劇場公開日 2011年10月15日

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ブリッツ : 特集

2011年10月11日更新

「トランスポーター」シリーズでアクション・スターとしての地位を確立したジェイソン・ステイサムが、古巣のロンドンで撮り上げた「ブリッツ」が10月15日より公開される。不穏な空気を抱えた“現代のロンドン”を舞台に、警官を標的にした連続殺人鬼を追い詰める暴力刑事の活躍をスリリング描く同作を、2人の映画評論家はどう観たのか?

凶暴刑事=ステイサムが英国史上最凶の愉快犯を追い詰める!
英国発、新機軸のクライム・サスペンス

悪党には容赦ない制裁を! ロンドン一のハミ出し刑事の姿を描く
悪党には容赦ない制裁を! ロンドン一のハミ出し刑事の姿を描く

■ハードなステイサムとロンドンの空気感──映画評論家は「ブリッツ」をどう観たか?

●ツワモノを演じる説得力は、ストリート育ちのツワモノ=ステイサムならでは(相馬学)

ハスキーな声も魅力のステイサムが ハードボイルドな演技を披露
ハスキーな声も魅力のステイサムが ハードボイルドな演技を披露

「トランスポーター」シリーズでアクション・ヒーローのイメージが定着し、近作「メカニック(2011)」でも、それを踏襲して見せたジェイソン・ステイサム。それはそれで魅力的ではあるが、「ブリッツ」は彼の別の魅力を伝える作品として見逃せない。デビュー作「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」にも通じる、ラッディズム全開の労働者階級の英雄。悪党に容赦なく鉄拳制裁を下す姿は一見「ダーティハリー」風だが、決定的に異なるのは、ステイサム扮する刑事ブラントはニヒリズムと無縁である点。イーストウッドは警察バッジをためらいなく投げ捨てたが、こっちは“俺をクビしたら何をするかわからねえぞ!”と上司にも凄むツワモノなのだ。

ステイサム自身、「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」の役柄そのままにロンドンの大通りでバッタ物を売っていたこともあるストリート育ちのツワモノだから、役に説得力をもたせるのはお手の物。こういうバタ臭さが、ステイサムにはよく似合う。

●ロンドンの不穏な空気感も注入された、極限のサスペンス&アクション(高橋諭治)

“もう1人の主役”ともいえるロンドンが 抱える問題もリアルに描写
“もう1人の主役”ともいえるロンドンが 抱える問題もリアルに描写

ハリウッドで次々とアクション快作を放ち、今やその“外れなし”の安定感ゆえにファンの絶大な支持を得ているジェイソン・ステイサム。母国イギリスに戻って主演を務めたこの犯罪映画は、狂犬のごとき荒くれ刑事とサイコキラーの攻防を軸にしているが、スカッと爽快な勧善懲悪劇ではない。理不尽な警官殺しを繰り返す悪役“ブリッツ”の異常性格ぶりも凄まじいが、武闘派にして人情派の主人公ブラントのキャラクターの複雑さにも驚かされる。自らも心に暴力衝動の闇を抱え、ルール無用の正義を貫くタフガイが、最も忌むべき極悪犯罪者との危うい死闘に身を投じていくのだ。

先ごろ起こった暴動も記憶に新しいロンドン各地でロケを敢行し、この大都市の不穏な空気感を映像に生々しく注入。さらにタブロイド紙の扇情的な記事が犯人の歪んだ欲望をいっそう加速させる設定も、あらゆる倫理が揺らぐ“今”の時代を鋭く射貫いている。

骨太な警察映画にして暗黒の人間ドラマ、そして善悪の一線を踏みこえた極限のサスペンス&アクションに痺れてほしい。

■英国一の荒くれ刑事が、残虐なコップ・キラーに立ち向う!

繊細な相棒ナッシュ(パディ・コンシダイン) との掛け合いにも注目
繊細な相棒ナッシュ(パディ・コンシダイン) との掛け合いにも注目

犯罪者に容赦のない制裁を加える暴力刑事と、警官を標的にするシリアル・キラーとの対決を描く「ブリッツ」は、アイルランドの犯罪小説家ケン・ブルーウンの同名ハードボイルド小説を原作に、CM界出身の新鋭監督エリオット・レスターが映像化を果たしたサスペンス・アクション。多彩でエッジの利いたキャラクターやセリフ回しに加えて、英国ならではのユーモアや反権力思想をスパイスに、新たなタイプのクライム・サスペンスとして、本国公開時に高い評価を集めた作品だ。

タブロイド紙に暴力行為をネタにされて、非難を受けてばかりの刑事ブラントを演じるのはジェイソン・ステイサム。悪に対しては強硬派だが、情に厚く仲間からの信頼は絶大。「荒削りな鋭さ、無骨さ、強情さがあるが、彼の目には知的な輝きがある」と原作者も絶賛、「ジェイソン・ステイサムがブラントだ」と太鼓判を押すキャスティングとなっている。

“ブリッツ”を演じたエイダン・ギレンは 若き日のゲイリー・オールドマンを思わせる
“ブリッツ”を演じたエイダン・ギレンは 若き日のゲイリー・オールドマンを思わせる

そんなブラントの前に、“ブリッツ”(ドイツ軍による1940~41年のロンドン大空襲のこと)を名乗る連続警官キラーが現れる。仲間の警官が次々と殺されていくなか、徐々にブリッツを追い詰めていくブラント。善と悪の境界を越えて、暴力刑事 VS 残虐なコップ・キラーの電撃戦は、衝撃のクライマックスを迎える。

狂気の男ブリッツを嬉々として演じたエイダン・ギレン、そしてブラントと反目しあいつつも強固なパートナーシップを築く相棒ナッシュ役のパディ・コンシダイン等、現在のロンドンの空気感を伝える個性派俳優たちにも注目だ。

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