「過去と現代が交互に描かれる。」サラの鍵 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
過去と現代が交互に描かれる。
1942年の7月、パリに住むユダヤ人の家族スタルジンスキは、ヴェロドローム・ディヴェール(ヴェルディヴ、屋内競輪場)一斉検挙の朝、パリ警察に逮捕されるが、サラが気を利かせ弟をクローゼットに隠してしまう。しかし、収容所に入れられると弟が死んでしまうかもしれない・・・誰かに鍵を渡せられれば・・・臨時収容所に入れられ、家族3人がバラバラにさせられたスタルジンスンキ。サラは高熱を出し、3日間うなされていたが、介抱してくれた女の子と一緒に脱走を企てる。パリの警官も悪い人ばかりじゃない。ジャックという警官が鉄条網を開けてくれて、2人は逃げ出したのだ。どうなる?弟のミシェール。かなり時は経っている・・・
現代のジュリア。妊娠について悩みつつも、自分が住む予定となっているアパートにもユダヤ人がいたことがわかる。折しもヴェルディヴについて調べていたところだったので、その部屋にはサラたちスタルジンスキの家族が住んでいたことまで掴んでいたが、両親の死亡は確認されたのに、収容所での死亡者リストにサラとミシェルの姉弟の名前が見つからないのだ。しかし、義父テザックの話を聞いて氷解する。田舎のデュフォール夫妻の親切によってスタルジンスキのアパートに戻ったサラは、大切に持っていた鍵で納戸を開け、弟ミシェルの遺体を発見する・・・これが中盤。
それからはサラの消息を辿るジュリア。秘密主義となったサラはニューヨークへ渡り、幸せな結婚をしていた。早速生まれ故郷でもあるNYに飛んだジュリアは、サラが結婚した相手の家を捜し当てるが、サラは交通事故で60年代に亡くなっていて、再婚もしていた。忘れ形見である息子にもフィレンツェにまで会いに行く。
後半はサラの過去とその後を訪ね歩くといった内容。ホロコーストの悲惨な部分はほんの触り程度なのだが、それでも逃げ出すために病気を装うために口の中を切るアンナという女性の描写が印象的だ。
サラの息子が母親がユダヤ人であることさえ知らないこと。ようやく病床にあった父親が50歳を過ぎている彼にすべてを教えてくれるのだが、歴史を封印してはならないということを静かに訴えてくる。ヴェルディヴ事件という歴史。そして、家族の忘れ去りたい過去においても、世間に訴えるため明らかにすることも大切なのだ