
日清、日露戦争の時は、明治維新から時間が経過していなかった。近代日本になって若かった。それ故に、自分達の未熟さ、近代化の進んだ列強の凄さが良く見えていた。対して、太平洋戦争の時は、日本は欧米列強に肩を並べる程になっていた。それ故に、自分達の弱点が見難くなっていた。
山本五十六が優れたリーダーであり、アメリカのことを熟知してが、彼の考えを日本という組織の考え方に昇華し意思統一出来なかった。それゆえ日本は組織力を十分に発揮できなかった。
本作は、単なる戦争映画というよりは、組織における意思統一の大切さを問い掛けてくれた作品だった。