未来を生きる君たちへのレビュー・感想・評価
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難民キャンプでの問題提起
個人評価:3.5
建前の道徳論。どれが正しい行いなのか大人達にもわからない。それは小さな子供の世界にも当てはまる価値観。スサンネ・ビアらしい一人一人の人間の価値観や考え方を掘り下げた作風で良い映画だ。
ただ、アフリカ難民キャンプでの人間が人間を助け、また殺す事の意味の対比の掘り下げが未完のままだと感じる。医師である父アントンの気持ちの答えを描写しないのであれば、あそこまでアフリカでの凄惨な描写は不必要だと感じる。
報復と赦しの物語
報復の連鎖をどう断ち切るのか?
深いテーマを背景としながら、スリリングに展開するストーリーに引き込まれました。
破綻した治安やレイシズムといった国際社会の問題と、いじめ、親子の断絶、夫婦の別居といった家族の問題とのオーバーラップ。
それを一つの物語に収束させる作り手の力量。
やられた、って感じです。
現実的な問題であり、かつ哲学的な問題でもある、その問いに
監督なりの一つの思い(いや解答でしょうか)
が示されていたように感じました。
でも、それがこの映画の限界になってしまっているようにも思うのです。
つまり、その思いというか解答というか、それが不正解だとかいうことではなく、
「問いと答え」というとらえ方をされるその形式が
物語の広がりを限定しているような。
道徳的な規範の提示にあやうくなりかけている
その境界線にある映画であるような、そんな気がするのです。
私たちが生きるこの世界に答えはない。
だから私たちは映画を見続けているように思うのです。
でも、いい映画ですよ。
そんなこんなで、評価は4。
親の生き方を子は見て育ついい実例
この映画で、教育の大切さ、特に家庭教育の大切さをしみじみ感じた。スーダンの難民キャンプで医師として人を助けている父親の息子の一人は学校でいじめられている。父親はデンマークとスーダンを行ったり来たりしているが、自宅に戻った時は、息子たちと遊んだり、会話したりして時を過ごしている。父親は人として、倫理観を持っているので、(より良い社会を作るため)むすこに説教するのではなく、実際に行動して息子に理解させる。
だから、息子は車を爆発させた時も、人を助けに走ることができる。
赦し
どの世界にもある『暴力』それに対して『復讐』するか『赦し』か。
クリスチャンは、理不尽な暴力に暴力で対抗してイジメから逃れる。クリスチャンは、時には暴力が必要だと思わせてしまう。
そんなクリスチャンにアントンは、理不尽な暴力に対して非暴力でいる事で『暴力の連鎖、復讐の連鎖』を教える。
しかしこの映画、決して『非暴力』『赦し』が全て正しい選択と言っている訳ではない。
子供達、そしてアントン自身も選択を迫られるのだ。そしてその選択の結果は正しいのか………
(個人的には、ビッグマンを殺す事は、より良い世界のために必要なのではと思う。)
もっと厳しい現実を見せても良かった。(エリアスの死、ビッグマンを殺した事による報復など)
後で知ったけど子役の2人は、これが初めての演技らしい。凄い
みんな気に入らない邦題タイトルの『未来を生きる君たちへ』聞いた時ダサいなぁと思ったけど観終わった後は、意外にこれで良かったかもしれないと思う。
#映画 #cinema #movie
#未来を生きる君たちへ
#AcademyAwardforBestForeignLanguageFilm #Hævnen #InaBetterWorld
#SusanneBier #スサンネビア
バカを相手にしちゃダメ、暴力に暴力で返しちゃダメなのは分かるけど、...
バカを相手にしちゃダメ、暴力に暴力で返しちゃダメなのは分かるけど、やり返したい、思い知らせたいと考えてしまう。人間てそれがデフォルトなんだろうな。エリアス父のように生きるのは難しい。
暴力に暴力で応酬してはいけない。そのメッセージを、「いじめ」と「戦...
暴力に暴力で応酬してはいけない。そのメッセージを、「いじめ」と「戦争」という2つの「暴力の現場」から描いた本作。いじめの現場で子供たちは、暴力に暴力でやり返すことで、なめられないようにした。それではいけないと身をもって教えた父も、戦争の現場では愚弄の声に負け、暴力の連鎖に手を貸した。
二つの家族について言えば、すれ違いはあれど愛のある親たちが家族を一つにした。それが紆余曲折を経てハッピーエンドで終わったのはいいことかもしれない。けれど世界の問題はまったく変わらずにそこにある。
変えようとするのは無理なのか?
それはやはり無理なのかもしれないが、やはり諦めてはいけないのだろう。
そういうことを考えさせてくれる良作だった。
映画のラストシーンで流れるアフリカの難民の子供たちの笑顔が印象深い。
医師団の車を追いかけるシーンは映画の冒頭を始め、それ以前にも何度も描かれていたが、そこにどんな意味がわからなかった。ものが欲しいから追いかけているのか。車が珍しいから追いかけているのか。そんな風に思っていた自分が恥ずかしくなる。彼らは感謝していたのだ。自分たちを守ってくれるヒーローに。
手を振る子供たちの笑顔がこの映画のすべてを物語っている。憎しみや暴力は決してなくならずこの世界は悲しみに満ちている。しかし我々はいつだって生きていかなくてはいけない。そうであるなら自分のできる選択をしていくべきなのだ。その揺るぎない信念があればそれがどんな選択であれ、未来は希望に満ちたものになるはずだ。
バカを相手にしちゃダメ、暴力に暴力で返しちゃダメなのは分かるけど、...
バカを相手にしちゃダメ、暴力に暴力で返しちゃダメなのは分かるけど、やり返したい、思い知らせたいと考えてしまう。人間てそれがデフォルトなんだろうな。エリアス父のように生きるのは難しい。
親子愛
暴力は連鎖する。それが例え子供たちのイタズラやケンカ、そしてアフリカという貧しい世界でも。そして世界は小さな子供同士のケンカから戦争に繋がる。父親が言った言葉がとても心に残る。
暴力はされた方はもちろん傷つくがした方も心に傷を残す。この事は次の世代にも伝えなければならない。そう感じた。
この映画はこれから親になり子供を持つ身としてとても心に染みる傑作であった。
報復と赦し
アフリカ難民キャンプとデンマークのそれぞれを舞台に、違う世界観の中に垣間見る暴力の存在、それを深い人間像を描き出す中で問題提起してくれるような秀作の一本です。
[暴力の本質は連鎖。振るう方にも痛みはないのか、その痛みは心の痛みでもあるはず] と、以前、違う作品のレビューでも書いたのを覚えています。些細のない口喧嘩でさえ、きっかけはあるし、そのきっかけとは関係ないところで、自身の置かれた環境が心を荒んだものにしてしまうこともあります。
複雑に絡み合っている大人の事情や環境の中で、親は子に重要なことを伝えたいのですが、それが「きれいごと」だとも分かっています。でも、暴力には暴力で!を実行している限り、いつまでもその連鎖は断ち切れないのも知っています。とても難しいことですが、個人レベルならば、(親が、友が、師が、誰かが)包み込んで傷ついた人の心を溶かす機会を与えなければならないのです。温かい一杯のスープを差し出す勇気があればのこと。
この世界は決して生き易くないかもしれません。映像に映し出された、まるでドキュメンタリーの一コマかと思うような冒頭のシーン。「How are you?」と大合唱しながら、南アフリカの子供たちが医療チームのトラックをどこまでも追いかけます。
彼らの笑顔を、今を生きる大人たちが守ってあげなければ、少なくとも、毎朝、目を覚ましてから、その日一日を生きることが苦痛に思えるような子どもを作ってはいけないのだと、ふと、そんなことに思い至った作品でした。 (4.8点)
復讐よりも今を見つめて
子供のちょっとしたいたずらは時として恐ろしく悲惨なことになりうる。遊び半分に復讐ごっこを計画するが、恐ろしい事故につながってしまう。残像として残るのは子役のここの場面だ。正義に生きる父親の背中を見て育った子供は正しさを見失うことはないという女性監督ならではの視点を感じる。また、この子役がはまり役でぴったりと泣かせてくれた。そこの場面で僕を泣かせることが出来たから、僕は「灼熱の魂」にこの映画勝った理由にしてる。子供にも見せたいと思った。父親が不良親父にやられる場面も共感した。
言いたい事は分かるけど…
後一押しが足りない感じ。
期待が高かった分ちょっと残念。
中盤までは理不尽な暴力に立ち向かう親子の葛藤を映し出し、終盤では『許し』を見事に描きだしていたが、理不尽な暴力を戦争でなくもう少し違ったリンクの仕方をして欲しかった。
子供に教える立場の大人たちが完璧でなくその中で葛藤しながら教育に向かい合う視点は良かった。
大人の未熟さは上手く描けていたと思う。
思いを抱え、ぶつかりながら成長する。大人も子供も…
ずっと注目、期待をしていてやっと観れた作品だが期待以上だった。
118分間1秒たりとも無駄な部分が無い。
「赦しと復讐」から始まるドラマ。
それが人間の友情や愛、怒り、全てを形づくる。
何より単純で、何より難しい。
信じられる愛を失い、死と間近に接した少年の目に映る世界、いじめられっ子で心の拠り所を求める少年の目に映る世界、現実、自分と理想に葛藤する男の目に映る世界、愛を裏切った夫を許すことのできない女の目に映る世界。
どの目からも世界は上手く回らず、理想とかけはなれていて薄暗い。
人は皆それぞれに自分の思いを抱え、時には葛藤し、ぶつかりあって生きていく。
本当に単純だが本当に難しい。
脚本、演出、そして俳優、特に主演の少年2人の憂いの演技は素晴らしかった。
また、心情描写が巧みすぎる。
描かれるそれぞれの心の痛みはどんな暴力描写よりも痛々しく、観ている我々の心に突き刺さる。
終始薄暗い世界観であるのに観終えた私達の心は自然と晴れている。
まさに感動とはこのことだ。
親子の葛藤がメインのドラマでした。
スサンネ監督作品は、終盤までの物語の起伏が乏しく、苦手なタイプ。それでも毎作品ついつい見てしまうのは、ラストで仕掛けるヒューマンなクライマックスなんですね。そこには、必ず困難を超えて繋がろうとする人と人との結びつきが描かれていくのです。しかし、そこに行き着くまでの道中が、饒舌に思えてなりません。しかし、毎作品高い評価をうけて、ハリウッドでリメイクされたり、本作ではついにアカデミー賞を受賞するに至りました。スサンネ監督作品にケチを付けたがる小地蔵は、作品の良さを理解していないのだろうか?と危惧しつつ劇場に向かった次第です。
スサンネ監督作品には、なにがしかの社会問題が織り込まれます。本作の原題である『復讐』を引き起こしている要因として、アフリカでは理不尽で非道な暴力が描かれ、デンマークでは、移民に対する差別的な感情がむき出しに描かれていました。そして「報復は報復を生むだけ」という赦しの大切さに対して、それが「きれい事」でしかないことをカメラで追っていきます。赦すことはキリスト教の根本的な教えであるだけに、それに懐疑的な目線で描き出すのは、キリスト教圏で暮らすなかでは、凄く大胆な演出だと思います。
大概の作品は、こうした不条理を社会問題としてあぶり出したり、スーパーヒーローを登場させて、問題解決に当たらせたりします。ところが本作では、大上段に描きがちな状況を、誰もが抱きそうな日常生活に常に潜む報復の心理として問いかけるところが秀逸です。見ている方も、こんな状況なら、自分はどうすべきかと考えさせられて、引き込まれていきました。
特にいじめるクラスメートや父親を侮辱した人物に対する報復を思いつく子供たちの揺れの動きは、展開がスリリングであり、共感できる描写でした。たとえそれが爆弾自作による制裁であったとしても。
ただ気にくわないのは、アフリカのパートとデンマークのパートは、全然リンクしていないということです。監督に言わせれば、暴力と報復の連鎖に国境はないのだということが言いたいのでしょうけれど、もう少し関連があって欲しかったです。
アフリカでは、妊婦をお腹の子供は男か女かという賭をして、妊婦を捕まえ、腹をさばいて賭の結果を確認するという極悪非道なビックマンという組織が描かれます。そのボスの末路が描かれるものの、この国の非道な暴力は恐らく残ったままでしょう。世界にはこんなこともあるのだという扱いです。
その辺が女性監督の感覚の違いなのでしょうか。スザンネ監督の関心は、社会の矛盾よりも登場人物の葛藤に向けられていくのです。
主人公の子供のひとりクリスチャンは、末期がんの果てに安楽死してしまった母親を愛する余りに、安楽死を選択した父親を、人殺しと怨んでいました。
一方クリスチャンにいじめから助けてもらったことで仲良くなるエリアスも、父親の浮気が理由で両親が別居し、離婚寸前の状態になっていました。
原題の『復讐』は、一見世の中の不条理な暴力に対するものかと当初はおもわされていました。しかし、後半の展開で徐々に実は、それぞれに両親に対して葛藤を抱えた二人の子供たちの親に対する「復讐」のドラマであったことが浮き彫りにされていきます。
物語が動くきっかけは、人種差別によりエリアスの父親が自動車整備工に殴られたことから。父親は、非暴力で対応し殴られたまま。今の日本の自衛隊のようです。しかし納得のいかないエリアスとクリスチャンは、復讐のために自動車整備工の車を爆破しようとします。父親のための復讐とはいえ、そんな問題行動を起こすのは、やはり心の奥底で、親に対して困らせてやろうという復讐心があってものでしょう。その反面には、親にもっとかまって欲しいという愛情の欠乏を訴えているのでしょう。
さらにたたみ掛けてクリスチャンには自殺願望があり、自らの死で父親に復讐してやろうという気持ちが手に取るように伝わってきます。だから、エリアスを連れて倉庫の屋上の縁に腰掛けるシーンは、今にも飛び降りそうでハラハラさせられました。
クライマックスは、クリスチャンが本気で飛び降りようとするとき。
爆破の結果、エリアスは巻き添えに重傷を負い、クリスチャンはエリアスの母親から人殺しと罵られます。エイリアスが本当に死んだものと思い込んで自分も後を追うことにしたのです。
エイリアスの父親アントンの機転で、クリスチャンが取り押さえられたとき、アントンが語った言葉が秀逸です。医師でもあるアントンは、病死した母親の死が受け止められず苦しむクリスチャンの気持ちを見抜いていました。そこで、死を乗り越える考え方をアドバイスするのです。このやりとりは凄く感動的で、涙が滲みました。最近身近な人をなくして、苦しまれている人には、凄く癒しになるシーンでしょう。
そして、息子の事故をきっかけに、両親の仲も復縁に傾きます。まさに「子はかすがい」なんですね。ちょっと出来すぎの展開かも知れませんが、淡々としたなかに、突如人と人との絆の深さをスパークさせて描くスザンネ監督の手法には、いつも涙を奪い取られてしまいます。彼女の作品の魅力とは、そんなラストに魅せる一発芸なんだろうなと思えます。
登場人物の葛藤を優しく包み込む映像と音楽は、どの作品も詩情豊かでエモーショナル。そんなところもスザンネ監督の魅力だと思います。
ヒューマンドラマをお探しの方には、ぜひお勧めします。
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